第24話 シルエットカード★
「俺はシルエットカードを使うぜ!」
テーブルの上に置かれた戦術カードを見て、葵の顔がみるみる赤く染まっていく。
それもそのはず、シルエットカードの効果は目隠し越しに"おっぱい"の影を見せること――すなわち、見えない位置とはいえ"おっぱい"を丸出しにしないといけないわけだ。
すぐに黒服たちが部屋に入ってきて、目の前に薄い暗幕のような布が設置される。
その後ろにはたくさんのライトも運び込まれ、布を明るく照らし出す。
確かにこの状態では向こう側は見えないが、ちょうどよくシルエットだけが映し出されるようになっている。
「さあ、小鳥遊さん。こちらへどうぞ。」
黒服に促され、葵は渋々暗幕の向こう側に立つ。
彼女の細い体の影が映し出され、恥ずかしそうに身を縮めているのが見てとれる。
「完全に脱衣が完了してから30秒間シルエットを見せていただきます。」
「ほ、ほんとうに脱がなきゃだめですか…?」
泣きそうな声で聞く葵に、黒服は黙って縦に振る。
観念した葵は、震える手でTシャツの裾を掴むと、両手を交差して上に持ち上げた。
「うお…。」
小田切が思わず声を漏らすのが聞こえる。
葵の上半身が布地越しにゆっくりと露わになり、Tシャツを脱ぎ去ると、胸の部分に残る下着が異様に目立って見える。
「こ、これもですか…?」
「はい。」
血も涙もない黒服の言葉に、葵は黙って背中に手を回した。
プッ、と僅かな音がして、ブラジャーの肩紐が力なく垂れ下がる。
葵がそのままゆっくりと腕を抜くと、支えを失った下着は床にポトリと落ちていった。
「ではカウントを始めます。横を向いてください。」
「は、はい。」
黒服がストップウォッチを押し、葵が体を横に向けた瞬間、蓮司は目の前の光景にあんぐりと口を開けた。
葵の可愛いらしい"おっぱい"が、美しいシルエットとなって映し出されている。
元より丸みのある女の子らしい体つきであるが、その"おっぱい"はさらに緩やかな曲線を描き、主張するかのように前に突き出していた。
曲線美、という言葉の意味を、蓮司は初めて理解する。
「ひい、はやく終わって…。」
たまらず葵が悲鳴をあげる。
目隠し越しとはいえ、自分の丸出しの"おっぱい"を凝視されるのは乙女として耐えられないのだろう。
時折無意識のように手が胸を隠そうとするのを、ぎゅっと拳を握って堪えている。
しかし、蓮司には葵のおっぱいの大きさを当てるという、大義名分があった。
悪いとは思いながらも、その魅惑の膨らみをじっくりと観察する。
特筆すべきはやはり先端に鎮座する、乳首だった。
乳首は男子にも、もちろん蓮司自身にもついているが、葵のそれは男のものとは全く異なっていた。
大きさは男子の数倍ほどあり、根本のあたりからぷくりと膨れて突き出している。
"おっぱい"自体の張りもあるのだろうが、その位置も上に向いており、それがまた何とも言えない官能的な美しさを演出していた。
一体この乳首は、どんな色をしているのだろうか。
「「これが、"おっぱいか"…。」」
思わずこぼした言葉が誰かと重なる。
小田切だ。奴も奴でしっかりと葵の"おっぱい"を堪能したようである。
横で美咲が、呆れたようにため息をついていた。
「以上で終了です。小鳥遊さんは服を着て、席へ戻ってください。」
ようやくカードの効果時間が終了し、葵は慌てて服を着ると、逃げるように席に戻った。
その姿は頭からつま先まで真っ赤に火照っているようである。
「さあ、立花・古川ペアは宣言をお願いします。」
黒服が淡々とゲームを進行する。
蓮司は今見た葵の"おっぱい"を思い出しながら、思考を巡らせた。
「小鳥遊葵の"おっぱい"の大きさは…。」
彼女の膨らみは、思ったよりもしっかりとしたものだった。
先に見た香織の下着姿と、同じか少し小さいくらいはあった気がする。
あれで確かCカップだった。
下着がなくて香織と同じくらい、とするとアンダーバストが小さいのだろうか?
「C75だ!」
先ほどよりは的を得ているであろう宣言に、蓮司は葵の顔を注意深く見つめた。
彼女は驚いたように目を丸くし、それから恥ずかしそう目を伏せる。
口を開くが、何やら一旦飲み込んで、また口を開いた。
「不正解。カップ数がもっと小さい。」
不安そうに答える葵を見て、蓮司は微妙な違和感を覚えた。
なんだろう。
チラリと横を見ると、美咲も小さく頷いており、違和感は確信へと変わる。
「では、おふたりとも不正解のため、次のターンに進みます。こちらの戦術カードから一枚ずつ引いてください。」
黒服が配るカードを、蓮司は無造作に手に取った。
何を引いたかも確認しない。
もはや戦術カードを使う必要もないのだ。
「では、3ターン目を始めます。戦術カードを使用する場合はカード名を宣言してください――。」
黒服が言い終わるかどうかのタイミングで、蓮司はすっと右手を挙げた。
何かを言おうとしていた小田切も口をつぐむ。
蓮司はそのまま人差し指を立て、ビシッと葵に向けて突き出した。
「小鳥遊葵の"おっぱい"の大きさは、B75だ!」
葵は目を白黒させながら、チラリと小田切の方を見る。
しかし、小田切も彼女の回答を待っているようだった。
葵は再びこちらに顔を向けると、顔を赤らめながら、申し訳なさそうに答える。
「せ、せいかいです…。」
そう言った葵は、すぐに恥ずかしそうに手で顔を覆うのだった。
「見事"おっぱい"の大きさを的中させましたので、勝者は立花・古川ペアです。おめでとうございます。」
黒服が全く祝福してなさそうに宣言するのを聞いて、蓮司はどさっと背もたれに寄りかかった。
正直なところ、一抹の不安はあったのだが、なんとか推理がうまくいったらしい。
決め手は、先ほどの葵の回答だった。
C75と宣言した蓮司に、彼女はカップが小さいと答えた。
これがおかしかったのだ。
『普通に考えたら、カップとアンダーバストを交互に答えるのがセオリーでしょ。片方ばかり大きいか小さいかを言ってたら、あっという間に絞り込まれちゃうわ。』
戦略を説明する美咲の言葉が頭に浮かんでくる。
"おっぱい"の大きさはカップとアンダーバストの2軸で構成されているのだから、美咲の理論は当然のように思えた。
ところが、葵は連続でカップの大小を答えた。
特に2回目の回答でCカップより小さいことを明かしたことで、少なくとも葵はAカップかBカップのどちらかであることがわかってしまった。
普通に考えればアンダーバストの大小を答えた方が、正解を絞り込むのが難しくなるはずなのだ。
1回目で得られたカップがAA以上という情報は、ほぼ絞り込みができていないに等しいからだ。
それなのに、葵はカップの大小を答えた。
それはすなわち――蓮司の宣言したアンダーバストの数字が、正解と同じだったからだ。
『不正解のときは、カップかアンダーバストが大きいか小さいかしか答えられない。つまり、同じという答えはできないの。相手がわざわざ不利になるような回答をした場合、それは答えなかった方の値が正解だってことよ。』
美咲の読みどおり、葵は苦し紛れにカップの大小を答えた訳である。
あとは直感だった。
最初にAAカップと言われた葵は、"もっと"大きいと答えた。
正解がAカップだったら、きっと"もっと"という表現は使わないだろう。
さらに、C75と言われたときに恥ずかしそうにしていたのも、おそらくアンダーバストが正解だったからだけでなく、カップもニアミスしているからだと思ったのだ。
結果、B75が正解であると睨んだ蓮司の推理は、見事にあたったわけである。
「あー、くそ! また負けかよ。」
小田切はつまらなそうに天を仰いだ。
奴がどこまで美咲の"おっぱい"を推理できていたのかはわからないが、とにかく勝ちは勝ちである。
しかし、小田切の性格上、連敗というのもきっと悔しくて仕方ないだろう。
この男は昔からそうだった。
葵はというと、もはやこちらと目も合わせられようで、顔を下に向けたまま羞恥に耐えている。
「では、次の試合まで教室に戻ってお待ちください。」
小田切たちに続いて、蓮司たちも廊下に出て教室へと向かう。
何はともあれ、一試合目を乗り切れてよかった。
そうぼんやり考えていたとき、ふいに制服の裾を誰かに引っ張られる。
ぱっと後ろを向くと、目の前に美咲の顔があった。
「ねえ。ちょっと作戦会議、しよ。」
美咲はそう言うと、蓮司の腕を引っ張って走り出した。
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