第11話 初めてのパンツ★
『報告。川田章吾・宮田百合ペアがパンツの色を当てられ敗退。パンツの色は黒と白の縞々。』
旧校舎の中に、またしても九条の声が響き渡った。
これで何人目だろうか。
予想より早いペースで敗退者が報告されている。
それほどスカートめくりが行われ、女子のパンツが晒されたということだ。
「よし。じゃあ行くよ、古川さん。」
「うん。」
蓮司と美咲は女子トイレの扉を開けると、恐る恐る廊下に出る。
幸い周囲には誰もいないようで、ふたりは胸をなでおろした。
「まずは有利な場所に移動しよう。どこかの教室がいい。」
蓮司はそう言うと、ゆっくりと廊下を進み始めた。
このあたりの廊下はひっそりと静まり返っていて、人の気配はない。
一体みんなどこに潜んでいるのだろうか。
美咲はというと、不安そうな顔で蓮司の後をついてきていた。
スカートを気にしているのか、いつもよりだいぶ内股で、歩幅も最小限にしている。
ふたりは廊下の突き当りまでたどり着くと、2階へと続く階段を登り始めた。
美咲は両手をお尻に持っていき、スカートと太ももの間に隙間ができないように注意している。
あんな短いスカートで下から覗かれたら、パンツのほとんどが丸見えになってしまうだろう。
美咲は顔を赤らめ、下のほうを確認しながら慎重に一段ずつ階段をあがる。
そんな姿に、蓮司は呑気にも少しドキッとしてしまった。
恥じらいこそが、女子の魅力をさらに増すのだと知る。
「ねえ、ちゃんと前見ててよ。」
少し怒ったような美咲の言葉に蓮司は慌てて顔をあげる。
何とか2階にたどり着いたふたりは、ようやく教室に入ることができた。
「ふう~、緊張した~!」
美咲は両手を広げて伸びをした。
それだけでもスカートが少し持ち上げられ、太ももが普段なら見えないところまで見えてしまう。
蓮司は目のやり場に困り、教室内を見回した。
室内には黒板とロッカーしかなく、どうやら一般的な教室であったと思われる。
かつては1年B組のようなクラスがここを使っていたのだろう。
ここなら簡単には見つからないし、出入口が2つあるので、万一誰か入ってきても反対側から逃げることができる。
「何とかここで終わりまで凌げればいいけど…。」
「そういえば、制限時間てどれくらいなのかしら。」
美咲の質問に、蓮司は首を傾げた。
確かに、ゲームの時間は説明を受けていない。
あの女の説明不足には本当に辟易する。
「わからない。けど、誰かに見つかるまではここに――。」
まさにそう言いかけたその時だった。
教室の後方、扉がガチャリと開き、一人の少女が入ってきた。
「えっ?」
「ふあっ! 立花くん!」
入ってきたのは水本 彩芽(みずもと あやめ)だった。
華奢で背が低く、幼い顔立ちとツインテールの髪はまるで中学生、いや小学生にも見える。
普段の天真爛漫な言動も相まって、彩芽はクラスのマスコット的な立ち位置であった。
最悪だ。せっかく隠れたのに、こんなに早く見つかるなんて。
蓮司の目は、彼女の細い足が伸びるスカートを捉える。
今なら無抵抗のままスカートをめくれるかも。いやでも、幼気な彩芽にそんなこと――。
しかし、蓮司たちが動き出すより前に、彩芽のすぐ後ろからパートナーの男子生徒が顔を出した。
こちらを確認すると、目を丸くして驚いている。
「ちっ、やるしかないか。」
蓮司はベルトの背中に差していたうちわを引き抜いた。
男子生徒も教室に入ると、慌てて臨戦態勢に入る。
相手は右腕を振りかぶると、こちらに向かって何かを投げつけた。
「くらえっ!」
投げられた物体は高速で地面に向かって飛んでいき、鋭い角度でバウンドする。
スーパーボールだ。
跳ね上がったボールは、美咲のスカートの内側に入ると、布地をふわりと持ち上げる。
美咲の美しい右足にふとももが、付け根のあたりまで露わになった。
「いやん。」
間一髪で美咲が抑えると、スカートがびりっと音をたて、スーパーボールがボトリと落ちる。
間髪入れずに相手はボールを投げ、美咲のスカートの裾を掠めていく。
蓮司が美咲を守るように前に立ちはだかると、投げられたスーパーボールが顎を直撃した。
「……っ! 古川さん、大丈夫?」
蓮司は悶絶しながら美咲に問いかける。
「うん! ボールの動きは読めるから、そう簡単には当たらないよ。」
「わかった。じゃあ、作戦どおりにいくよ!」
蓮司はそう言い放つと、勢いよく前に駆け出した。
作戦はシンプルだ。
美咲は守りに徹し、その間に蓮司が相手のスカートをめくりに行く。
ポイントはスピードだった。
うちわでは、どんな武器が相手でも分が悪い。
長期戦になればなるほど、武器の性能差で不利になる。
なので、相手がまだ対応できないうちに懐へ入り込み、素早くスカートをめくるのだ。
つまるところ、めくられる前にめくるしかない。美咲のパンツを守るには、それしかなかった。
「このっ!」
男子生徒は焦ってスーパーボールを投げ続ける。
美咲は注意深くボールの軌道を読み、間一髪のところで避ける。
その間に、蓮司は相手のペアの至近距離まで迫っていた。
「くっ、来るなあ!」
男子生徒が今度は蓮司に向かってボールを投げる。
しめた! 蓮司はボールの動きを読むと、うちわをテニスラケットのごとく振りぬき、相手に打ち返す。
「ぐはっ!」
打ち返されたボールは相手の眉間に直撃した。
あまりの痛みに、顔を覆って悶絶している。
その隙に、蓮司は彩芽のすぐ近くへ迫った。
「だめ! やめて!」
彩芽が子供みたいに叫び声をあげ、慌ててスカートの前面を抑える。
蓮司はその場でスライディングすると、彼女の下側から力一杯うちわでスカートを煽いだ。
「めくれろ! めくれろおお!」
「だめ、だめだってええ!」
煽いだ風で彩芽のスカートが舞い上がる。
ほとんど肉のない、白くて細い太ももが露になり、足の付け根のあたりまでが丸見えになった。
しかし、肝心のパンツは見えない。
うちわの風は弱く、スカートを抑える彩芽の手を貫通することはできないのだ。
「いてて…。やってくれたな!」
男子生徒が顔を上げ、美咲へと迫った。
その手には、複数のスーパーボールが握られていた。
一気に投げられれば、さすがの美咲も読み切れないだろう。
美咲は教室の角へと追いつめられていた。
男子生徒がボールを投げようと振りかぶる。もう時間がない。
蓮司は床に寝そべったまま、体を回転させて彩芽の後ろ側に移動した。
「もらったああ!」
彩芽はスカートの前ばかり抑えているので、後ろはがら空きだった。
蓮司はその無防備な布地に全力で風を送り込む。
「いやああああん!」
彩芽の悲鳴が響き渡り、スカートが儚く宙を舞った。
蓮司の耳が微かに「ふわっ」という音を聞く。
細い膝の裏、華奢な太もものさらに上、彩芽の禁断の場所が、遂に露わになった。
その色は――光沢のあるピンク。
幼い印象の彼女とは裏腹に、そのパンツはリボンなどの上品な装飾が施されており、間違いなく大人のパンツと言えるものだった。
蓮司は目を細め、彩芽のパンツを凝視した。
眩しい。生まれて初めて見た女子のパンツを、脳裏に克明に記憶する。
ピンク色のパンツは、彼女のぷりんとしたお尻に沿うように美しい曲線を描いており、その最下部、クロッチと呼ばれる部分も見えている。
その布地の向こうには、男たちが求めてやまない、乙女の秘密の花園が広がっているのだろう。
心なしか、パンツ越しでもわかる程度に、その部分の形が浮き出ているようだった。
蓮司は思った。
パンツは女子の本当の姿を写しているのだと。
本来であれば、人目につかない下着など、さほどこだわる必要はない。
しかし、女子たちはみな、お気に入りのパンツを選び、毎日無防備なスカートの中に履いている。
そのデザインこそが彼女たちの本質を示しているのだ。
子供みたいだと思っていた彩芽も、こんなにエッチなパンツを履いていて、すっかり大人だった。
蓮司は彩芽を誤解していたのかもしれない。今後は一人の大人の女性として、彼女と――。
「立花くん!!」
美咲の叫び声で蓮司は我に返った。
パンツに気を取られ、精神が別次元へと旅立ちかけていた。
蓮司は慌てて教室の天井についているカメラに向かって叫んだ。
「水本彩芽のパンツはピンク! 可愛さと大人の色気を兼ね備えた、上品なピンクだ!!」
一瞬だけ間が空き、スピーカーから九条の声が鳴り響く。
『正解。よって桐山和雄、水本彩芽のペアは敗退。』
九条はそう言うと、旧校舎内に彩芽の敗退報告を流す。
蓮司はふーっと安堵の息を吐くと、床に大の字に寝転んだ。
「うええん。パンツ、見られちゃったよ…。」
彩芽が顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。
蓮司はその顔と、先ほど見た大人びたパンツを交互に頭に浮かべる。
なんだか不思議な気分だ。パンツを見ただけで、なんかちょっと、好きになってしまいそうだった。
「ねえちょっと、大丈夫?」
美咲はそんな様子を遠巻きに見ている。
蓮司は体を起こすと、彼女に笑いかけた。
「うん。古川さんも大丈夫?」
「大丈夫っちゃ大丈夫だけど、結構危なかったかな。」
美咲はそう言うと、自身のスカートを見下ろす。
何回か直撃を受けたスカートの裾の糸がほつれ、ボロボロになっていた。
「やっぱりギリギリの戦いになっちゃうよね。」
「仕方ないよ。でもほら、新しい武器も手に入ったし。」
蓮司はそう言うと、敗退した男子生徒から受け取ったスーパーボールを見せた。
ボールは全部で5つ。最初は10つあったらしいが、途中でどこかに行ってしまったらしい。
「さて、これからどうしようか。」
蓮司は彩芽たちが退出した教室を改めて見回した。
このままここで隠れているのが得策か。
「――先のことなんて、考えなくていいよ。ここで敗退するから。」
答えたのは美咲ではなかった。
びっくりして振り返ると、教室の入り口にチャラついた男――千葉 大輔(ちば だいすけ)が立っていた。
「なんか音がすると思ったから来てみたけど、ボーナスペアがいるとはありがたいね。」
千葉はその整った顔を歪め、ケラケラと笑った。
その後ろには、クラスNo.1美少女――現役アイドルの、楠本 茉莉(くすもと まつり)がいる。
「さあ、楽しくゲームをやろうぜ。」
千葉はそう言うと、手にした水鉄砲をこちらに突き付けた。
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