第58話 新しい従者

一連の事件とその結末については公表された。民衆の反応は概ね好評だった。いつの時代も悪者退治はウケが良い。一部では軍務卿の強引な手法を批判する声もあったが、全てをやり終えて潔く身を引いた軍務卿を称賛する声にかき消された。


他の法服貴族も叩けばホコリが出るだろうが、軍務卿と財務卿への処罰を見て、鳴りを潜める筈だ。今の混乱が落ち着けば王都の行政機関の動きは改善すると思えた。


マルス王の勧めでガイという年上の青年がジュードの従者となった。何でも辞任した軍務卿の外孫で、曲がった事を徹底的に嫌う性格が災いし、辺境に左遷されていたらしい。以前は王都騎士団に所属し、優れた武術を持つ若手として有名だったとマルス王は説明した。


もう少しで学年末を迎える。ジュードの身体は完治したと言える状態に戻っているが、マリリアは引き続き王宮でも学校でもジュードに仕えている。ジュードの部屋に持ち込んだ机や椅子もそのままで、そこで読書する生活も変わらない。


「もう体は元通りになったのだからマリリアは自由だ。必要なら王族籍へ戻すようマルス王に助言するよ。」


「自由にして構わないのでしたら今のまま仕えさせて下さい。王族の身分も必要ありません。」


「新たにガイが従者となった。君は君で自分の将来を考えてはどうかな?」


「ガイになど任せられません。ジュードの側でお役に立てるのは私です。」


マリリアは最後の方は涙ぐんでいたのでジュードは何も言えなくなった。こんなマリリアの表情を見たのは初めてではないだろうか。気まずくなってジュードは部屋の外にあるバルコニーへと移動した。そこには目の覚める様な青空が広がっていた。



第四部 完

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