ep2-12
リィルが遠慮するとシリウスは気遣わしげな目を向けてくる。そんな目で見るなと心の中でツッコみながら、いつのまにか更に増えているギャラリーの視線にどうにかしてこの場から離れようと思案しているとーー。
「すまない。先に謝罪する」
「は?ちょっ、ええ!?」
リィルの返事も聞かずにシリウスは手を取って歩き出した。その強引さに呆気に取られたリィルは怒ることも忘れて、ついて行くのだった。
***
シリウスの屋敷は王城の近くにあり、かなり立派な建物だった。そこに立ち入った瞬間、玄関ホールにいた使用人達が出迎えた。
「おかえりなさいませ」
「ただいま。こちらの方は私の客人だ。風呂と部屋の準備を頼むよ」
「かしこまりました」
シリウスの言葉に使用人達は一礼し、リィルを部屋へと案内した。そしてすぐにタオルや着替えを持って来たメイドが部屋へ入ってくる。
「どうぞこちらをお使いください。浴場の準備ができましたのでご案内いたします」
「あ、はい」
テキパキとあっという間に流れでこんなことになったリィルは、ぼんやりとしたまま風呂に入ることになった。
シリウスの屋敷の風呂は大きく大人が5人は余裕で入れる広さである。その凄さに圧倒されつつも、リィルは冷えた体を温めることにした。
「あー……極楽ぅ」
身体の芯から温まったリィルが湯船に浸かりながらそう呟く。そして今日の出来事を振り返った。
あの貴族の野郎にイラっとしたからってあの言葉はまずかったか?いやいや、シリウスさんを侮辱されてるし、足りないくらいだよな?大丈夫だよね、私……と少々不安になりつつも、何とか気にしないようにする。
その時、シリウスの声が扉の外から聞こえてきた。
「リィル?湯加減はどうだい?」
「……え?……っ、あ!ああっ!ちょうどよいです」
一瞬、変な声が出てしまったが何とか誤魔化した。急にびっくりさせるなよと文句が出そうになるが、更に恐ろしいことは重なる。
「そうか、よかった。ならば、私も入らせてもらおう」
「ええっ!?」
リィルの叫びと同時に浴室の扉が開いた。
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