第四章 墨入れ硯に心を表す魚人と旅人の星に吠える白虎

-- 第四章 墨入れ硯に心を表す魚人と旅人の星に吠える白虎 --

合計:25770文字, シーン:399文字, カット:9557文字, セリフ:15814文字

あらすじ:ヌンリャン銀河 ヤラオ星でうまいグルメがあるので立ち寄るついでに情報収集しに来た一行

酒の飲み比べなどを挟んで、ギルドで虎への手かがりを掴むべくハバラーノ星に行くことを決意した。

岳斗たちはハバラーノ星についた

そこは津波によって、壊滅状態になっていた そして、復興している

南の漁村に到着した一行は虎のお祭りを目撃して、不思議がった。 そこにお婆さんがお祭りのきっかけ、教祖様の予言、村人たちが生贄にされて、火にくべられるなどの恐ろしい話を聞いた。

岳斗たちは村長の話を聞いて、海の魔物たちの襲撃に備えた。 深夜、音がしたので、岳斗たちは砂浜に急行して、魚獣人たちと戦った。

アレキサンダーが泡で閉じ込めた後、魔物たちから衝撃の告白がされた。

岳斗たちが驚いていると村の方でも異変が発生した。 盗賊たちが村人を連れ去ろうと襲撃しているのだ。

岳斗たちは役割分担して、村人たちの避難手伝い、盗賊退治などした。 岳斗が親分と対決。 トラックを吹き飛ばして、岳斗は中に押し込まれたテンという兎獣人の娘を救い出した。 テンを避難させようとしたところに彼女の恋人だったケンシローが現れ、岳斗は一騎打ちした。 対決の末、追い詰められたケンシローは赤い液体入りの注射器を心臓に突き刺した。 パワーアップしたケンシローに岳斗は手も足も出ず、破れる。 危うく殺されるところで仲間たちが駆けつけた。 どうにかケンシローを退けることに成功した一行は岳斗を病院に運ぶのだった。

合計:25770文字, シーン:399文字, カット:9557文字, セリフ:15814文字

シーン:一定間隔に置かれているろうそくが心細く照らす薄暗い地下 古代エジプトのピラミットを思い浮かべる迷宮の見た目をしている。

カット:廊下を反響する足音二つ・・・。 ウィルソンとマドレーヌだ。

怠慢 ウィルソン・ハベリック 「あ〜、なかなか見つからないもんだな。」

嫉妬 マドレーヌ・ミラージュ 「そりゃ、とんでもなく広いからね。」

怠慢 ウィルソン・ハベリック 「本当にさ、この情報あってるのかな? そう思いながら探すのが一番めんどくせーんだよな・・・」

嫉妬 マドレーヌ・ミラージュ 「しょうがないよ。 探さなきゃわからないじゃん。」

怠慢 ウィルソン・ハベリック 「つーか、獣の場所とか大事な書類があんな薄暗い研究室に散らばっているのおかしくね?

罠なんじゃない〜?」

嫉妬 マドレーヌ・ミラージュ 「その可能性はあるかもね。 でも、たとえ罠かも知れなくても潰し回るもんでしょ? 刑事現場100回っていうじゃない。」

怠慢 ウィルソン・ハベリック 「ええ〜。 根性を皮にしたバカだろ、そんなの。 もしくは考えることをやめたアホか。」

嫉妬 マドレーヌ・ミラージュ 「んだって! あたしがアホだって言いたいのかよ!? このグータラ野郎。」

怠慢 ウィルソン・ハベリック 「おいおい、んなこといってねーじゃねえか。」

嫉妬 マドレーヌ・ミラージュ 「チッ。 まあ、とにかく探すよ。」

カット:2人が雑談しながら小部屋に入ると突然後ろで円筒状の岩が転がって、入り口を塞いだ。

同時にろうそくがついて、壁に張り付いている人型棺桶が音を立てて、蓋が外れた。 そして、包帯まみれの人たちが飛び出してきたが、奇妙なことに包帯1本1本ずつに口がついていて、それぞれ不気味な声を出している。 それだけではなく、経年劣化で外れた包帯の隙間から眼球を失った穴、歯茎の根っこが丸見えになっている口が覗いていたり、嗅ぐ人の生気を失わせる異臭を放っている内臓が飛び出している。

怪物 「肉・・肉よこせ・・」

怪物 「目おくれよ・・。 眼球どこいった・・?」

怪物 「ぐへへへ・・・。 そこのねえちゃん・・。 心臓くれよお・・。」

怠慢 ウィルソン・ハベリック 「あーあ。 こりゃ、やばいとこに入っちゃったな・・・。

しかもご丁寧に出口を閉めちゃったしよ〜。 というわけで任せるわ。」

嫉妬 マドレーヌ・ミラージュ 「全く、グータラなんだから。 ま、やるけどね。」

カット:死体に巻きついている包帯が口を開かせて、2人をあらゆる方向から食い潰さんと襲いかかる。

怪物 「ヴァァァーーーッ!!」

嫉妬 マドレーヌ・ミラージュ 「死をも飲み込む罪なる光よ、哀れな彷徨い人にさらなる地獄を!(死者専用光魔法 命をなくした哀れな人の体内に罪なる光を発して、死者の体を朽ち果てさせる。)」

怪物 「グギャアアア・・・!」

カット:マドレーヌが杖を取り出して、呪文を唱えた。

死者が一斉に体中から生まれた光に身を当てられ、呻き声を上げながら包帯ごと消滅していった。

嫉妬 マドレーヌ・ミラージュ 「やれやれ・・。 本当はあんま使いたくないのよね。あたしたちだって死者だし。」

怠慢 ウィルソン・ハベリック 「そうだな。 光を浴びて、さらにだるくなったぞ。」

嫉妬 マドレーヌ・ミラージュ 「急ぐわよ! あの野郎どもに先を越されてたまるかよ・・!!」

シーン:ヌンリャン銀河 ヤラオ星 銀河の集合体である銀河団の中でも1、2を争う大都会星である。

銀河団に伝わるグルメ、遊戯、娯楽、何でもごされい!

カット:そこの空港に着陸した岳斗たち これまで類を見ない賑わいが遠い空港からでも聞こえてくる。

岳斗たちはそんな賑わいに胸を躍らせながら空港に足を踏み入れた。

アレキサンダー・フランドール 「うわあ・・。 こんなところがあったんだ! 人がいっぱい!」

澤宮岳斗 「本当だ。 なんか種族のバリエーションがさらに多くなっているな。」

シャルル •ヴァンタール 「なあ、早く早く! 食いに行こうぜ!! ラウマだろ、ヤヴァンだろ、ハオスバだろ、あーー!! 待ちきれんぜ! ウヘヘヘ・・・。」

澤宮岳斗 「おーい。 グルメばか。よだれ垂れてんぞ。だはははははは・・・!!!」

シャルル •ヴァンタール 「言ったな! このやろーー!!」

カット:もはやいつもの風景になったシャルルと岳斗のじゃれあいをみて、一行は愉快に笑う。

ジェシカ・スカイウォーカー 「いつ見ても仲良しで見てる方も楽しいですね。」

ダニエル・ロワノフ 「同感じゃ。 ところで獣を探さなくていいのか?」

凪空加那江 「獣は神出鬼没だから、基本は図書館で調べたり、聞き込みをしながら情報を集める必要があるの。

ここは大都市だから情報が集まりやすいと思ってね。」

レオナルド・グランターン 「とか言って、本当はグルメを制覇したいなんてな・・・。 まあ、焦ったって仕方がない。」

ダニエル・ロワノフ 「そうか・・。 じゃあ、わしもとことん楽しませてもらうぞ!」

カット:しばらくして、街に入ると賑わいはさらに大きくなり、お祭り状態であり、多くの人で溢れかえっている。

澤宮岳斗 「ぬおお!! こりゃ、レプリアム王国以上だせ!」

レオナルド・グランターン 「シャルル、アレキサンダー。 迷子にならんように抱えてやろう。」

シャルル •ヴァンタール 「ああ、サンキュー。」

アレキサンダー・フランドール 「わあ・・。 あたい、生まれてからこんなにたくさんの人が集まっているの見たことないよ!」

カット:アレキサンダーは目をキラキラ輝かせながら、尻尾を勢いよく振っていた。

一行は獣についての情報を集めるために酒場を探して、人々たちを必死に嗅ぎ分けている。

凪空加那江 「ごめん、ちょっと失礼。」

ダニエル・ロワノフ 「ぬおっと・・。油断したらはぐれそうじゃ。」

シャルル •ヴァンタール 「そんときゃ、探知魔法かけてやるから心配するなよ。」

ジェシカ・スカイウォーカー 「あ! あそこなんかどうでしょうか? 結構大きめですよね。」

レオナルド・グランターン 「うむ。 そこにしようか。」

カット:屋根が魔女の帽子のように急なのが特徴である大きな酒場にはいった岳斗たち。

ここは銀河に関するあらゆる仕事を扱っているギルドで、一階は客用に開放されていて、大人気の酒場になっているようだ。

「いらっしゃーい! 何にしますぅ〜?」

レオナルド・グランターン 「麦ビール7つ貰おうか」

凪空加那江 「あっ、あたしと岳斗は17歳・・、まあいいか。

四捨五入したら20だもんね。(よくはないけど・・?)」

シャルル •ヴァンタール 「なあ、ビールに合うおすすめな料理ってあるか?」

「はい、ございますよ。 ル・クールジュです。

星丸ごとが海になっているイオバ星でしか取れない魚があり、ミカエルと言います。 希少なミカエルという魚を一匹丸ごと使い、天使の涙と呼ばれるユキノウスをふんだんに溶かしたムニエルでございます。 ミカエルはどこを食べても美味しいです。 何なら、骨まで食べられますよ。」

澤宮岳斗 「ユキノウスってなんだ?」

「ユキノウスというのは花の形をしている星同士の花びらの接触による刺激で出来るものです。 この話から恋人が末長く一緒に暮らすことを願うためにユキノウスをかけた様々な料理を一緒に食べるというのが流行っています。 例えば、魚の尾を上下に分けて一緒に食べると恋愛が実ると言われているそうですよ。


今作ります〜 しばらくお待ちください。」

カット:料理が作られる間、岳斗たちは先にビールで乾杯して、雑談を楽しむ。

岳斗はアレキサンダーをボヤーっと見ながら言った。

澤宮岳斗 「だとさ。 アレキサンダー、どーする?」

アレキサンダー・フランドール 「あんたとは断るよ! ただもふもふしたいだけじゃないか!!」

澤宮岳斗 「ばれた?」

シャルル •ヴァンタール 「なあ、岳斗。 この場合、加那江だろ?」

凪空加那江 「え!?」

澤宮岳斗 「何? まあ、確かにな。

しかし、お前はいいのか?」

シャルル •ヴァンタール 「いいんだよ〜。 何たってな、俺にゃ、杏ちゃんという未来の花嫁がいるんだよな♡ ボォー・・・。」

澤宮岳斗 「杏ちゃんか、確かに可愛い。 あ、思い出した。日向たち元気かな。」

ジェシカ・スカイウォーカー 「この冒険が終わったら一度あなたが住んでいる所に行きたいですね。」

アレキサンダー・フランドール 「あたいも! 気になるわ。」

「皆様、出来上がりましたよ!」

カット:店員が湯気が雄大に舞い上がっている魚料理ル・クールジュが3つ運ばれて来た。

ダニエル・ロワノフ 「おお・・! わしの星では魚は貴重品といってもいいほどじゃったからな、楽しみだわい。」

澤宮岳斗 「こりゃ、でけー! 加那江、いただきます。」

凪空加那江 「美味しそうね! いただきまーす。」

ジェシカ・スカイウォーカー 「レオさん。 いきますよ。」

レオナルド・グランターン 「そうだな。 どんな味がするのやら?」

カット:シャルル以外の一行は一斉のタイミングで尾の上下を食べた シャルルは一足早く身の味を堪能した。

澤宮岳斗 「うめえええ!! こりゃ、パリパリしている割には後味が長く続くぜ!」

シャルル •ヴァンタール 「おお! なんだ、ふっくらでいて、蜜と魚身が互いの味を邪魔しないどころか、互いの深い旨みが引き出される。」

アレキサンダー・フランドール 「すっごーい! こんなに干からびていない魚は初めて食べたよ! 天国!」

レオナルド・グランターン 「ビールとも合うな。 おつまみにはうってつけだ!」

カット:あっという間に骨も食って、完食した一行

澤宮岳斗 「あー、食った食った。(そう言って、腹をポンポン叩く)」

ジェシカ・スカイウォーカー 「さて、情報でも集めましょうか。 しかし、上も賑わっていますね。」

凪空加那江 「ギルドというくらいなんだから2階は依頼とか受けたりする所なんじゃない?」

レオナルド・グランターン 「そうだな。 情報が得られるかもしれん。 行こう。」

カット:2階に行くと賑わいはさらに増した。 依頼書が貼られている大きな提示板、受付などが奥にあり、その手前に幾つかのテーブルが置かれている。

みると2人の商人がテキーラの飲み比べをしていた。 一方はメガネをかけているひょろひょろなホシヒトデ(1頭身の体型で5頂点のうち、それぞれ2つずつが手足になっていて、残り一つに目、口がついている)、もう一方はパワータイプ肥満体型の青い鬼だ。

商人 「おい! もう一杯だ。」

商人 「おう。 受けてやらあ。」

澤宮岳斗 「やってるなあ。」

レオナルド・グランターン 「こりゃ、楽しそうだ。」

カット:しばらく見ていると青鬼がテキーラが入ったコップを持ったまま椅子から倒れた。

モブ 「ウオオオオーーーッ!! まじかよ!?

あいつ、底なしなんじゃねえか!」

商人 「YES!! YES!! I'mテキーラチャンピオンじゃあ!!

誰か俺に勝つやつはいねえか!? 腰抜けども!!」

カット:その時、群衆を掻き分け、名乗りあげた男どもがいた。 岳斗とダニエルだ。

澤宮岳斗 「ここにいるぜ! おい、あんたに挑戦してやる!

なにしろ負けず嫌いなんでな。」

ダニエル・ロワノフ 「わしも酒は強いんじゃよ! よく仕事の依頼主と朝まで飲み明かしたりしたからのう。」

商人 「ワハハハ!! 俺も舐められたもんだな。

こんなガキとジジイに挑戦されるとはね!!」

澤宮岳斗 「おいおい、そいつあ、やって見なきゃわからんだろ? それにあんた、酔い覚まさなくていいのか? ハンデか?」

カット:岳斗の一言に群衆が目を見合わせ、大笑いした。

モブ 「フッハハハハ!! おい、こいつ、とんでもなく田舎もんだぜ!

酔い覚ましの秘薬『チャン・コルゲン』を知らないとは!!」

モブ 「引っ込め、馬鹿野郎! お酒の味も知らんおぼっちゃま様がよぉ!!」

商人 「だそうだ。 どうだ、やるかね?」

澤宮岳斗 「舐めんじゃねえよ。 ヒトデ野郎。」

シャルル •ヴァンタール 「あーあ、頭空っぽか? こいつは。」

凪空加那江 「先走るタイプみたいね。」

カット:岳斗、ダニエル、ヒトデがテーブルに座った。 ヒトデ人が酔い覚ましの薬を飲むと赤く火照っていた顔がたちまち白色に戻った。

観客の歓声がさらに大きく響き渡る。 早速賭けが始まったようだ。

モブ 「おい! 野郎ども、今からテキーラ飲み比べ対決が始まるぜ!!

チップ比は1:100:120だ!! ジジイが100でガキが120だ!!」

レオナルド・グランターン 「うーん。 かなり舐められているな。」

モブ 「あのチャンピオンが勝つに決まってるぜ!! あんなの大穴どころか毛虫のクソ垂れが出るガバガバ穴だ!!」

モブ 「じゃあ、今から始めるぞ!」

カット:審判がゴングを鳴らし、3人は一斉に一杯目を一気に飲み干した。

ダニエルがつまらなそうに言い捨てた。

ダニエル・ロワノフ 「こんなの水じゃな・・。 飲んでる気にもなれんのう。」

商人 「ほざけ! クソジジイ。」

カット:観客が見守る中、順調にテキーラを飲み干す3人。 

37杯目 岳斗とダニエルは全く赤くなってないが、ヒトデは血を浴びたように赤くなって、限界寸前だ。

岳斗が審判を手招きして言った。

澤宮岳斗 「チンタラ飲むのも飽きたぜ。 樽丸ごと持ってこいよ。」

モブ 「かしこまりました。 おい、樽丸ごと3つだ!」

モブ 「へえ! 承知いたしました。」

カット:マッスルボティの人たちが倉庫からテキーラ300杯分の樽を3つ持ってきて、岳斗たちの横に勢いよく置かれた。

ジェシカ・スカイウォーカー 「いくら何でもあれは無茶が過ぎるんじゃない!?  流石に止めた方がいいのではないですか?」

凪空加那江 「うーん、止めても無駄かも。 あいつら馬鹿だから、しょうがないわ。」

シャルル •ヴァンタール 「急アルの治療魔法ってあったっけ・・・?」

澤宮岳斗 「ダニエル、いけるか?」

ダニエル・ロワノフ 「もちろんじゃ。 誰に物言ってるんじゃ!!」

澤宮岳斗 「だよな、じゃあ、行くそ!」

カット:岳斗とダニエルは樽を丸ごと上に持ち上げ、酒をブラックホールあるいはアニーのように飲み干した。

2人は空っぽの樽を床に勢いよく置き、ヒトデ野郎に言い放った。

澤宮岳斗 「さあ、てめえの番だ。 飲めよ。」

商人 「飲むよ・・・。 あ・・・。(でけえ!! こんなの今まで飲んだことねえ・・・)」

ダニエル・ロワノフ 「どうした? あんたの得意分野なんじゃろ? ああ、持ち上げられんならわしが手伝ってやろう。」

商人 「あーー!? な・・・なななななめんなよ!? このくらい軽いってんだ!! そらっ!!」

カット:ヒトデが舐められたことへの怒りでどうにか樽を持ち上げ、テキーラを一気に注入した。

商人 「ガブガブ・・・」

カット:飲み始めてから数秒もしないうちに白目を剥いて、樽を落として、後ろに勢いよく倒れた。

樽はマッチョ男に受け止められ、すぐさま栓が閉じられた。 周りの観客から歓声、悲鳴など様々な声が上がった。

モブ 「何だと・・・!? OH、NO!! 俺の金!!」

モブ 「おおおお!!! YES! あんた、すげえよ!!

俺もうかった!!」

澤宮岳斗 「やれやれ、酔い覚まし薬に頼ってるんじゃまだまだだな。

逆立ちして、酒を耳、目、鼻、けつの穴から飲めるようになってから出直してきやがれってんだ!! アカヒトデ野郎が!!」

カット:加那江たちが岳斗とダニエルの近くに来た。

レオナルド・グランターン 「よくやった!」

澤宮岳斗 「あたりめえよ!!」

カット:岳斗とレオナルドは男のハグを交わした。 首元で鳥さん特有のモフモフを堪能したのはいうまでも無い。

アレキサンダー・フランドール 「ねえ、岳斗。 あんたはなんでそんなに酒強いのよ?」

凪空加那江 「そういや、不思議よね。 生まれつき肝臓が強くてもこんなには飲めるかしら・・?」

澤宮岳斗 「あ・・。 赤ん坊の頃から親父の友達たちにしこたま飲まされたんだ。

そのせいか、母ちゃんによると3歳の時に2リットルのテキーラを10本くらい空けて、マイケルジャクソンのダンスを披露したそうだ。」

凪空加那江 「私の生まれたところでもハブの入っている酒を大人たちがガバガバ飲んでいるのをみたことはあるけど・・・

貴方、とんでもない幼児だったのね。」

レオナルド・グランターン 「そいつは結構鍛えられたな。」

シャルル •ヴァンタール 「つーか、20キロも増量して踊れんのかよ・・。」

カット:岳斗の昔話が出たところで、岳斗たちのことを見直したやつどもが来て、岳斗とダニエルは彼らと熱いハグを交わした。

そして、思い出したように本来の目的である情報収集をするべく聞き込みを始めた。

澤宮岳斗 「そーいや、この銀河で、黒い影や獣が人々を襲う事件は発生していないのか?」

モブ 「さあ、聞いたこともねえよ。」

凪空加那江 「じゃあ、モンスターが大量発生して、人々を襲う事件とかはないの?」

モブ 「うーん、無いなあ。」

澤宮岳斗 「そうか、どうもありがとさん。」

アレキサンダー・フランドール 「ねえ、依頼書が貼っているポスターがあるよ。 なんかわかるかも。」

ダニエル・ロワノフ 「ほう? どれどれ。 ん?

隕石によって、大陸の大部分が水没した星じゃと。 ホホォ〜、達成した人には500万グラシュか。 5年くらい遊んで暮らせるくらい大金じゃ!(10万グラシュあれば、1年間は人並みに暮らせる)」

アレキサンダー・フランドール 「へえ。 それで、大陸に棲家を押しつぶされ、行き場を失った海の魔物たちが人々の村に襲撃していて、退治してほしいのか。 きっと、大変だろうね。」

シャルル •ヴァンタール 「む! その星って、王様がこの間遠征に行っていたところか。」

凪空加那江 「ハバラーノ星ね。 あら、下に何か書いてあるわ。 断層ができて、そこから魔物が這い上がって来るとか。」

レオナルド・グランターン 「なるほど。 あちこちで被害が起きているのだな。」

ジェシカ・スカイウォーカー 「受付さん、この星の距離はどうなっていますか?」

受付 「数時間で行ける距離です。 しかしながら、とっても危険なので、依頼を受けた人しか行けないことになっております。」

レオナルド・グランターン 「ふむ・・・。 このの依頼を受けたいのだか、できるか?」

受付 「依頼を受けるにはヌンリャン銀河公認の冒険者免許を提示していただかないとダメでございます〜。」

レオナルド・グランターン 「そうか・・・」

凪空加那江 「登録するにはどんな方法があるの?」

受付 「まず、ここであなた方たちの情報を冒険者申請用紙に記入します。 次にそれをこの銀河全域を管理する銀河政府へ配達しまして、それは最低でも60日間かかります。 そして、また60日して、政府から受験票が届いてくるので、申請するときに希望した会場へ来ていただいて・・・。 ペラペラペラ・・・。」

澤宮岳斗 「わかったわかった。もう十分だ。 くっそ〜。

のんびり待っている暇はないんだぜ!」

シャルル •ヴァンタール 「あ。 俺、同じようなやつ持ってるぜ」

ジェシカ・スカイウォーカー 「え!! 本当ですか。」

カット:シャルルは胸を張りながら言った。 そして、紫色の丸い空間を浮かび上がらせた。 そこから金メダルのようなものを取り出した。 表には川が静かに流れるような長い髪型をしている白狐獣人の伝説魔導士であるリイフ・ミラジュバの横顔が、裏にはシャルルの名前と免許証の名称が刻まれていた。

シャルル •ヴァンタール 「この魔導士免許なら持ってるぜ。 ほら。」

澤宮岳斗 「それがなんだよ?」

シャルル •ヴァンタール 「これはジュネス星、サヴォアソン星、このハバラーノ星など、今まで行った星が中に収まっているマガリュ超銀河団の首都ならぬ首星ワバオーグ星で行われたS級魔導士試験に合格した人にだけ与えられる免許証だな。 これがあれば、立ち入り禁止されているところでも大体行けるもんだ。」

凪空加那江 「ええっ!! そうなの。

それに適用範囲がかなり広いわね。」

受付 「確かに拝見いたしました。 依頼を受領します。

この書類にサインを。」

シャルル •ヴァンタール 「あいよ。」

カット:シャルルはカウンターの上に飛び乗って、慣れた手つきでサインをした。

受付 「では、皆様、気をつけて行ってっしゃいませ。」

カット:一行が異変調査のための手続きを終わらせ、ギルドの門を潜ったのと入れ替わりに太いモチモチの尻尾と両拳に黒いトゲトゲ付きのベルトを巻きつけたシャチの獣人が入ってきた。

彼の首元には大きな傷跡があった。

モブ 「おお、ロント! 久しぶりだな。一杯やらんか?」

ロント・リギー 「久しぶりだ、ラベラ。 そうしよう。

ホラントさん。 ウリゲール星のタコ怪物倒してきたぞ。 依頼達成証明書だ。」

受付 「なんと! あれは500年誰も倒せなかった・・・。 さすがですね!

報酬はいつも通り口座に振り込んでおきます。」

ロント・リギー 「ん・・・。 ありがと。」

カット:ロントは受付ににっこりした笑顔を向け、友人がいるテーブルの方に行った。

彼の友人であるラベラの向かい側に座って、酒を乾杯した。

シーン:ハバラーノ星 草原

カット:岳斗たちが船を降りるとそこには花や草が生い茂る楽園のような景観だ。

一行はあまりの絶景に目を奪われ、思わず歓声が漏れ出た。

ジェシカ・スカイウォーカー 「おー! 綺麗な風景ですね。 心が洗われる。」

レオナルド・グランターン 「こんなとこに隕石が衝突したのがまるで嘘のようだ。」

ダニエル・ロワノフ 「でも、本当の話じゃな。 行くか。」

澤宮岳斗 「おう。 ここから南か。」

シャルル •ヴァンタール 「日が傾いてきてるが、急げば、夕暮れには現場近くの村に着くだろ。」

凪空加那江 「じゃあ、いきましょう。」

シーン:夕暮れ 近くの海から夕陽が赤く染める風景を眺められる漁村

カット:一行が到着すると村人たちの掛け声が響き渡っている。 その声を見ると白虎を形取った布像を棒で上下に持ちあげて、村人たちが交互に足を上げながら歩いているのが見えた。 加那江は首を傾げながら言った。

凪空加那江 「あの人たちは何をやってるの・・? お祭りかしら。」

澤宮岳斗 「さあな? 大漁を祈っているのか?」

カット:不思議がっている一行に1人の年配が近づいて言った。

彼女は全身が赤い蟹(カニ)獣人で、6本のはさみ腕と蜘蛛のように数多の足を上下に動かしながら歩く以外は他の人型生物と大して違いはない。

モブ 「あれはですね・・ 白虎様に太陽を返してもらうのをお願いしているんです。 なんでも虎様の怒りを鎮めるにはこれがいいんだとか。」

澤宮岳斗 「虎?」

シャルル •ヴァンタール 「日食みたいなもんか。」

カット:アレキサンダーが太陽を指差して言った。

アレキサンダー・フランドール 「太陽ってあれのこと? その虎様ってとんでもない盗人だね!」

モブ 「とんでもありません。 私たちは先祖たちの罪を償っているのです。」

レオナルド・グランターン 「罪?」

カット:おばあさんは太陽を見ながら言った。

モブ 「昔々、先祖様たちは命を与えてくれる太陽に毎朝礼拝することで感謝を伝えていました。 その頃、私たちは明日のことも考えられないような生活でした。」

澤宮岳斗 「戦でも起きたのか?」

モブ 「いいえ、それよりもさらに恐ろしいものです。 津波でございます。

私の祖母から聞いた話だと、海の浮き沈みが激しく、一夜の間に全滅した村もあったそうな。 それはどこでも起こり得たものでした。」

アレキサンダー・フランドール 「そんなに恐ろしいものだったら海から遠くに引っ越せばいいんじゃない?」

モブ 「この星は海から遠ざかると生息する生き物がぐんと減ってしまいますので、私たちは海なしには生きていけないのでございます。」

ダニエル・ロワノフ 「今も太陽が消える時に津波は起きているのか?」

モブ 「いいえ、今は津波の心配はなさらなくて良いのです。 とあるお方が津波を鎮めてくれたのです。

偉大なる教祖様でいらっしゃったロドルナ・ルネルバ様でございます。 長い髪と髭を蓄えた老人のなりをしておりました。」

凪空加那江 「へえ・・・」

カット:おばあさんは海の方を指差して言った。

モブ 「今は沈んでいますが、そこには遺跡があります。 かつて、それがまだ陸の上にある時、1人の教祖様がいらっしゃいました。

その時、突然、星をも飲み込む津波が教祖様に襲いかかりました。 しかし、偉大なことに、彼が呪文を唱えると津波は跡形もなく消え去ったのです。

私たちはそれから教祖様と敬うことになったのでございます。」

ジェシカ・スカイウォーカー 「そんな人がいたのですね・・・ 感謝しても仕切れないでしょう?」

「はい、そうでございます。

続きがあって、教祖様は津波を消し去った後、村を出て、7日間行方知れずとなりました。

そして、7日後、村に戻ってきて、私たちにこう言われたのです。

『私は神に預言を貰い受けた。 今からそれを伝える。

あなたたちは私の手によって、津波から守られた幸運な人たちである。 しかし、それは同時に罪も貰い受けることになってしまうことでもあるのだ。

神は死すべき人が生きていることにお怒りである。 見よ、我らに命をもたらす光が奪われるであろう そして、永遠の闇が広がるだろう』」

カット:教祖様がそう言って、手で太陽を差すとなんと驚くことに太陽が虎によって飲み込まれ、あたりが闇に覆われてしまった。

モブ 「私たちは驚き、狼狽しました。 そして、教祖様に助けを求めたのです。

そしたら教祖様はこう言われました。」

澤宮岳斗 「何を言った?」

「『祈りなさい。 そして、神の隠れし時、生贄49人を燃やして、神に捧げよ さすれば、其方たちを飲み込む怨霊は沈黙するであろう』」

カット:それを聞いたみんなは一斉に息を飲み込んだ。 口がなかなか開かない。 しばらく経って、1人が言った。

ジェシカ・スカイウォーカー 「なんと・・。 罪のない人たちを犠牲にするとは!

その教祖は太陽を覆う虎を倒そうとはしなかったのですか?」

カット:おばあさんは体を震わせながら首を振るだけだった。

アレキサンダー・フランドール 「その教祖様も大したことないね。 教祖を名乗るぐらいなら、全員救えって話よ!」

レオナルド・グランターン 「お前のいうことにも一理はある。 俺も同感だ。

しかし、全員と一部を犠牲にすることを選ばさるを得なかったとしたら・・・。 無闇に責められるものではない。」

ダニエル・ロワノフ 「しかしな、若い人が犠牲になるのは年寄りには一番堪えるぜ。」

カット:岳斗が両拳を突き合わせて、勢いよく言った。

澤宮岳斗 「とにかく話は分かった! 俺たちが虎を倒してくるぜ! もしくは太陽を食べないように説得するとかな。」

モブ 「そんな・・・。 関係ない旅人様に頼ってしまっては申し訳ありません。」

シャルル •ヴァンタール 「関係ならあるぜ。 なにしろ、俺たちも虎を追っているからな。」

カット:おばあさんは一瞬迷った末、頭を下げた。 顔は青くなり、震えている。

モブ 「やはりいけません・・・。 お気持ちはありがたいのですが、ご先祖様の罪は私たちが背負うものなのです。

それに虎様を怒らせでもしたら、私たちはとても生きてはいけません。 」

凪空加那江 「でも、村人たちには何の罪もないじゃない!」

モブ 「ええ、それは分かっております。 しかし、私たちにはこうするしかないのです。

どうか、どうか・・・お願いします。」

カット:おばあさんは指を指して言った。

モブ 「あちらに宿がありますので、一泊して、翌日お帰りください。 旅人たちよ、幸運を。」

カット:言い終わった後、おばあさんは縮こまるようにお辞儀をして、立ち去ってしまった。

一行はたちすくむしかなかった。

ジェシカ・スカイウォーカー 「困りましたね・・。 とりつく島もないのはこういうことですか。」

シャルル •ヴァンタール 「どうすっかな・・? このまま帰るか行くか、どっちにも決めにくい状況だな。」

凪空加那江 「そういえば、依頼受けて、ここに来たのよね。 とりあえず、その討伐する魔物を倒してから考えましょう。」

アレキサンダー・フランドール 「賛成! その魔物が案外鍵を握っていたりして。」

レオナルド・グランターン 「ふむ。 依頼書によると村長が依頼したと書かれているな。 とりあえず、村長に話を聞きにいくか」

ダニエル・ロワノフ 「そうだな。」

シーン:一行は村長に依頼受領を伝えて、詳しい話を聞くために村長の家にきた。

カット:岳斗がノックする。 しばらく待つと木のドアが錆びた音を発しながら開き、中からアサリ貝が出てきた。

彼は殻の中に髭と腕が生えた身が入っている外見であった。 

村長 「おお、旅人よ。 私に何の用かな?」

シャルル •ヴァンタール 「ヤラオ星のギルドに依頼しただろ。 俺たちがその依頼を受けて、ここに来たんだ。」

村長 「なんと! あの魔物どもを倒して下さるというのですか! ささっ、お入りください。」

ダニエル・ロワノフ 「おお

では、言葉に甘えて。」

カット:村長は貝ごと飛び跳ねて、客間に案内した。 一行がソファに座った後、依頼に関する話が始まった。

澤宮岳斗 「その魔物ってどんな奴なんだ?」

村長 「そいつらはサメ、イルカ、クジラとかの獣人だ。 奴らは大群で海から上陸して、防波柵や家を壊したり、村人たちを海に引き摺り込んで窒息死しようとしているのです! 今までも何十人かが引き摺り込まれ、それっきりでございます・・・」

カット:言い終わると貝村長は涙を流した。 涙は下側の貝にたまり、彼の身を浅く浸した。

村長 「お願いします! 奴らを倒して、これ以上の被害を食い止めてください!」

澤宮岳斗 「もちろんだ。 依頼を受けたからはやり遂げてやるぜ! 任せときな。」

シャルル •ヴァンタール 「こいつは頼りになる奴だ。 大船に乗ったつもりでいてくれ。」

村長 「おお・・・!! これで枕を高くして眠れますぞ!」

カット:村長は合掌をして、手を擦り合わせた。

澤宮岳斗 (しかしな、サメとかイルカの獣人か・・・。 色々な意味で平和的に解決したいな)

レオナルド・グランターン 「それで今まで奴らはどのタイミングで現れたんだ?」

村長 「特定の日であるわけではないのですが、必ず深夜に現れました。」

ダニエル・ロワノフ 「そうか・・・。 とりあえず、宿に行って、襲撃に備えておこうか。」

凪空加那江 「そうね、分かったわ。」

カット:一行は村長に礼をして、その場を後にした。

シーン:太陽が日没して、闇が広がった頃 宿の中

カット:夕飯を済ませた岳斗たちは受付に部屋を一泊予約してもらい、部屋割りを決めるところだ。

凪空加那江 「部屋が二つね。 それぞれベットが3つ。 男子と女子に分かれるパターンかしら?」

澤宮岳斗 「よし、シャルル。 俺が子守唄と華麗な手捌きで夢の世界に案内してやるぜ。(ぐへへへ・・・。 こりゃ、お触りパラダイスだ)」

シャルル •ヴァンタール 「おい、ゲロ以下の匂いがブンブンしてくるぜ、変態野郎。

ジェシカと寝ることにするわ。」

澤宮岳斗 「ガビーん。 Oh,no! ガッデム!!」

アレキサンダー・フランドール 「じゃあ、岳斗、レオ、ダニエルがあっちで、後はそっちってことね。」

ジェシカ・スカイウォーカー 「ええ。 では、最初の見張り2人はどうしますか?」

カット:話し合いの結果、アレキサンダー→ジェシカ→レオナルド→ダニエル→加那江→シャルル→岳斗で2人交代制に決まった。

シーン:深夜、宿 多種にわたる色の星が夜空に輝いている

部屋には岳斗の寝息が漆黒の中を彷徨う宝石を慰めるように奏でている。

カット:襲撃に備えて、レオナルドとダニエルが寝ずの番をしていた。 1時間後にレオナルドは加那江と交代する予定だ。

2人は丸い星々を見ながら、退屈を紛らわすために色々話していた。

ダニエル・ロワノフ 「星が綺麗じゃな。 これで酒が飲めれば、いうことはないんじゃがなあ・・・」

レオナルド・グランターン 「ふっ。 そうだな。」

ダニエル・ロワノフ 「しかし、襲撃かあ。 虎とどう繋がっていくんだろうな。」

レオナルド・グランターン 「それはまだわからんが、おそらくあの教祖が鍵を握るのだろう。 

おばあさんの話によると津波を止めたのも太陽が隠れるようになったのも教祖が現れたタイミングだ。」

ダニエル・ロワノフ 「そうだな。 教祖が怪しいとも限らんがな。」

レオナルド・グランターン 「教祖といえば、7日間行方知れずだったな。 預言をもらうために特定の場所に行ったか、あるいは・・・」

ダニエル・ロワノフ 「それ以上は憶測の域を出ないが、気にはなるな。 しかし、津波と太陽喰い、か。

老婆の話によると太陽が隠れた時にひどく驚いたそうだ。 津波とは関係ないのか・・?」

レオナルド・グランターン 「うーん。 仮に喋れたら、魔物たちに話を聞いてみたいところだな。 少なくとも津波のことは詳しく分かりそうな気がする。」

ダニエル・ロワノフ 「うん・・・。  ところでレオとジェシカはどういう馴れ初めなんだ?」

レオナルド・グランターン 「えっ・・・?」

ダニエル・ロワノフ 「わしもマリアとの馴れ初めとかを話したじゃろ? お主のも気になってな。」

レオナルド・グランターン 「ああ・・・。 彼女が19の時にジェシカに庭に呼び出されて、プロポースされた。

ジェシカがいうには自分が8歳の頃に自分が奴隷商人に誘拐されそうになったのを俺に助けてもらった時に一目惚れしたそうだ。 馬に乗って、自分をひょいと引っ張ったのがまるでお話に出てくる王子様みたいで俺の前に乗っている間、ドキドキが止まらなかったみたいだ。」

ダニエル・ロワノフ 「ほお・・・それでどうしてお主はOKしたんじゃ?」

レオナルド・グランターン 「これは話すと長い。

ジェシカが8歳の時、俺は15だったから王国を守る兵士として遠征やら訓練やらで大忙しだった。 ある日、1ヶ月ぶりの休息日だったから、街で遊ぶことにした。 そんで、友達を誘って、カジノに行った。

まあ、2人とも若きの至りでオールインして見事に玉砕してしまってな・・・。 まだ日も暮れずにトボトボ帰っている時に偶然城下町の人と楽しく話している女の子を見かけた。 それをみているうちになんとなく心があったかくなってきた・・・。 今思えば、これが恋というものだったのだろう。

その数日後、遠征に行くことになって、軍列で馬に乗っていた時に悲鳴が聞こえたので、みたらあの女の子だった。 俺たちはすぐさまに司令官の指揮で商人をボコボコにして、その子を誘拐から救った。 あとでその女の子が皇女だと分かって、目ん玉が飛び出るほど驚いた記憶がはっきりあるぜ。」

ダニエル・ロワノフ 「互いに一目惚れだったのか・・・。 そいつあとんでもなくロマンチックじゃ!!

運命ってどうなるか分かったもんじゃないのう。 ふふふ、面白い。」

レオナルド・グランターン 「同感だ。 それにクリスとも出会えたのだから、感謝せねばな。」

カット:そこまで話して、レオナルドは時計を見た。

レオナルド・グランターン 「おっ、そろそろ加那江を起こしてくるか。」

ダニエル・ロワノフ 「いや、わしが行くぞ。 お前は寝てくれ。」

レオナルド・グランターン 「そうか、悪いな。 じゃあお先に。」

カット:レオナルドはそう言うとベットに行き、布をかぶって寝始めた。

ダニエルは立ち上がって、女子の部屋に行った。 そして、入室して、加那江を揺さぶった。

ダニエル・ロワノフ 「加那江、交代の時間じゃ。 起きてくれ。」

凪空加那江 「んー。 分かったわ。 ふああ・・・。」

カット:加那江が万歳するように腕を上に伸ばして、あくびしたその時、突然浜辺から何かが叩き壊される声がうっすら聞こえた。

ダニエル・ロワノフ 「!? 今のは・・・。」

凪空加那江 「もしかして! あの魔物たちかも。」

ダニエル・ロワノフ 「なんと! おい、みんな起きろ! 大変だ!!」

カット:ダニエルの声掛けで女子たちとシャルルは全員起きて、緊急事態を理解した。

同時に髪が乱れている岳斗とレオナルドが部屋に入ってきた。

レオナルド・グランターン 「みんな起きているか?」

ジェシカ・スカイウォーカー 「はい。 すぐに出発しましょう!」

凪空加那江 「確か浜辺から聞こえたわ。 急がないと大変なことになる!」

シーン:深夜 浜辺入り口

カット:一行が音が聞こえたところに駆けつけるとそこには津波防止バリゲートを壊している鮫、イルカ、クジラなど、色々な体型の魚獣人たちがいた。

すぐさま、岳斗が複雑そうな顔を浮かべながら声を上げた。

澤宮岳斗 「おい! てめえら・・・。 退くなら今のうちだぞ。

でねえと仲間達がボコボコにしてしまうぜ。」

カット:しかしながら、岳斗のかすかな希望は理不尽にも吹き飛ばされた。

魚獣人は険しい顔をして言い放った。

魚獣人 「あんだと!! よそ者がしゃりしゃりでてくんじゃねえよ!

この野郎、ぶちのめされたいか?」

澤宮岳斗 「あらあ・・・。 だめだこりゃ。」

カット:岳斗がちょっと残念そうな顔をしている横で薙刀を構えているジェシカが腹から声を出して言った。

ジェシカ・スカイウォーカー 「貴様ら! この村の人たちに危害を加えているそうだな。 まとめて来い、成敗してくれるぞ!」

カット:奴らどもは鋭い目と牙を覗かせて、一斉に岳斗たちに飛びかかってきた。

レオナルドが間も置かずに火矢を空中に射る。

レオナルド・グランターン 「ラージス・フディラ!」

カット:レオナルドが作った花火が燃え盛る流星群となって奴らに落ちてきた。

襲撃者たちが吹っ飛ばされたり悲鳴を上げたりした。 しかし、次々と新たな仲間達が砂浜を埋め尽くすように上陸してくる。

ダニエル・ロワノフ 「うお! こりゃとんでもない数じゃ! テラキュダス・ラサシェ!」

カット:ダニエルが地面をハンマーで叩いて、砂が棘になり、奴らを突き刺さんとした。 しかし、棘が体を擦りながらも彼らは怯むことはなかった

魚獣人 「くそ、痛え! おい、てめえら、とっととやっちまえ!」

ダニエル・ロワノフ 「おっと、そうはいかんわい。 シノビファントム!! 出番じゃよ。」

カット:ダニエルがニヤッとしながら腰のバックからクナイ型の爆弾を取り出して、奴らの足元に投げ刺した。

すぐさまクナイが爆発して、灰色の霧が奴らを覆った。

魚獣人 「なんだ!? 何も見えん!」

カット:混乱する彼らに忍びが灰色の霧を纏って攻撃してきたので、奴らは反撃したが、奇妙なことに攻撃が忍びの体をすり抜けてしまった。

魚獣人 「な!? こいつら、幻影だ!」

魚獣人 「おい、ひとまず脱出するんだ!! 俺の嗅覚だと海はこっちだ。」

魚獣人 「てめえら、区切り直しだ。 海に行って、霧が晴れたあと、反撃するんだ!!」

カット:奴らは連携の取れた動きで一時的に素早い撤退を披露したが、そこまでは甘くない。

アレキサンダー・フランドール 「どこに行くんだい、逃がさないよっ! バブルグラビティ!」

カット:アレキサンダーが泡を逃げる奴らに発射して、奴らを残らず閉じ込めた。

奴らは暴れ回るが、泡はちっとも破れない。

魚獣人 「くそ! こうなったら煮るなり焼くなり好きにしやがれってんだ!」

澤宮岳斗 「本当に好きにしていいのか・・・?」

カット:岳斗が顔を少し赤くしながら言ったのをシャルルが呆れてツッコミした。

シャルル •ヴァンタール 「ぜってーそう言う意味で言ったんじゃないだろうよ。」

カット:奴らが暴れ回っていると突然ビリッとした声が響き渡った。

魚獣人 「おい、てめえら! 海の民たるもの、死す時は無様にもがくな。 星に祈って、待つのだ。」

カット:その瞬間、奴らは一斉に黙って、おとなしくなった。 どうやらさっきの声の主はこの集団をまとめるボスであるサメ獣人のようだ。 マッチョで左肩に大きく目立つ噛み傷があった。

ジェシカが閉じ込められているボスの1人の前に立って、質問した。

そのサメは泡の中で胡座をかいて、ジェシカを見上げていた。

ジェシカ・スカイウォーカー 「お前らはどうしてこういうことをするんだ? どんな事情があると言うのだ。」

魚獣人 「・・・奴らが裏切ったからだ。」

凪空加那江 「裏切った?」

魚獣人 「ああ、俺たちは俺たちをタマゴから産んでくれた母でもあり、ボスであるこの星と共に海の中で生きていたんだ。」

シャルル •ヴァンタール 「星が産むのか? 生きている・・・?」

魚獣人 「ああ。 俺らは海底の砂の中で卵として生まれ、数週間後に卵の殻を破って、この広い海を泳ぐのを一生にしている。

そして、俺たちの母であるこの星にお祈りしている。」

澤宮岳斗 「じゃあ、津波ってもしかして?」

魚獣人 「ああ、それは母の心臓である星の核の鼓動だ。 しかし、それは250年前から段々と弱まってきている。」

カット:サメはそう言って、村の方を指差した。

魚獣人 「あいつらも元々は海の中で生きる民だった。 しかし、太陽が隠れる奇妙な現象が起きてからは陸に上がるようになってしまった。」

カット:サメの告白を聞いて、一行は驚いて、村の方を振り向いた。

アレキサンダーが振り返って、質問した。

アレキサンダー・フランドール 「陸に上がることが裏切りなのかい?」

魚獣人 「いや、それ自体は裏切りではない。 母でもあるこの星を死の危険に晒していることが裏切りなのだ。」

澤宮岳斗 「死だと?」

魚獣人 「ああ、この星は誕生したその時から全て海に覆われていた。 いわば、彼女は海によって、守られたとも言える。そう言う意味じゃ、海は俺たちの父だ。

しかし、あいつらは母と父を引き離して、死星と死海にしようとしている・・・。」

レオナルド・グランターン 「なるほど。 とすると、この星が海ではなく空気に触れてしまうと乾燥して、命が弱まるということで合っているか?」

魚獣人 「おお、お前はなかなか頭が回るな。 正解だ。

俺たちは星の家族を守るために地面を崩して、海が入ってくる様にしたり、津波を防ぐバリゲートを壊したり、陸に上がった奴らを海に引き摺り込んで、海の民であることを思い出させたりして、この星の死に対抗しているのだ。」

アレキサンダー・フランドール 「なるほど、大体事情はわかったわ。 でもあの人たちを無理やり海に引き摺り込んで、窒息死させるのはいい考えではないよ。」

魚獣人 「ぬ・・・? 窒息などしていないのだが。」

澤宮岳斗 「なんだって?」

魚獣人 「ああ、引き摺り込まれるうちに呼吸ができることを不思議がって、自分が海の民であることを体が思い出す様だ。 そこから、今の説明をして、他の村に行ってもらって、同じように引き摺り込ませていると言うわけだ。 信用できんなら俺たちの住処である海中遺跡に行ってもらおうか。 そこに陸で生きた奴らという証拠がある。」

凪空加那江 「なんですって!?」

カット:加那江は驚きの一言を言い放った後、みんなを集めて、囁き声で言った。

凪空加那江 「みんな・・・。 これは明らかに罠よ。 いくらなんでも信用できないわ。

海は奴らのホームみたいなものよ。 海か海中遺跡で私たちを皆殺しにするでしょうね。」

レオナルド・グランターン 「うーん。 そう言われるとおかしくはないな。」

ダニエル・ロワノフ 「わしは大丈夫だと思うがな。 120年間の経験から考えると、奴らは嘘をついていないだろう。

それにいざという時はアレキサンダーが泡で閉じ込めればいい。」

アレキサンダー・フランドール 「あたいの泡は深海では無理だよ。 あたいが泡を作るときに海の圧力に対抗して泡の形にしなきゃならないからね。

あまり深いとものすごい力になってしまう。」

ダニエル・ロワノフ 「そうなのか。 ムウ・・・。」

澤宮岳斗 「シャルルがワープすればいいんじゃないか? ワープ魔法持ってたろ?

俺と加那江とお前3人を月から地球まで送ったよな。」

シャルル •ヴァンタール 「おお! そう言われてみれば。 それに酸素補給魔法もあるぜ!」

澤宮岳斗 「つうわけで加那江、心配しなくていいぜ。 行こう!」

カット:加那江は尚も疑っているような顔をして反論を考えたが、諦めたように吐き捨てた。

凪空加那江 「・・・まあ、確かにいつでも逃げられるなら。」

澤宮岳斗 「な! それに獣愛好家の俺としても奴らは根っこはいい奴らと言うセンサーが出てるぜ!!

ふふふ、体がモチモチともふもふの獣に悪いやつはいないとはよく言ったものだな。」

ジェシカ・スカイウォーカー 「誰が言ったんだ?」

澤宮岳斗 「そりゃ、俺だな。」

シャルル •ヴァンタール 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

カット:岳斗の迷セリフにシャルルが冷たい眼差しを向けている。

突然、村の方から悲鳴と怒号が聞こえてきた。

凪空加那江 「!? 今度は何? あなたたちの仲間の仕業!?」

カット:加那江はサメを睨みつけた。

魚獣人 「なんだと! 俺が知るわけないだろ。 俺たちは母なる星から陸に上がったかつての民を傷つけないで海の民に戻しなさいと念を押されたぜ。

それに見てみるがいい。 あいつらがもし魚の見た目じゃないなら俺たちの仲間じゃない。 海の民は海の民だけで攻めると言うプライドがあるのだ!」

ジェシカ・スカイウォーカー 「加那江! 今は犯人探ししている時ではない!

すぐに村人たちを救いに行くぞ!」

澤宮岳斗 「おうよ!」

アレキサンダー・フランドール 「一応、あたいはこいつらを閉じ込めるためにここに残るよ。 あたいが作った泡はあたい自身が遠くに離れると消滅してしまうんだよ。

みんな、頼んだよ。」

レオナルド・グランターン 「うむ!」

シーン:深夜、まだ星が明るく見える頃

アレキサンダーを除いた一行が村に戻るとそこにはいくつものの家から火の手が上がっている。

さらに逃げ惑う村人たちを殴って気絶させたり、無理やり抱えたりしている毛無しヒトどもが好き勝手暴れているところだった。

カット:それを見た瞬間、岳斗の目に鋭い光が宿ったかと思うと息を吸う間もなく、村人たちを攫おうとしている奴ら3人を容赦なく斬った。

流石に殺すとまではいかなかったが、血は飛び散って、奴らはブラックアウトした。

澤宮岳斗 「ヒャッハアアア!! おい、てめえら! 斬られたくなかったら逃げやがれああ!!」

カット:さっきと打って変わって、闘気に満ち溢れた岳斗が盗賊どもを次々と斬り捨てながら先に走っていく。

みんなは呆然として、後ろから見ている。

レオナルド・グランターン 「さっきとはえらい違いだな・・・。」

ダニエル・ロワノフ 「さすが、獣愛好家というだけあるわい。」

シャルル •ヴァンタール 「はあ〜。 あの野郎、チッ。

これじゃ、どっちが悪者かわからないぜ。」

ジェシカ・スカイウォーカー 「みんな、何をボーっとしてるのだ。 村人たちを救助して、安全なところに避難させるぞ! 二手に別れよう。

加那江と私はあっちにいく。 あとはそっちで頼む。 盗賊に関しては岳斗に任せるとしよう。」

レオナルド・グランターン 「わかった。 では終わったらアレキサンダーのところで集合だ。」

凪空加那江 「OK! でもサメたちが見つかると色々面倒だから太陽が上がる前にしましょう。」

レオナルド・グランターン 「ああ。」

カット:岳斗は猪のように突き進みながら盗賊どもを蹴散らしている。 

澤宮岳斗 「おおいいい!! てめえらの親分はどこのどいつだああ!!」

モブ 「ひいいいいい!!! 逃げろ!!」

澤宮岳斗 「おいこらあ!! 腰抜けども!! 止まらんと斬るぞ!」

モブ 「止まっても斬るじゃないか!?」

カット:その近くで加那江が震える村人たちを落ち着かせて、避難を伝えた。

凪空加那江 「あっちの村長の家には火の手が上がっていないわ。 そこまで護衛しましょう。」

モブ 「あ・・ありがとうごぜえますだ。」

ジェシカ・スカイウォーカー 「立てますか?」

モブ 「はい。 ですが、お母さんが足首を捻ってしまったようです。」

凪空加那江 「わかりました。 私におんぶしてください。」

モブ 「そんな・・・ 本当にお優しい方だ。」

カット:加那江とジェシカは親子を村長の家に避難しようと走ったが、しばらくしないうちに前から盗賊どもが6人現れた。

モブ 「おい! てめえら。 そいつらを渡せ!!」

モブ 「ひ・・!!」

カット:親子は恐怖を顔に浮かばせた。

凪空加那江 「貴方たち、そこを退きなさい。 さもないと体に風穴を開けるわよ!」

モブ 「あぁ!? 若い姉ちゃんが何ほざいてるんだ!! やっちまえ!!」

モブ 「ヒャッハア!! 終わったらお楽しみパーティ開いてやる!!」

ジェシカ・スカイウォーカー 「下衆ども。 正義の制裁に遜るが良いぞ!!」

カット:盗賊どもが一斉に飛び上がって、加那江たちめがけて剣を振り下ろす。

ジェシカが気合声を上げた。

ジェシカ・スカイウォーカー 「此奴どもにチンタラしていられん!! 円雷飛龍斬!」

カット:ジェシカが遠心力を蓄えた薙刀を勢いよく回して、盗賊どもを竜巻に巻き上げた。

奴らどもは何もいう事もなく、地面に激突した。 どうやら気絶したようだ。

モブ 「すごい・・・」

モブ

ジェシカ・スカイウォーカー

凪空加那江

カット:その頃、シャルル、ダニエル、レオナルドは盗賊どもが連行した村人たちをトラックに乗せている現場を発見した。

トラックの前にはロケットガンやガトリングガンなどの高威力銃を持った十数人の兵士が見張りに立っている。 さらに戦車も数台砲台を動かしながら、敵どもを探している。

シャルルたちは見晴らしのいい家の2階のベランダの影に隠れながら村人救出作戦を練っている。

ダニエル・ロワノフ 「こりゃ、難しいのう。 戦車とか盗賊も倒すだけなら単純でいいんじゃが、村人たちも救うとなるとな・・・。」

レオナルド・グランターン 「村人たちに危害が加わるのは避けなければ。 下手に動けば、村人たちも俺たちもあの銃にやられる。」

シャルル •ヴァンタール 「なあ、さっきのクナイを投げればいいんじゃないか。」

ダニエル・ロワノフ 「あれな、今ので在庫切れじゃ。 なにしろ、作るのが難しい上に金もかかるからのう。」

シャルル •ヴァンタール 「ええ〜。 しょうがない。

気を酷く使う上に魔力をかなり消費するからあまり使いたくなかったんだがな・・・。」

レオナルド・グランターン 「霧を発生させる魔法か。 そんなに消費するのか?」

シャルル •ヴァンタール 「ああ、一見簡単だと思われているが、実際は難しい。 霧を崩さないように空気の流れを操る時空魔法を発動する。

次に空気を氷の粒にするのだが、氷が大きくなって落ちないように注意深く小さく留めなければいけない。 それを十数人と戦車を包み込むサイズで発動するとなると・・・。 考えるだけでも大変だ。」

ダニエル・ロワノフ 「では、別の方法を考えるのか?」

シャルル •ヴァンタール 「・・・いや、やるよ。 この条件をクリアするには他には手がない。

ダニエル、悪いが、あんたは囮になってくれないか? 」

ダニエル・ロワノフ 「もちろんじゃ。 わしにかかればこんなの軽いわい!!」

レオナルド・グランターン 「そうか、頼もしいな。 で、俺はシャルルと一緒に救出するのか?」

シャルル •ヴァンタール 「いや、俺は村人たちが敵に見えないように霧の調整と生命感知魔法をずっとしなければならん。

だから、俺はここで待機だ。 レオナルド、救出したら戦いに巻き込まないように後ろから遠回りして、村長の家に誘導してくれ。」

レオナルド・グランターン 「わかった、任せろ!」

ダニエル・ロワノフ 「ようし、腕がなるわい!!」

カット:意気満々で出撃しようとした2人をシャルルが思い出したように呼び止める。

シャルル •ヴァンタール 「おっと、俺らだけに見える生命感知魔法を忘れていた。

命の炎よ、我らの標となりて、目に映り出せ! 俺らは緑に、我らの脅威となりうる敵どもは赤く、我らの助けを待つ者どもを青く輝かせよ!」

カット:シャルルが唱えると3人の目にだけ人質と敵を表す光が現れた。 それぞれ青く、赤く輝いた。

そして、3人の胸は緑色に輝いた。

シャルル •ヴァンタール 「OK! じゃあ、いくぞ!」

ダニエル・ロワノフ 「おう!」

レオナルド・グランターン 「ああ!」

カット:2人が階段を降りて、ドアに手をかけたところでシャルルが本命の魔法を発動させた。

シャルル •ヴァンタール 「よし、星の上に立ち、人知れず彷徨う妖精よ、白き羽衣を羽織い、人どもを惑わせよ!」

カット:シャルルが唱え終わると同時にあたり一面に霧が現れ、兵士どもの慌て声があちこちから聞こえてくる。

モブ 「うわあ!? なんだ、この霧は!!」

モブ 「見えんぞ!! 全員各自迎え撃て!!」

カット:霧が微妙に薄くなったところに複数の人影が映ったので、兵士どもは待っていたとばかりに一斉に銃を連発した。

そのうちに人影は跡形もなくなって、兵士たちは歓声を上げた。 しかし、左から何かが着地した音とダニエルの声が聞こえた。

ダニエル・ロワノフ 「甘いぞ。 それはわしが錬金術ハンマーで作った土人形じゃ。」

モブ 「なっ!? 撃てええええ!!!」

カット:奴らは慌てて、一斉に撃った。 鉄が当たった音がした後、奴らが撃った方向からいくつものの爆発が起きた。

撃った弾が戦車のエンジンに当たって、引火した。 そして、戦車が爆破したようだ。

モブ 「うおおおおお!! 何をする!? 戦車撃ってどうするのだ!?」

モブ 「なんだと!! 戦車!? どういう事なんだ!?」

カット:兵士の混乱ぶりを楽しんでいるダニエルが呟いた。

ダニエル・ロワノフ 「へへへ・・・。 あれはコネクトヴォイスじゃよ。(録音・再生型ボール 再生開始ボタンを押してから5秒後に録音した音がながれる仕組み 囮に使う)

さて、レオナルドはうまく行ったようじゃな。 わしはシャルルのところに戻るとするかのう。」

カット:ダニエルの目にレオナルドを表す緑の光と複数の青い光が近くで輝いていたのを確認して、ダニエルはシャルルのいる家に戻った。

レオナルドはトラックに押し込まれた村人たちを脱出させて、兵士たちから遠ざかるように一斉に走ったその時、向こうから爆発音を聞きつけた兵士たちが駆けつけてきた。 レオナルドと村人たちを肉眼で捕捉し、一斉にロケットガンを発射しようとした。

モブ 「発射ーっ!! 用意! GO!!」

レオナルド・グランターン 「はっ!! まずい! 今から矢を支えても間に合わん・・・!!」

カット:そう言いながらも矢を取り出して、セットしながら、村人たちに回避命令を叫んだレオナルドに幸運が舞い込んだ。

突然、兵士たちに土の波が衝突し、吹き飛ばされた。

澤宮岳斗 「ぬおおおお!! 疾潜土竜剣!」

モブ 「ぐわあああっ!!」

カット:兵士が気絶して、岳斗は得意げな顔でレオナルドに歩き寄った。

澤宮岳斗 「どうだ! おっ、村人たちがいっぱいいるぞ。」

レオナルド・グランターン 「こいつらはトラックに閉じ込められてな、俺が今助けたところだ。

シャルルとダニエルはあそこだ。」

カット:レオナルドはそう言って、霧のある方向を指差した。 レオナルドによるとダニエルとシャルルはすでに家から脱出して、遠ざかっているようだ。

レオナルド・グランターン 「多分、あいつらは取り残されている村人たちがいないか見て回るつもりなんだろう。

村長の家に送り届けよう。 護衛頼む。」

澤宮岳斗 「おうよ。」

カット:岳斗とレオナルドが再開した少し後 加那江とジェシカは盗賊どもの襲撃を退けながら合計10人ほどの村人たちを引き連れ、村長の家に到着した。

凪空加那江 「さあ、着いたわ。 村長! ドアを開けてちょうだい。」

村長 「今開けますぞ!」

カット:慌ただしいジャンプ音が響き渡った後、木のドアが開けられた。

村長 「おお! どうぞお入りください!」

モブ 「村長さん、ありがとうごぜえますだ!」

カット:中に入るとすでに数十人が中世ヨーロッパ風のアンティークな雰囲気を感じさせる村長の書斎にぎゅうぎゅうに固まっている。 加那江たちと共にきた村人たちもその部屋に入ることにした。

ジェシカ・スカイウォーカー 「村長さん、これで全部ですか?」

村長 「いいえ、後25人います。」

凪空加那江 「わかったわ。 探しに行ってくるので、ここで待ってください。」

カット:2人が村長の家から出るためにドアに手をかけたところで向こうからドアが引かれた。

シャルルとダニエルが7人の村人たちを引き連れて入ってきた。 書斎には入らないので、この7人は廊下に置いといた。

シャルル •ヴァンタール 「加那江! これで全員か?」

凪空加那江 「んー、いいえ、後18人ね。」

ダニエル・ロワノフ 「そうか、今、レオナルドがトラックに押し込まれた大量の村人たちを引き連れて、ここに向かっている。

シャルル、生命探知魔法を使えるか?」

カット:ダニエルに問いかけられたシャルルは疲れ切った顔をしながら答えた。

シャルル •ヴァンタール 「あー・・・ 無理だな。 さっきので魔力を使い果たしたぜ。

寝たいな・・・。 ジェシカ、胸を貸してくれ。」

ジェシカ・スカイウォーカー 「わかりました。 さあ、おいで。」

カット:シャルルはジェシカに飛びついて、ジェシカはシャルルを抱きしめた。

可愛い魔術師様はお馬のお姉さんの胸で寝息を立て始めた。

凪空加那江 「ダニエル、レオが連れ立った村人たちの数って分かってる?」

ダニエル・ロワノフ 「あー、戦いに夢中で細かいことは忘れてしもうたんじゃが、少なくとも10人は超えてるような・・・。」

ジェシカ・スカイウォーカー 「そうですか。 では、レオが戻ってくるまで待ちましょうか。」

凪空加那江 「しかし、あの馬・・・岳斗はどこ行ったのかしら? どっかで猛獣に食われ死んで無いといいんだけど。」

ダニエル・ロワノフ 「今頃、全滅させたりしてな。 ワハハハハハ!!」

カット:噂をされた岳斗は盛大なくしゃみを2回した。 鼻水を啜りながら言った。

澤宮岳斗 「へーっくし! ヘァーッシィ! くそ、誰かが噂してるな。」

レオナルド・グランターン 「あはは。 きっと、加那江たちさ。 急ごう。」

カット:岳斗とレオナルドが村長の家に向かっている。 広場に着いた時、一台のトラックが岳斗たちの前で急ブレーキしてドアが乱暴に開かれた。

運転席から赤いバンタナを頭に巻いたドレットヘアの金色長髪の男が右手に銃を持って、出てきた。 それはさしずめ『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウだ。

澤宮岳斗 「なっ!? こいつは・・・?」

親分 「おい。 てめえら、人のもんを盗りやがって・・・

盗賊の掟に乗っ取り、死刑にしてやろう。 おい! てめえら、出番だ!」

カット:親分はそう言って、トラックの壁を叩いた。 瞬間、運送会社仕様のように横の壁が開いて、屈強なマッチョどもが特大ガトリングガンをブチ放った。

岳斗は驚く暇もなく剣を取り出した。

モブ 「もやし野郎、消し炭になりやがれ!!」

澤宮岳斗 「させるかよ!! 龍壁陣!!」

カット:岳斗が目にも止まらぬ神業で地面を裂くように横に斬ってから、剣を思い切り地面に刺すと剣の圧力で地面が競り上がって、厚い壁になった。

マッチョどもの連射弾は岳斗の壁に阻まれた。

澤宮岳斗 「ここは任せろ! レオナルド!」

レオナルド・グランターン 「分かった! さあ、いくぞ!」

モブ 「はい!」

カット:レオナルドと村人たちはきた道を引き返して、遠回りすることにした。

マッチョどもはテストステロンをドバドバ脳に出しながらガドリングガンを撃ちまくった。 そのおかげで岳斗が作った壁が残らず木っ端微塵になった。

モブ 「YES!! マッスルビバ!!」

カット:マッチョどもがキラキラオーラを出しながらボーシングのボースを決めた瞬間、土が押し上がって奴らごとトラックが吹き飛んだ。

親分はびっくりして思わず振り返りながら口を大きく開けた。

澤宮岳斗 「はああっ!!! 土竜咬上剣!!」

カット:壁に隠れている隙に岳斗が剣を高速回転で斜めに突き回して、地面を掘った。 その後にトラックがある上に向かって、また高速回転でジャンプ突きして、敵どもを上空に打ち上げたのだ! ふと見上げるとトラックの助手席のドアが開いて、そこから魚のヒレが腕や背中に付いている茶ウサギ獣人の金髪レディーが落ちてきた。

澤宮岳斗 「んげ!? やべっ。」

カット:岳斗は慌てて、走り寄り、そのレディーを両腕で受け止めた。 レディーは数秒間、意識を失っていたが、目を覚まし、肩まで届くであろう長い耳をピンっと立てながら周りを見まわした。 そこから岳斗を見て、顔を赤らめた。

テン・ユンファラン 「あ・・・。 あなたが?」

澤宮岳斗 「ああ、そうだ。」

テン・ユンファラン 「ありがとう・・・。 私は盗賊たちに攫われてしまって、怖いボスみたいな人にトラックに押し込まれて連れ去られそうになりました。

あ、私はテン・ユンファランです。」

澤宮岳斗 「ふうん。 そうか、とりあえずあんたは村長の家に行っとけ。 俺は戦うぜ。」

カット:テンを下ろした岳斗はやっと冷静さを取り戻した親分と向き合った。

テンが逃げようとしたが、直後に後ろで悲鳴があがった。 岳斗が振り返るとそこには炎に燃やされながらも笑顔を絶やさずにボーシングしているマッチョどもがいた。

これでは通れない・・・。

モブ 「YES!! I'm最強!!! Uhhhhhーーーーー!!!」

澤宮岳斗 「くそ。 あいつら、どこまで脳筋なのか!?」

カット:テンが岳斗の元に戻ってきたところで岳斗がテンの耳元に囁いた。

澤宮岳斗 「俺があいつらを攻撃するから、隙を見つけたら合図する。 そうしたら、脇目も触れずに逃げるんだ。

それまでは俺の後ろにくっついて離れるな。」

テン・ユンファラン 「わかりました。 でも、私も手伝えます。

私は海の神様であるポマリゼァンを信仰していますので、母なる海の力を借りた攻撃魔法と回復魔法が使えるのです。 あなたが傷付いたら回復致します。」

澤宮岳斗 「へえ・・・。 そりゃ、心強い。 頼んだぜ。」

テン・ユンファラン 「はい・・・。」

親分 「おおい!! てめえら、何恋人みたいに話しているのだ! ぶちのめすぞ、てめえら!」

モブ 「Yes,sir!!! Let’s party of hell !!」

カット:マッチョどもと親分に挟まれる位置にいる岳斗とテンはお互いの背中を託すように立っていた。

マッチョどもは気が狂ったような叫び声を上げながら、岳斗たちに飛びかかった。

澤宮岳斗 「おい、てめえら。 地面につく前に串焼きにしてやらあ!!

虎牙舞剣!!」

カット:岳斗が剣を地面に高速突きした瞬間、押し込まれた地面が鋭い棘になって、空中のマッチョどもを貫通させる・・・はずが、マッチョどもの腹筋は土虎の牙をも容易く折った。 奴らはゴリラのように胸を叩いて、陽気に歌を歌い始めた。

モブ 「Uhhhhh—!!! Oh,yes,yes!! My dream—-」

澤宮岳斗 「うるせえやい、この陽気やろうどもが!!

しかし、困った。 奴らへの攻撃は筋肉でノーダメージにされてしまう。 鍛えようがない目、鼻が弱点なんだろうが、あんな小さい的を狙う余裕は俺にも無いな・・・。」

親分 「さあ、諦めろ。 相手が悪かったようだ、ふはははは!!」

カット:親分は両腕を広げ、高らかに笑った。 反対に岳斗は悔しそうに唇を噛んでいる。

ふと、テンが意地悪な頬笑みを浮かべながら、妙案を思いついた。

テン・ユンファラン 「あ! よし、こうしよう。

命を廻る赤き兵隊よ、最果ての滝へと急行せよ!!」

カット:テンが杖を取り出しながら、呪文を唱えるとマッチョどもと親分が何やらモゾモゾし始めたでは無いか!!

そして、大騒ぎしながら、千鳥足で近くの家に駆け込んだ。

モブ 「Oh,no!!?!? なんのマッスルマッスル!!! ・・・OH MY GODDDD!!! トイレットGOGO!!!」

親分 「ぬがががああああ!!! これはまずいっ! 親分としての威厳が・・・。 女神の休息地に行かねば!!」

カット:岳斗は不思議がって、テンに尋ねた。 テンは丸い尻尾をぴょこぴょこ振りながら意地悪そうに答えた。

澤宮岳斗 「一体、何をしたんだ?」

テン・ユンファラン 「ふふふ・・・。 魔法で血の水分をちょーっと膀胱に移しただけよ。 外がダメなら中ってこと。

さあ、行きましょう。」

澤宮岳斗 「そうだな。」

カット:2人が村長の家に行こうと足を踏み出した瞬間、岳斗は後ろから殺気を感じた。

岳斗は本能のままに一筋の汗を流して、振り返りながら剣を取り出した。 剣と剣がぶつかり合う声がした。

ケンシロー・ササキ 「この一撃を受け止めるとは・・・

大したやつだ。」

澤宮岳斗 「お前・・・ さっきの盗賊どもの仲間か?」

カット:剣を離して、ステップバックするとその剣士は静かに笑い、答えた。

岳斗が改めて見据えるとホヴォビ(毛無しの薄橙色の肌をもつ人型生物の呼称 地球人の我々の姿をしている)、丸いサングラス、紫色の上下スーツ、鳩尾の位置まで届くように束ねた黒の後ろ髪、虫の触角のような形をした2本の細長い前髪が見えた。 そして、最も目を見張るのは彼の長い足よりもさらに長い刀だ。 それは長すぎて物干しのようにも見えてくる。

ケンシロー・ササキ 「フ・・・。 あのような品のない連中どもと一緒にしないでくれ。 」

カット:謎の剣士を見たテンがひどく驚いた顔を浮かべた。 そして、目を大きく開きながら言った。

テン・ユンファラン 「あ、貴方は!? そんな、まさか・・・」

澤宮岳斗 「テン、どうした? 知り合いか?」

テン・ユンファラン 「あの人、私の恋人です。 ケンシロー・ササキなのです。

10年前に行方しれずになったのですが、まさか、また会えるとは・・・。」

澤宮岳斗 「なんだって・・・? おい、てめえ、10年もほったらかしにして、どこ行ってたんだ!?」

カット:岳斗の質問にケンシローは真顔で言い放った。

ケンシロー・ササキ 「私はお前のことなど知らん・・・。 私は偉大なる魔導士様に忠誠を誓った剣士だ。

恋というくだらん幻想は私の剣を鈍らせるのみ・・・。」

テン・ユンファラン 「え・・・?」

カット:ケンシローが言い放った言葉にテンが我知らずショックを受けているその時、岳斗が静かにブチ切れた。

ケンシローを凄まじい気迫で睨みながらゆっくり言った。

澤宮岳斗 「てめえを想い慕っていた恋人すら忘れるとは・・・。 もういい、貴様は一回俺に倒されろ!」

カット:岳斗はそう言って、足を力強く蹴った。 怒りのパワーでケンシローに瞬時に近づき、剣を振り下ろした。

しかし、そこはさすがケンシロー。 彼も岳斗の攻撃に対応し、受け止めている。

ケンシロー・ササキ 「ふ、お前はなかなかいい腕だ。 しかし、相手が悪かったようだ。」

カット:ケンシローは咄嗟に腕の力を抜いて岳斗の剣を受け流した。 そして、口角を上げながら3歩ステップバックした。

バランスを崩しかけた岳斗も3歩後ろに下がって、体勢を立て直した。

澤宮岳斗 (この奇妙までに長い剣・・・リーチはやつの方が長い。 インファイト作戦だな。)

ケンシロー・ササキ 「私は貴様の最期の相手ということになるだろう・・・」

カット:岳斗の目がカッと見開かれた。

澤宮岳斗 「最期か・・・。 あんたの最期にしてやろう!  爆飛風刃散!」

カット:岳斗が剣を地面に勢いよく刺して、地面の土岩を浮かした。 それらを剣の腹でケンシローに向かって、流星群のように打ち出した。

ケンシローは余裕の表情を崩さすに抜く手も見せない速さで岩を斬り落とした。

ケンシロー・ササキ 「こんなチンケな技が効くと思われては心外だな・・・」

澤宮岳斗 「ああ、そうだよ。 まだ終わってねえぜ!! 疾葬昇虎剣!」

カット:岳斗は岩の流星群にケンシローの注意を向かせて、下でスライディングした。 そこから剣を地面に突き刺して、ジャンプのエネルギー源にした。 そして、虎の如くケンシローの喉笛を掻っ切るジャンプ斬撃をお見舞いしようとした。

しかし、ケンシローは驚く気配も見せず、岳斗にカウンターの一撃を喰らわそうとした。

ケンシロー・ササキ 「これくらい見破れるものだ。 燕返し!」

カット:しかし、突然、ケンシローの眼前に土の壁が競り上がった。

ケンシロー・ササキ 「なっ!?」

カット:岳斗は奴の一瞬の隙を逃さずにケンシローの横に回り込んで、奴の右腕を斬り落とすべく剣を突いた。

澤宮岳斗 「ここだっ!! 飛星裂突っ!」

ケンシロー・ササキ 「ぬっ!!」

カット:ケンシローも抜群の反射神経で岳斗の高速突きを受け止めたが、何発かケンシローの右腕を傷つけ、血が飛び散った。

その傷は中の筋肉に達しており、奴は垂れ下がって動かなくなった右腕を左手で握りながら荒い息を繰り返した。 岳斗が剣を肩に担ぎながら言った。

澤宮岳斗 「あんたの負けだ。 ケンシロー

貴様の右腕がアレでは戦いようがないだろう。」

ケンシロー・ササキ 「はあ、はあ、まさかここまでやるとはな・・・」

澤宮岳斗 「お前の剣型は差し詰めカウンタータイプだ。 その長い剣では自分が攻める時に隙が常人よりも大きくなるだろう。 特に振り終わった後はな。

なので、相手の隙を待ち、そこを突くというわけだ。 ふん、佐々木小次郎っぱりの戦いかただな。」

ケンシロー・ササキ 「ササキコジロー? む・・・似たような名前なら聞いたことがある。

コタロー・ササキ、俺のご先祖様だ。 まだニノボン星が鎖星していた400年前ほど、トモゾウ・ミヤバシとの決戦で最期を遂げた伝説の剣士だ。

そうか、貴様の星でも似たような剣士がいたのか・・・」

澤宮岳斗 「ニノボン星か・・・。 こんなところで奇妙な縁を感じるとは思わなかった。 あんたとはもっと強くなって戦いたい。

ここはお互い撤退にしよう。」

ケンシロー・ササキ 「いいや、まだ負けてはいない・・・」

カット:ケンシローは不気味な微笑みを浮かべて、スーツの右の内側ポケットに左手を入れた。 岳斗は警戒して、身構える。

澤宮岳斗 「!! 何か仕掛ける気だ。テン、気をつけろ!」

テン・ユンファラン 「はい・・・。」

カット:ケンシローが取り出したのは赤い液体が入っている注射器だ。

彼は何も言わず、それを自分の心臓に刺した。

澤宮岳斗 「!? 何を・・?」

ケンシロー・ササキ 「・・・ぬおおおおおおっ!!! 力があああっ、湧いて、く・・・ルゥぅぅぅウウぅゥゥゥぅうううぅぅぅぅ!!!!!!」

カット:数秒間痙攣したあと、奴は星にもヒビが入るほどの大声量で叫んだ。 やつの血管が急激に拡張して、全身のタトゥーを描くように血管の網が皮膚の表面に現れ始めた。 それは驚くことに赤く見えた!! さらにケンシローの目も充血し、瞳の周りの白い部分である結膜が真っ赤になるばかりでなく破裂した血管から漏れ出た血液が目から勢いよく流れ出た。右腕の傷口からも血が滝のように溢れ出ている。

地獄からやってきた悪魔としか言いようがない姿をしたケンシローが岳斗を見据えて立っていた・・・

澤宮岳斗 「嘘だろ・・・!?」

テン・ユンファラン 「これは・・・!? こんなに急激に血圧を上げたら心臓が破裂して死んでしまう!!」

カット:岳斗がびっくりしていると突然、音も立てずケンシローがスーッと薄くなって消えた。

澤宮岳斗 「・・・!? どんな攻撃を仕掛ける??」

カット:岳斗は五覚を全集中して、いかなる情報も認識し漏らさないように構えた。

いつの間にか剣を納め、岳斗の後ろに立っていたケンシローが聞こえるか聞こえないかの声量で呟いた。

ケンシロー・ササキ 「・・・貴様はもう斬られている。」

カット:驚いた岳斗がケンシローのいる後ろを急いで振り向いた。

と、岳斗の瞳孔が小さくなると岳斗の全身から血が勢いよく噴き出て、何も言わずに前に倒れた。

テン・ユンファラン 「・・・岳斗!? 岳斗ぉぉぉぉぉぉぉっーーーーーッ!!!!!!!」

カット:テンが腹の底から叫んで、岳斗の近くに座り込んだ。 無我夢中で応急処置を始めようとした。

ケンシロー・ササキ 「無駄だ・・・。 奴はもうすでに死んでいる。」

カット:両頬に血の涙がへばりついたケンシローは冷酷に言ったが、すぐ後に奴は顔色を変えた。

岳斗の指がかすかに動き、呻いたからだ。

ケンシロー・ササキ 「ふ・・・。 まさか俺のフィニッシュカウンターを受けて生きているやつがいたとはな・・・。

無意識に急所を避けたという所か。 おい、女。 そこをどけ、とどめをさす。」

カット:テンはケンシローをキッと睨んで、言った。

彼女の目には大粒の涙が溜まっている。

テン・ユンファラン 「どうして、どうして、こんなひどいことができるの!?

あなたはどうしてこんなに変わってしまったの!! 10年前のあなたはこんなやつじゃない!!」

カット:ケンシローは何も言わず、剣を抜こうとする。

テン・ユンファラン 「私、退きません! 死ねというのなら私も死にます! と言いたいところですが、私は看護師です。

死にそうになっている人は救うのが私の仕事です。 どいてください!!」

ケンシロー・ササキ 「・・・どけ。 貴様ごと斬られたいのか。

いいだろう・・・。」

カット:ケンシローが右手を剣にかけ、今まさに抜く・・・その時!

ケンシローの目の前に炎の壁が現れた。 ケンシローが左を向くとそこには矢を打ち終わったレオナルドとダニエル、加那江、ジェシカ、シャルルが駆けつけていた。

レオナルド・グランターン 「岳斗がお世話になっていたようだな・・・。

さあ、そこを去ってもらおうか。 さもなくば、俺の業火に焼かれよ!」

ケンシロー・ササキ 「いいところを邪魔されたな・・・」

カット:血まみれになった岳斗をジェシカが担いだ。 レオナルド、ダニエル、加那江、シャルルはそれぞれ火矢、爆弾、銃、魔法を構えている。

ケンシローは剣を抜こうとしたが、突然目眩に襲われ、片手を頭に当てた。 どうやら、薬の後遺症のようだ。

凪空加那江 「こっちはジェシカを除くと4人よ。 あなたは1人。

それでもやるのかしら?」

シャルル •ヴァンタール 「それにお前、体が限界だろう。 いくらお前でも切り抜けられまい。」

ケンシロー・ササキ 「はあ、はあ、はあ・・・・・」

ダニエル・ロワノフ 「年貢の納め時かのう。」

ケンシロー・ササキ 「ふふふふふ・・・」

レオナルド・グランターン 「何がおかしい?」

カット:肩で息をしているケンシローが微笑みを浮かべたその時、ケンシローの後ろからパワフルなエンジン音が轟き、トラックから体をのぞかせているマッチョがケンシローを指一本でひょいと持ち上げ、そのまま走り去った。 運転している親分が捨て台詞を吐く。

親分 「フハハハァァーーーッ! 逃げるが三十六計だっ!!!」

カット:一行はあまりにも急な逃走劇に呆然したが、岳斗のことを思い出して、慌ただしくなった。

ジェシカ・スカイウォーカー 「加那江、私は岳斗を病院に運びますので、アレキサンダーの所に走って、連れて来てください!

サメたちは解放していいです。」

凪空加那江 「わかったわ。」

カット:加那江は全力速で砂浜に走って行った。

ダニエルが木造家の壁を拝借して、錬金ハンマーで急造のストレッチャーを作った。 ジェシカとレオナルドは岳斗をそこに乗せ、一行は看護師であるテンの案内で急いで運んだ。 道中でシャルルは残り少ない魔力を使い切るように岳斗に回復魔法を連発した。

シャルル •ヴァンタール 「神となる宇宙よ。 灯火が消えかける星の子に生の慈悲を与えよ!

岳斗ーーっ!! 生きろっ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

運命変転 哀しみの鎖に囚われし世界 蛸の八っちゃん @takonoyattyann

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画