ep3-12

「おーおー威勢がいいなぁ。だがな、女1人に男3人がかりでどうにかできないわけねぇだろ?」


 そう男は言うと、リィルの服をたくしあげ、サラシを見るとニヤリとして撫で始めた。


「あー、こんなことしてまで男になってんの?」


「私は男になったつもりはない!」


「え?こんな見た目なのに?サラシまで巻いて、執事の服きてんのに?笑える」


 男達はただただリィルをバカにしていた。言い返したのにリィルは言葉に詰まる。確かに自分の見た目から、似合う方を選択していたのは事実。それは、これ以上傷つきたくないからであり、人にバカにされるためにしているものではない。


 リィルは鋭い眼差しを男達に向けた。その顔に一瞬怯むも男達はすぐに笑う。


「おー怖い怖い」


「まあ、今からじっくり教えてやるよ。おまえが女の子なんだってことを、体にさ」



 ニヤニヤしながら言う男にリィルは心底嫌そうな顔をして答える。


「……お前らみたいなクソ野郎に誰がやられるか。自分より弱い奴にしかイキがれない雑魚が」


「あ?てめぇ……調子乗んなよ」


 その一言で男達はキレた。そしてリィルを殴ろうと拳を振り上げる。これからくる痛みにリィルは瞼をぎゅっと瞑りかまえるが……いつまでもその痛みはこない。


「ーー私の主人に何をしている」


 聞こえてきた声にハッとして目を開けると、視界に入る銀髪。


「っ、なんだよおまえ!離せよ!」


 殴りかかろうとした男の手を簡単に掴み、リィルを庇うのはーー。


「シリウス、さん」


「君は本当にトラブルに巻き込まれやすいな」


 リィルが淡い恋心を抱く、この国1番の優秀な騎士、シリウス。


「何で……ここに?」


 シリウスの服装はいつもの騎士姿ではなかった。おおかた非番なのだろう。それなのに、リィルを助けにきてくれた。

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