ep3-14

 言い淀むリィルにシリウスは眉間に皺を刻んだ。そして腕を掴み、服の上から確認する。


「……うん、少し腫れてるな」



「いや……本当に大丈夫ですよ!このくらい」


「ダメだ。私の主人に怪我を負わせるなどあってはならないことだ」


 そう厳しい口調で言うシリウスにリィルは萎縮するしかなかったが、彼がすぐに優しい表情に戻る。そのギャップにまた胸が高なるが、シリウスのその後に続いた言葉で一気に焦り出した。


「状態をよくみたい。私の屋敷で治療をしよう」


「え?いやいやいや、いや!?そこまでしなくても……」


「ダメだ。私が自分を許せなくなる」


 厳しいシリウスの雰囲気にリィルは逆らえず、そのまま屋敷へと連れて行かれた。



***


「それじゃあ、リィル。腕を見せてごらん」


 シリウスの屋敷で彼の自室に通されると、ソファに座らせれるリィル。怪我を診るためとはいえ、こんな形でシリウスの部屋に入ることになるとは……とリィルは妙に緊張していた。


「あの、本当に服を脱がないとダメですか?まくるだけでも……」


「肩の位置などはそれでは上手く診れないだろう。男同士なんだ、気にする必要はない」


「……はい」


 男同士……その言葉にリィルは諦めたような顔をして、シリウスに言われるがまま、シャツのボタンを外して上を脱ぐ。サラシを巻いていることは以前、お風呂に入った時に知られているからか、特につっこまれはしなかった。その事に安堵しつつ、リィルは右腕をシリウスに見せる。


「うん……少し赤くなっているな」


「あの、本当に大丈夫なので……」


 そう遠慮して言うリィルだが、シリウスは真剣な顔をして腕を優しく触る。


「っ……」


 その触り方にリィルはゾクッとしてしまった。まるで肌の感触を確かめるように、ゆっくりと撫でるように触られる。それがなんともくすぐったくて、変な気分になる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る