ep2-11
「謝るのは、おまえの方だクソ野郎が!」
リィルの言葉は強く響いた。その目つきの悪い瞳は、シリウスが評価したように意志の強さが込められたいい瞳だった。
シリウスは目の前の光景に圧倒される。リィルのその強さに、思わず心が痺れた。
この騒動で周りの人達も注目し始めると貴族の男はバツが悪いのか悔しそうな顔をする。
「ぐっ……ふん!この辺にしといてやる」
男はそう吐き捨て、護衛を連れて去って行った。
その後姿を見て、リィルはフンと鼻を鳴らしてシリウスに向き直る。呆然とするシリウスだが、すぐに慌てて立ち上がった。
「リィル、ありがとう。すまない」
そんなシリウスにリィルはため息を吐く。
「なんで謝るんだよ」
「私は君を守る騎士なのに……逆に守られてしまった」
「別に、そんなつもりは……」
なぜか気まずくなって2人は黙り込んでしまう。するとそこに小さな子どもが駆け寄ってきた。
「さっきは助けてくれてありがとう!」
「あーいいって……って、おい!」
「リィル!」
子どもの勢いが強く、タックル並に飛びつかれたその反動でリィルは倒れた。それを止めようとシリウスは手を伸ばしたが間に合わず、バシャーンッと大きな音を立ててリィルは噴水に落ちた。
「ぷはっ!……くそ、やられた」
水飛沫を体に受けながらシリウスは急いでリィルに手を伸ばして立ち上がらせる。
「このままでは風邪をひく。リィル、私の屋敷に向かおう。替えの服も貸せる」
「……はい?」
シリウスの善意100%の申し出にリィルは固まった。確かに服は濡れて冷たい。しかし、このままシリウスの屋敷に行き着替えをすることになれば、また変な注目を浴びる。大変面倒くさい。
「いや、服は歩きながら乾かして行きますんで」
「だが……」
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