第65話 ミリアとの別れ
神装具を授かってからマリリア達の特訓が始まった。イェリアナとシルリラの紋章の力を引き出すための修行も並行して行う。イェリアナの紋章は剛者、シルリラの紋章は賢者だった。紋章の力は体力を消耗する為、1日の修行が終わると2人は立っていられない程に疲労していた。2人と共にいるシャムとトラも、周囲をフワフワと飛んではいるが、表情は疲れている様だった。
「こっ、こんなに疲れるなんて。剛者だった大叔父様は紋章の力を出して魔神と長いこと戦い続けたのよね。どんだけ体力あるんだか。」
「私も、今日はもう動けません。賢者は紋章の力を引き出すだけでなく複雑な術式も身につけなくては駄目で。カイン様って本当に天才だったんですね。」
「さあさあ2人とも、頑張って下さい。紋章の力を使い続ければ慣れてきますよ...たぶんですけど。」
そう言って2人を励ますマリリアも楽は出来ない。弓術はほとんど経験がなく、初歩的な技術から習得しなければならなかった。これまで使っていなかった筋肉が悲鳴を上げている。それも紋章を使いながらなので、マリリアも相当に疲労していた。ミケもマリリアの近くで休んでいる。
「マリリアのその胸は弓術には邪魔よね。」
「イェリアナだってその胸は大剣を振り回すのに邪魔そうですよ。」
「私は杖を掲げるだけなので胸は邪魔にはならないのに。」
「シルリラは小さくて可愛いから今のままで良いわよ。」
3人は背中合わせで座って休んでいた。体は動かせないが口だけは良く動く。その3人に向かってジュードは歩いてきた。ミリアの容態に変化があったのだと察知し、3人は身構えた。
数日後にミリアは静かに息を引き取った。彼女は息を引き取る直前にジュードを側に呼び寄せ、ジュードの額に口付けした。それは彼女なりの感謝と別れの挨拶だった。ミリアの葬儀は、人知れず埋葬される事を望んだ彼女の希望とは異なり、多くの参列者に囲まれるものとなった。彼女を通じて得られる天啓は、特に天候や災害に関しては大陸の人々の生活に欠かせないもので、天啓によって命を救われた人は少なくない。その為に葬儀への参列を希望する者が大勢いた。
ミリアの棺はキキとフーゲルの墓の隣に埋葬された。墓標には何も刻まれなかった。これもミリアの希望だった。但し墓標の周囲には彼女が好きだったと言う花が植えられた。彼女を慕う人間がそれを目印にして墓参りするのだろう。
ミリアの葬儀が終わってもジュード達は暫くスーベニアに滞在してマリリア達の特訓を続けたが、あとは自主的な訓練でどうにかなると思われる所で区切りをつけ、ジョルジアへの帰路についた。
スーベニアを去る際に大聖堂の司教からクリスという神殿騎士を紹介された。若い女性で、ガイと同じ年頃に見えたが、ガイに比べると随分と小柄だった。知謀に長けた優秀な騎士だという。女性が選ばれたのはマリリア達に配慮した結果だと思われた。今後はこのクリスがジュード達に随伴する事になった。
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