第37話 夢のおっぱい★

「あ、ああ、あああ…!」


紐の解けたビキニのブラを引っ張られながら、香織が声を漏らした。

普段は勝気なギャルの彼女も、乙女のピンチには素の性格が出てしまっている。

それくらい、女子にとっては見られたくないのが、おっぱいなのだ。


普段の蓮司なら、そんな香織の様子を見て手が緩んでいただろう。

だが、今は違った。

美咲を守るために、誰であっても容赦しないと決めたのだ。

蓮司は心を鬼にして、ブラを引っかけた傘を思い切り引っ張った。


「い、いやああああああああん!!」


香織の悲鳴とともに、蓮司は引く手に抵抗がなくなったのを感じる。

彼女のブラジャーが、宙に舞った証だった。

蓮司はそれを確認した後、ゆっくりと香織の姿を見ようとする。

刹那、一瞬強烈な光を感じて目を細めた。

まるで太陽を直視したときのように、目を開けていられないほど眩しかった。

だが、蓮司はその光の中に確かに目撃をした――おっぱいを。


布地越しでもシルエットでもなく、二プレスにより大切な部分を隠されたものでもない、まごうことなきおっぱい。

本当に存在したのだ。

女の子の体にしかない、神秘の膨らみ。

蓮司は顎が外れるほど口を開け、食い入るようにその双丘を見つめる。


その乳房は、程よい大きさで、絶妙な曲線を描いて鎮座していた。

本来、あれほどの質量があれば重力に引かれて垂れ下がっているだろう。

しかし香織のおっぱいはそんなことはなく、凛として正面を向き、美しいまでに物理法則に抗っている。

これが、若さゆえの張りというやつだ。

小さくて幼い膨らみでもなく、成熟して垂れ下がった果実でもなく、女子高生という、女性の黄金時代にのみにしか見ることのできないおっぱい。

それを目の当たりにした蓮司は、湧き出る劣情に体が硬直するのを感じた。


「ああん!いや!」


香織が叫びながら腕を交差していく。

両手でおっぱいを隠す気だ。

その前に、蓮司の視線はめざとく、おっぱいの中心にある乳首を捉える。


そこにある突起は、蓮司の知っている乳首とは全く異なっていた。

まずは大きさだ。

せいぜい豆粒くらいしかない男のそれと違って、香織の乳首はもっとしっかりと隆起し、しっかりと存在を主張している。

次に色だ。野郎どものこげ茶色の乳首しか見たことのなかった蓮司は、その淡いベージュの乳首に驚愕していた。

白い肌に溶けていってしまいそうなほど、儚く色づく乳輪と乳首は、美しいとしか言いようがない。

あとは――もう、わからない。わからないが、とにかく全然違うのだ。

女の子の乳首は、とてつもなくエッチだった。


「うああ…見られちゃった…。」


両手で胸を庇い、俯きながら香織がこぼした。

そうだ、蓮司は見たのだ。彼女のおっぱいを。

あまりの事実に、全身から力が抜けていくのを感じる。

ついに男の夢を叶えたのだ。

なんと言うか、感慨もひとしおである。


『報告。七原秋也、藤崎香織ペアが水着を剝ぎ取られ、敗退。』


九条の報告が流れ、蓮司はようやく勝ったことを実感した。

呆然と立ち尽くしていると、香織が恥ずかしそうな顔で蓮司に言う。


「ねえ…。ブラ、返して…。」


そこでようやく、足元に香織のブラジャーが転がったままだということに気がついた。

今の彼女は、完全に手ブラ状態だ。

パートナーの男も戻ってきて、舐めるように彼女の肢体を眺めている。


「貸して。私がやるわ。」


美咲が足を庇いながら、蓮司たちのほうへやってきた。

ブラジャーを拾って手渡すと、香織に覆いかぶさるようにして体を隠し、紐を結んで装着する。


「本当に、嫌なゲームね。」


退場するふたりを見送りながら、美咲がポツリとつぶやいた。

神経質そうに被った帽子を触る様子から、相当に嫌悪感があるのが見て取れる。


負けた女子生徒は漏れなくおっぱいを晒す、狂気のゲーム。

一組倒したところで、ようやくその全貌が見えてきた気がする。


「そうだね。だからこそ、負けるわけにはいかないんだ。」


蓮司はそう返事をしながら、美咲の後ろ姿を見つめた。

首元と背中にあるビキニの結び目は、香織とものと同じく簡単に解けてしまいそうである。

美咲が香織のように、男の前でおっぱいを晒すなんて、蓮司は絶対に耐えられないだろう。


「行こう、古川さん。どこか隠れられる場所を探そう。」


蓮司は美咲に声をかけると、まだ見ぬ夢の国の中を、ゆっくりと進んでいった。


*******************************************************


「ここなら、そんなに人も来ないかな。」


ふたりがたどり着いたのは、道から少し外れたところにある小屋のような場所だった。

地図によれば、ここはウエスタンエリアというところらしい。

2つ目の禁止エリアは反対側のトゥーンエリアだったので、今回はゆっくりと隠れていられるだろう。


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「ねえ、ここってもしかして…!」


美咲は何だか嬉しそうな顔をしながら、どんどんと奥へと進んでいく。

蓮司も首をかしげながらその後についていった。


くねくねと室内を進み、角を曲がったところで美咲の顔がぱっと輝いた。

遅れて蓮司も顔を出すと、そこにはアヒルのようなキャラクターの着ぐるみが、こちらに向かって手を振っていた。


「私、この子大好きなの!」


美咲は着ぐるみに近づくと、目をキラキラさせてその手を握る。

そんな様子を、蓮司は不思議そうに眺めていた。

こんな釣り目のアヒルのどこが良いのだろうか。

まあでも、喜ぶ美咲の姿も可愛いので何も言わない。


ひとしきりキャラクターと戯れた後、美咲も満足したのかその部屋を出ることにした。

あと少しで禁止エリアも発表されるのでちょうど良い時間でもある。

しかし、こんなよくわからないゲームのために貸切られているというのに、大したホスピタリティだと感心する蓮司であった。


目の前に建物の出口があり、ふたりはそこに向かって進んでいく。


「ああ、楽しかった。」


美咲はすっかり浮かれている。

ニコニコとこちらに笑いかけながら外に出ると――、急に悲鳴を上げた。


「きゃあっ!」


蓮司はぱっと身構えると、周囲を確認する。

見たところ人影もないし、美咲にも危害はない、と思ったら、彼女は何やら足元を見つめていた。


「なに、これ…?」


そこには、白いネバネバした物体が床に置かれていた。

ちょうどそれを踏んづけた美咲の足は、引っ張ってもとれないほどにくっついてしまっている。


「よし、かかったぞ!」


どこからか声がして、蓮司たちの前に二人組が現れた。


「あー、立花くん!! 今後こそ、リベンジするぞ!」


声を張り上げたのは水本彩芽だ。

小さな体にピンクのビキニを身にまとい、こちらを睨んでいるが、やはりその風貌から全然怖くは見えない。

幼い顔の下には膨らみのない胸があり、三角形のブラがぺたりと張りつくように肌を覆っていた。


まずい、これは罠だ。

蓮司たちが建物に入っていったのを見たのか、はたまたキャラクターに釣られて誰かが入るんじゃないかと踏んだのか、出口で待ち伏せしていたというわけだ。


しかし、この白い物体は一体…?

その疑問は、相手の男子生徒が持つ武器を見てわかった。

両手それぞれに棒を持ち、その先端は美咲の足元にあるのと同じ、白いネバネバがついている。

トリモチだ!


「立花くん、これ全然取れない…!」


美咲は完全に動けなくなってしまったようだ。

もともと足を怪我してはいたが、さらに状況が悪化してしまった。

おそらく奴の武器は、トリモチをビキニのブラにくっつけて、無理やり剥ぎ取るために使うのだろう。


「今度こそ絶対、勝ってやる!」


闘志を燃やす彩芽たちが、こちらに向かって駆けだした。

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