第4話 舞台から飛び降りろ
思いが切り替わったら、こっちのものだ。
「まずはこのカードをもどして、このカードを出します」
ブランクはあっても、体が覚えている。
「そのままカードの効果を使用します」
そして何よりも、カードを触るのが楽しい。
「こっちのカードの効果でカードを三枚引きます」
いよいよここが正念場だ。今から引く三枚の中に俺の一番好きな『あのカード』が入っていれば、逆転勝ちすることができる。
「一枚」
違う。
「二枚」
また違う。
「最後、三枚目」
震えながらも確かな希望を信じてカードをめくる。
希望は、来てくれた。
「『王の命令』を使います」
王というイメージとは程遠いハンサムな男性の描かれたカード、このカードは超強力で、俺の好きなカードだ。
「この王が命令する」
かっこよくキャラの口上述べたりして
「アンフォーチュナトリ、グッバイ」
「そのまま攻撃、ライフを二点減らして、俺の勝利です」
「Yotsubaさん、ありがとうございました」
「KINGさん……ありがとうございます……」
「あなたがこのゲームの楽しさ、生きる幸せを教えてくれたんです」
そうだ。俺はこのゲームがやっぱり好きなんだ。
目指そう、あの時なしえなかった全国大会優勝を。
俺、生きたい。
「そうですか……私はここでおわかれですね……負けたのが私で、良かったです……」
その一言に、少しヒヤッとする。彼女も、いや、他の二人もちょっとしたきっかけで変われる可能性があったのかもしれない。
それでも結果は変わらない。スタッフの「それでは電撃いきまーす」とアナウンスが。
「がんばって……くださ……」
彼女の意識はそこで途切れた。
でも、俺もこの後死ぬ運命。生きることはかなわないのか……
「デスゲーム大会優勝、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
無事ゲームからの生還を果たした俺は、担当の吉田さんと再び会話する。
「さて、『最終的に一人は生還という設定になるが、勝者自身の希望により絞首も可能』なんですけれども、どうされますか?」
俺は驚いた、一度世界から消えようとしたのに。
「まだ生きていてもいいんですか?」
「本人が望むなら、そうだね。人の生き方は否定しないよ」
「ありがとうございます!」
俺はまだカードでチャンピオンを目指す未来が残っている。
「参加してくれてありがとうねー」
「吉田さん、さようならー」
夕焼けの中、俺はスタジオを後にした。
◆
「おつかれさまぁ、吉くん」
「先生こそ法案通してくれてありがとうございました」
「いやぁ、四人に一人は自殺させずに済むわけでしょ。自殺率25%低下、この大手柄を俺のものにしていいなんて、こっちが感謝したいくらいだよ」
「いえいえ、違いますよ。残りの三人は自殺ではなく他殺になるんで、もっと減るんですよ」
「はっはっは。そうか、そりゃあいいねぇ。吉くん、この企画、このまま続けたまえ」
「視聴者に最高のエンタメを届けるためです。当然ですよ」
舞台の上で 冬野 向日葵 @himawari-nozomi
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