ラプラスの魔物 Secret Seekers

《警察による調査資料》

『日記』

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フィナル・マンス

1th 月の日 byゴドフリー

君から交換日記を書いて欲しいと言ってくれて、嬉しいよ。きっとメアリーも気に入ると思う。何から話そうかな……。

名前は知ってるよね。ゴドフリー・サザーランド。好きな事は小説を読むこと。不動産会社で働いてる。歳は三十二歳。君はどうなんだろう？教えてくれ。

フィナル・マンス

1th 月の日 by エサリッジ

（エサリッジ記載の日記部分は全て切り取られ暖炉の隠し棚に仕舞われていた。また、購入物が不明な領収書も同時に仕舞われていた。日付はフィナル・マンス 2th。）

私もずっと話したいと思っていたのよ……話したいのはメアリーなんだけど。私の名前はエサリッジ。ただのエサリッジよ。好きな事は小説を読むこと。共通の趣味でゴドフリーと仲良くなったのね。小説を書くことが好きなの。こうやって人と話すのは初めて。宜しく。

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フィナル・マンス

2th 火の日 by メアリー

エサリッジ、私も話せて嬉しいわ。皆小説を読む事が好きなのね。私もよ。歳はゴドフリーと同い年で三十二歳。エサリッジの書いてる小説、私も読みたいわ。そうだ。エサリッジも家族の様な物だから、土日のどちらかに届いた小包はゴドフリーに渡してね。大事なのものなのよ。また色々話すわね。

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byゴドフリー

ちょっと！僕のアイス食べたの誰！？

（乱雑に書かれている）

フィナル・マンス

5th 金の日 by エサリッジ

ちゃんと日付書かないとわかんないわよ。あとアイスはメアリーと私で食べたわ。すごく美味しかったから、また買ってきて頂戴。

同日 byメアリー

ごめんねゴドフリー！ 今度はお詫びにプリンを買ってくるわ！ゴドフリーの分ね！

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フィナル・マンス

7th 日の日 by ゴドフリー

新しい小説を買ってきたから、皆にも読んで欲しい。エサリッジは奔放だからよくどっかに行ってしまうのは寂しいけど、きっと彼女も気にいる筈だ。今度のはサスペンス。メアリーが怖がりだからホラーは止めた。タイトルは『ウィリアムとかくれんぼ』こういう童話ものって読むの楽しいよね。

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フィナル・マンス

8th 月の日 by メアリー

ゴドフリーが居るのに日記を書くのって変な感じだけど、エサリッジの為に残しておかなきゃね。『ウィリアムとかくれんぼ』、読んだわよ。なんというか……感想としては、『注意深く読め』って事よね。

叙述トリックって面白いわぁ。

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フィナル・マンス

12th 金の日 by エサリッジ

帰って来るのが遅くなってごめん。ちょっと体調が良くなくて家にいたの。えーっとなんだっけ、『ウィリアムとかくれんぼ』だっけ。私は頭が悪いから難しい話はいいかな……。今度買ってくる小説はもっと簡単なのにしてよ。

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フィナル・マンス

14th 日の日 byエサリッジ

メアリー曰く、今日ゴドフリーは出張らしい……。やったわ。メアリーを独り占めね。帰って来なくていいわよ、ゴドフリー。……それはアレだし、今日起こった話でもしようかしら。宅配便が来たから出ようと思ったら慌ててメアリーに止められちゃった。私が居ることは確かに秘密だけど、そんなに隠さなくても……。

まぁいいや、おじいさんに「この事は秘密にして」って言ってたな。あんな事ならちゃんと自分の服を買ってこればよかった。

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フィナル・マンス

15th 月の日 by ゴドフリー

やっと帰ってこれたよ。人使いの荒い会社だ、土日も出張だなんて……。日記を読んだよ、エサリッジ。美意識の高いエサリッジの為に服を買ってきて良かった。君と僕は背格好が似ているから、 多分サイズについては心配しなくていいと思う。メアリーが眠ってるんだけど、君何か知らない？

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フィナル・マンス

15th 月の日 by メアリー

（この日からのメアリー記載の日記部分は、全て文字が等間隔に記載されていた。）

ごめん。あの後直ぐに起きたわ。エサリッジと沢山遊んで疲れちゃったの。彼女ったら私の知らない面白い話を沢山してくれるのよ。もう夢中になっちゃって日がな一日話したわ。エサリッジも意地張ってないでゴドフリーに沢山教えてあげたらいいのに。

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フィナル・マンス

16th 火の日 by エサリッジ

今日は体調がいいからメアリーに会えて良かった。でもメアリーったらほんとに何も知らないのね。……もしかしてなんだけど、メアリーって██████じゃ██████ね██の████ら？

（ここからゴドフリーと思われる次ページの日記記載まで塗りつぶしが続く。エサリッジの日記を消し黒塗りを行っている為、内容は不明）

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フィ█████ ██

███ b█████

█████が█████！████████の███████じ█████が！████████て██

█████あ！██████████

（以後罵詈雑言と思しき言葉が続く）

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フィナル・マンス

18th 木の日 by メアリー

エサリッジとゴドフリーが仲直り出来て良かったわ。カッとなって本当に悪かったって、ゴドフリーも謝ってる。エサリッジもカッとなるとこがあるみたいだから、きっとそういう所もお互い似てるのよ。だから仲良く出来るって、私知ってる。

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フィナル・マンス

19th 金の日 by エサリッジ

ありがとう。メアリーってば本当に優しい子なのね。こんな奥さんと一緒にいることが出来るなんてゴドフリー、私貴方が羨ましいわ。おだてじゃないわ。本当よ。週末は出張なのよね。ゴドフリーが帰って来るの、私達待ってる。

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フィナル・マンス

20th 土の日 by エサリッジ

今日はお腹が空いたから、何かお昼に作ろうと思ってオムライスを作ったわ。メアリーは美味しいって喜んでくれた。でもこの家って食料品が少ないのね。意外とゴドフリーって少食なの？メアリーはそもそもあんま食べないし……。でもあの子、料理好きなのね。自家製のレシピ本があってビックリしちゃった。メアリーは忘れてたみたい。お茶入れるのは得意だと思ってたけどね。

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フィナル・マンス

22th 月の日 by ゴドフリー

奇遇だね、エサリッジ。僕もその日はお昼にオムライスを食べたんだ。好物も似てるなんて運命かもしれないな。僕は結構少食。メアリーも病気が治ってからというか……。今月入ってからはあんまり食べてないな。寒いから食欲湧かないのかも。僕もあんまり家に帰ってないから、メアリーの手料理が恋しいよ。

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フィナル・マンス

23th 火の日 by メアリー

嬉しいわ、ゴドフリー。でも……やっぱりもうここにはいられない。ゴドフリー、それは貴方がよく分かっているでしょう。やめましょうこんな事。こんなの貴方の為にならない。あなたはまだ人生がある。何も諦める事ないじゃない。

同日 by エサリッジ

私もメアリーに同意見よ。こんなのおかしい。間違ってる。小包はもう届かない様にしておいたから、何も心配しなくていいわ。伝票と処方箋を見た事は謝るわ。だけど……ちがう。これは、間違ってる事だと思うのよ……。

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フィナル・マンス

25th 木の日 by メアリー

準備は出来た。きっとこれは運命よ。なんてったって彗星が近づいているんだもの。きっと連れて行って下さる。内なる声が呼んでいるの。『仲間が待っている』。『パナギアが誘う』って。エサリッジを連れて行ってもいいかって聞いたら、儀式が終わったらいいって。だからもう私は行くわ。有難う。ゴドフリー。会えて嬉しかったわ。

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フィナル・マンス

28th 日の日 by

ほしがみえる

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ノートの裏には黒いペンで塗り潰された何かしらの跡があった。また、『……リー・サザーランド』と記載の処方箋も発見された。日付が数ヶ月前で高額な為、メアリーの物だと考えられる。

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『ノルテ・カーリン帝国第一警察署の失踪事件の調書』

失踪事件に際して、接点がある三名に取り調べを行った。内容は以下の通りである。

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【マーサ・ハドスン】

《生い立ちと現在の年齢を教えて下さい》

えぇっと……私の名前はマーサ・ハドスン。アパートの大家をしているわ。歳は五十四歳で、高校までしか出てない。息子夫婦が西ノルテに住んでる。今の仕事は亡くなった夫から引き継いだものよ。

《趣味や好きな物はありますか？》

趣味まで聞くの？えーっと……お菓子を作るのが好きね。よくアパートの住人に振る舞うの。

《失踪者との関係を教えて下さい。》

特に何も……普通の大家と住人の関係だわ。夫婦で住んでたのよね。旦那さん、結構裕福なのにアパート住まいだからビックリした事は覚えてるわ。大きい会社の役員候補とかなんとか……。

《事件前後の行動を教えて下さい。》

西ノルテに住んでる息子夫婦の所に遊びに行ってたわ。だから帰ってきてビックリ。女物の服が凄くあったんでしょ？……ココだけの話ね、多分不倫してたんじゃないかって噂もあったんだけど……。

《それに付随して、何か変わったことはありませんでしたか？》

さぁ……。女が出入りしていたなんて噂は聞いたけど……。それもタダの噂っぽいのよね。凄く愛妻家だって聞いたし……。あぁでも、メアリーさんと仲良く歩いていたのが印象的だったわね。凄く笑顔だったから。病気が治ったみたいで私も嬉しくなっちゃった。

《いつ頃かは覚えていませんか？》

確か月の初めだったと思うわ。病院帰りにしてはえらく荷物が少なかった気がするけど……。

《他に事件について何か知っていることはありませんか？》

他には何も知らないわ。サザーランドさんは、夫婦と二人暮しで仲睦まじく過ごしてたって認識しかないから……お力になれなくてごめんなさいね。

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【エルキュール・ノートン】

《生い立ちと現在の年齢を教えて下さい》

俺の名前はエルキュール・ノートン。疾走したゴドフリーの同僚だよ。株式会社アーテンターで働いてる。不動産会社なんだ。大学はアンテリエル公立大学を出てる。自慢じゃないが、あの大学で首席だったんだ。ゴドフリーはジェニトア私立大学だったかな……。歳は三十三だよ。家族は別の国に住んでる。え？ザフラに住んでるけど。

《趣味や好きな物はありますか？》

今の所は……映画を見る事かな。教養って大事だし。色んな人と話せるからね。小説を読むよりは俺に向いてると思う。

《失踪者との関係を教えて下さい。》

同期なんだ。入社の時から仲が良い。アイツは小説を読むのが趣味だから、小説原作の映画とかでよく話したかな。お互いの事をよく話したよ。奥さんの……メアリーの事とか。

《メアリー・サザーランドさんについて詳しく教えて下さい。》

いや、俺もそんなに詳しくない……。けどメアリー、身体が弱くてさ。小さい頃から病気がちだったらしくて、持病があって。一時は大変だったらしいんだけど、十年弱くらいの闘病を経て、今は快方に向かってるって聞いたけどな。月初めに帰って来るとかなんとか。……まぁ、そうだったらあんな事する気も分かるんだが……。

《『あんな事』とはなんですか？》

いやぁ……不倫だよ、不倫……。ゴドフリーって気が良くて優しくて──って皆思ってるけど、実はそうじゃないんだと思う。メアリーが病気ってのも、あれ嘘じゃねぇかな。アイツそういうとこあるんだよな。メアリーとよく似た人だったよ。エサリッジって名前だったかな。二人で並んでると瓜二つだった。にしてもメアリーが男と女両方いけるとはね……。

《よくご存知ですね。》

そりゃ同僚の妻の不倫だからね。一応、声をかけたんだ。女にしちゃ声が低い女だった気がする……。メアリーは土日しか会えないって言ってたから、エサリッジは遊びで会ってたんじゃないかな……こう見えても俺の勘は当たるから、参考にしてくれていいよ。

《有難う御座います。それでは、事件前後の行動を教えて下さい。》

数日普通に出勤してたんだが、二日欠勤が続いた辺りから上司に「ゴドフリーと連絡がつかない」って言われて……。家に行って見たらもぬけの殻で、靴が無かったから失踪だと思って警察に連絡したってワケ。

《そういえば貴方が第一発見者でしたね。》

……いや、疑わないでくれよ。俺がアイツを殺してどうするって言うんだ。大方メアリーじゃないのか？ゴドフリーに不倫がバレて殺して逃げたんだろうさ。メアリーもゴドフリーも、貧乏くじを引いたな。

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【ジェームズ・ライダー】

《生い立ちと現在の年齢を教えて下さい》

おれはジェームズ・ライダー。宅配便をやっておりますです。妻にも息子にも事故やら病気で先立たれておりますので、天涯孤独の身でさぁ……はは……。今年で……確か七十八歳になったかな。

《趣味や好きな物はありますか？》

趣味をやれる程時間がありませんから……でも時間が取れたら、博打に行きますです、はい。

《失踪者との関係を教えて下さい。》

担当配達区域のお得意様でさぁ。土日は家から出られないからとかなんとかで、土日のどちらかに小包と日用品を運んで居ましたです。

《箱の中身は……？》

見れる訳ありやせんぜ。おれにはわかりやせんが、そこは警察さんがどうにかするとこじゃないんですかね。日用品ってのはあれね、札に書いてあったから。小包には何にも書いてありやせんでした。

《分かりました。事件前後の行動を教えて下さい。》

その週は……土の日に宅配をしましたです、はい。（後の調査で日の日が宅配となった伝票が残っている為、この証言は誤り）随分と慌てた様子で……奥方が出ていらっしゃいしました。

《その日はゴドフリーさんはいらっしゃらなかったんですか？》

週末はゴドフリーさんはいやせんぜ。エサリッジさんとメアリーさんがいるんですわ。声の低い女だったな。ただね……。

《ただ？》

エサリッジさんは恰幅がいいから、服が小さいんですわな。メアリーさん曰く「他の服が着れないから私の服を貸している」とか言うてたような……。じゃあどうやってエサリッジさんはメアリーさんの家に来てたんだろとか思うんやがね。

《事件に付随して何か変わったことはありませんでしたか？》

あぁ、メアリーさんから「このことを言わないで」と念を押されましたわな。当たり前ですよな。不倫しているという事がバレたら、終わりですぜ……。

《事件について何か知っていることはありませんか？》

いやぁ、もうありませんぜ。日用品の配達は無くなったし……。あぁいや、小包はまだ定期で残ってたかしら……。無かった気がしますがね。運ぶ相手が居ない包をどうすればいいんかね。送り主も誰か分からないし……。