第46話 高等学校の入学試験
王都には入学試験の2日前に着いた。遠方から入学してくる学生には寮が当てがわれるので、ジュードは自分の部屋に荷物を置き、生活用品を買いに商店街へと向かった。王都の街並みはジュードの記憶にある頃より発展している。しかしその一方で建物の影で座り込んでいる浮浪者や孤児が散見された。おそらく盗難などの軽犯罪は少なくないだろう。ジュードは必要品を買い揃えて早々に寮へと戻った。
貴族子女は入学を義務付けられているので、入学試験の成績が悪くても入学は出来る。試験はクラス分けをする為で、成績優秀な上位◯◯名はAクラス、次の◯◯名はBクラスといった決め方になる。入学が義務付けられていない平民も試験を受ける事ができ、同じ試験でクラス分けされるので、受験者の貴賤が関係ない完全な実力主義と言えた。但し、貴族子女は幼少の頃から受験に向けて対策し、上級貴族家になるほどノウハウもある。完全に平等と言えるかは微妙だった。
入学時のクラス分けは重要だが、それはスタートラインでしかなく、就学中の成績によって上下のクラスと生徒を入れ替える場合がある。高等学校を上位クラスで卒業できれば人気の高い職種でも引く手数多なので、生徒は上位クラスを目指して競争する。ジュードは、親からは卒業しても実家に戻らなくて良いと言われているので、卒業後の職を得なくてはならない。ある程度の成績を取っておく必要があった。
入学試験には、基礎的な言語・計算などの必須科目と、政治・法律・文学・経済・歴史・軍略・武術・魔術などの選択科目がある。ちなみに魔術は賢者カインが誰でも使えるレベルに一般化した技術で、誰でも学びさえすれば初歩的な魔術を使う事ができた。ジュードも着火など簡単な魔術は使えるが、他者に誇れる程ではない。素直に武術を選択した。実家では長兄や次兄に遠慮して剣の稽古で本気を出さなかったが、もう戻る必要がないとなれば、手を抜く必要はない。試験では遠慮しなかった。
必須科目では全試験生が幾つかの教室に別れて規定時間内で試験問題を解くが、選択科目では科目に応じて試験方法が変わる。武術の場合は専任講師との模擬戦だった。武器は自由。呼び出された者から順に模擬戦を行うが、専任講師は相手が平民だと本気で、上位貴族家だと明らかに手を抜いていた。ジュードの時には本気を出していた様なので、騎士爵三男坊の扱いは平民と同じなのだろう。しかし専任講師といえどジュードから見れば素人同然、専任講師は一撃で倒された。
試験翌日は結果が校内で貼り出された。ジュードはAクラスだった。
ジュードとしてはBクラスかCクラスで目立たぬ学園生活を送るつもりだったのだが、他の受験生のレベルが低すぎたのだろう。幸いにもAクラスの中位だったので、学年代表やクラス代表といった目立つ役割は免れた。入学試験での最優秀者は王族で、学年代表として入学式で挨拶すると聞いた。
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