第3話 初めての空想ざまぁ

 前回から、PV83と☆24個を獲得できた。


 現在あるのは、☆56個と112リワード。


 励ましと、面白いとのコメントと疑問点の3つを貰った。

 報酬のルールについてはまだ分かってない。

 徐々に判明するだろう。


 PVは少ないが、☆とコメント数が多い作品は良い作品。

 この調子で頑張る。


 ☆の獲得は順調だ。

 問題はPVか。

 今のリワードでも飢え死にはしない。

 だが、いい加減ちゃんとした服がほしい。


 宿代を見てびっくり、銀貨1枚、100イールだ。

 それも一番安い宿でだ。

 100も使ってしまうと、食費とか他に使えない。

 残り12リワードでは暮らせない。

 今のリワードでは、もう野宿するしかないな。


 適当な路地でごろりと横になる。

 地面の冷たさが気になるが、疲れていたのかすぐに寝入ってしまった。


 そして、小突かれて目が覚めた。


「何っ?」

「おいお前、持ち物がカップひとつとは、しけてやがる」


 声は男だった。

 俺は慌てて懐を探る。

 リワードを抜かせば、唯一の財産のカップがない。

 そして月明かりに照らされた男の手にはカップがある。


 俺は事態を悟った。


「盗んだな?」

「なら何だ?」

「返せ」

「分かってないな。浮浪者の世界は力の世界。これが物を言う」


 男が握り拳を突き出した。


「うらぁ」


 俺は起き上がって殴りかかった。

 力が物を言うなら殴っても良いだろう。

 だが男は鼻で嗤うとカップを置かずに片手だけで俺を殴った。

 一撃で頭がクラクラする。

 鼻血が垂れるのが分かる。

 蹴りを入れられ、さらに殴られた。

 そして、倒れ込んだ俺は、念入りに身体検査された。


「金をどこに隠してる。カップが買えたなら、まだ持っているよな。出せ」

「ぞれがざいごのがねだ」

「そうか。俺はマーダー。人殺しのマーダーだ。また巻き上げられたくなったら来い。来なくてもこちらから行くけどな」


 最後とばかりに強めに蹴られた。

 くっそ、モンスターが出るような世界だものな。

 力がある奴が幅を利かすか。

 悔しい。

 痛みで動けなくても何かできるはず。


 ええと、頭の中で復讐しても良いだろう。

 空想は誰にも迷惑を掛けない。

 さてどんな感じの物語を書こうか。

 ざまぁあり、グルメあり、無双ありが良いな。

 これなら読者は喜んでくれるはず。

 俺がそういう物語を好きだったからだ。



「【カクカク】」


 俺は執筆を始めた。


「くそがぁ」


 恐怖に顔を歪めるマーダー。


「殴られたショックで覚醒したんだよ。運がなかったな。【即死魔法】、足を殺した」


 座り込むマーダー。


「くそっ、足の感覚がない。動けよ俺の足」


 マーダーは自分の足を盛んに叩いてる。

 無駄なのに。


「これは返してもらう」


 俺はマーダーの懐からカップを抜き取った。


「そんな物のために」

「お前にとってはそんな物かも知れないが。最初のリワードで買ったものだ」

「リワード?」


 知らない単語だろう。

 この世界にはない概念だ。


「お前に知る必要はない。【即死魔法】、手を殺した。利子を貰わないとな」


 俺はマーダーの隅々を調べて財布や武器、装備品を全てはぎ取った。


「もう十分だろ。勘弁してくれ。俺はもう二度とあんたには逆らわない」

「さよならだ。【即死魔法】」


 マーダーの心臓は死んだ。

 俺はマーダーから奪ったお金で、大銅貨1枚、10イールのパンを買った。

 パンをふたつに割ると、香ばしい良い匂いが漂った。

 一口食う。


 バターがふんだんに使われてて柔らかくて美味い。

 前世のパンに匹敵する美味さだ。


 肉入り具沢山スープも貰おうか。

 肉は豚肉に似ている。

 匂いを嗅いだが、豚肉だな。

 口に入れると、油と肉の旨味が口の中を駆け巡る。


「この肉が美味いな。何の肉だ?」

「うちはオーク肉しか使ってませんぜ」

「知ってる。看板に書いてあるからな」


 知ってたら聞くなよと言った顔の店主。


「すまん、あまりに美味いからつい口走ってしまった」

「そういうことなら赦してやらんこともない」

「この店は懇意にするよ」


 帰りに浮浪者がいたので、銅貨を投げてやる。


「生きろよ。生きていればよい事もある。俺みたいにな」

「へぇ、ありがとうございます」


 今日から宿に泊まれるな。

 その前に服だ。


「一番良い服を持ってこい。俺に似合う奴だぞ」

「はい、ただいま」


 服を着替えたらさっぱりした。

 鏡に映る俺は美男子だ。

 女性店員の熱いまなざしに気づいた。


「惚れるなよ。俺は危ない男だ。触ると火傷するぜ」

「まあ、でも素敵」


 鐘がカンカンと鳴らされる。

 空を見るとドラゴンの姿があった。


「うるさいハエだ。【即死魔法】」


 一撃で死んで落ちてくるドラゴン。

 民衆は喝采を上げた。


 カクカクにざまぁを書いて、少し気分が晴れた。

 こんな展開なら良かったのにな。

 痛みで眠るのも困難だ。

 実際との乖離が激しい。


 きっと読者には気持ちの悪い奴って見られているかも。

 しかし、頭にきたな。

 マーダーは俺をカモ認定したに違いない。

 このまま搾取され続けるのも癪だ。

 ☆はもったいないが、☆10スキルを買うべきだろうな。

 それでマーダーに対抗できるか怪しいが、それでだめなら、☆を溜めて、☆100スキルを買うまでだ。


 なんの☆10スキルを買うかは決めてある。

 剛力スキルだ。


 ⓘをタッチ、剛力スキルの説明を見る。


――――――――――――――――――――――――

 力が二倍になります。

――――――――――――――――――――――――


 マーダーのパンチは強かったが、俺の二倍ほどじゃない。

 ポチっとな。

 ☆を10個消費したが、惜しくない。


 きっと勝てるはずだ。

 勝てなかったら、またスキルを獲得してリベンジだ。

 恐らくマーダーは俺を殺せない。

 殺せるなら、今日やっていたはずだ。


 カモ認定したということもあるのだろうけど、そんな気がする。

 他にも何か使える物があれば使おう。


 ここに来る時にマーダー以外にもむかついた奴がいる。

 門番だ。

 浮浪者扱いされて蹴られた。

 利用してやるか。


――――――――――――――――――――――――

今回のスキルと☆:

 獲得スキル、剛力

 ☆残り46個


今回の収支:

 収入

 83リワード


 支出

 なし


 残金

 112リワード


次の分岐:

 残金200リワード以上で服を買う。その場合、マーダー退治に助っ人が来る。

 未満だと服はボロボロのまま。助っ人が来ないので、マーダーにまた負ける。


ステータス:


名前:健司・金子

レベル:1

魔力:5/5

スキル:

 カクカク[ ]ⓘ

 点火ⓘ

 剛力ⓘ

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