ep3-13

「たまたま通りかかったら、君が絡まれていてね。間に合ってよかったが……」


 シリウスは男達を一瞥する。その目は冷たい光を放っていた。


「あ?なんだよてめぇ!」


「邪魔すんじゃねぇよ!」


 3人の男は一斉にシリウスに襲いかかるがーー。


「遅い」


 シリウスは1人目を背負い投げで倒し、2人目の鳩尾に拳をめり込ませる。3人目が殴りかかるとそれを躱して脇腹に蹴りを入れた。


「すごっ……」


 思わず声が漏れるリィルにシリウスはゆっくりと近づき、体に怪我がないか確認していく。


「どこか痛めていないか?今日は非番で見回りもしていなかったから、君が王都に来ていることに気づくのが遅れてしまった。本当にすまない」


「いえ、お仕事中じゃないのにそんなに気遣っていただかなくても」


「それはダメだ。私は君が王都にいる限りは君の騎士でいると誓った。君がよくても、私が自分を許せない」


 シリウスの真剣な言葉にリィルは口籠る。嬉しいのと申し訳ないのとで、なんと返していいかわからない。そんなリィルにシリウスは優しい笑みを見せる。


「だから君が無事でよかった」


 その言葉に胸が締め付けられる。顔が赤くなるのを隠すために俯くとシリウスが優しく頭を撫でてくれた。


 ーーああ……やっぱり好きだなぁ。この手が、この人の温もりが……どうしようもなく好きなんだ私は。でも、それは絶対に報われない想いだ。だって彼は騎士で私はただの平民なのだから……。


「あの、ありがとうございます。助けてくれて」


「いや、礼には及ばない。それにしても、本当に怪我はないのかい?」


「はい、この通り……っ!?」


 リィルは腕を軽く回すと少し痛みが走った。壁に思い切りぶつけられた時に痛めたのかもしれない。リィルの反応にシリウスが血相を変える。


「痛めたのかい?」


「あ、えっと……」

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