第30話 これって本当にホームパーティー!?
「皆さん,本日はお越しくださって誠にありがとうございます。ささやかな催しですが,あとでゲーム大会も行いますので楽しんでください。それでは、乾杯~!」
「「乾杯~!!」」
俺の音頭と共に皆がグラスを掲げると,俺達の婚約披露パーティーという名のホームパーティーが開催された。
「ま,松本君!本当にこれはホームパーティーなのかね?とてもじゃないが,お家でするようなパーティーではないような気はするんだが……。」
「松本さん,私達ってここに居て良いんでしょうか?」
「二人とも,私はもう驚くことを捨てました。今日はもう仕事のことを色々と忘れて楽しんで行きましょう。ということで,今日は飲むぞー!!」
叫ぶ松本さんに苦笑しながら静ねぇはグラスに親父のコレクションであったワインを注ぐと,瓶のラベルを見た課長さんは絶句した。
「こ,これは確か数万円はする高級ワインでは!?」
「そうですね。確か,おじ様のコレクションの中でも安い方だったような……。瑞穂ちゃん,お肉って焼けた?」
「今,焼けた。レアでも十分美味いのでどうぞ。」
「これってもしかして,A5ランクの神戸牛ですか?流石,風華グループの御曹司。ホームパーティーでもこのレベルなのか……。」
豪快にワインを堪能する松本さんを他所に課長さんと同僚の方は現状にかなり困惑しているようだ。
まあ,どうみても高級鉄板焼きのお店に行かないと食べれないお肉とワインが家で味わえるのだ。
驚いて当然だろう。
「パパってほんと料理上手よね。それにしても,奈都姫の弟と妹って……。」
「天音,今日は自重しなさい。銀次郎様から問題を起こすようなら折檻して構わないと許可は貰っているから。」
「銀ちゃん,酷い!!摘まみ食いぐらいしてもいいでしょう!!」
「天音,今日は抑えて。シン達の婚約パーティーだから皆に楽しんでもらいたい。」
「ぶ~,なら銀ちゃんで我慢する~。ぎゅ~!」
梨央君と梨久ちゃんをロックしていた天音に注意すると逆に銀が餌食になっていたが,問題なさそうに天音のハグを受け入れていた。
あの犯罪予備軍の天音を許容できる銀ってある意味凄いよなぁ。
「まったく。天音,梨央と梨久に手を出したら許さないわよ。それで,梨央。その子がひかりちゃん?無茶苦茶可愛い子じゃない!梨央もやるじゃないの!」
「姉さん,ひかりちゃんが困ってるよ。ひかりちゃん,僕の姉さんだよ。」
「は,はじめまして,奈都姫お姉さん!」
「ちょっと,奈都姫!?この子誰よ!?お人形みたいじゃない!!」
「にぃにのかのじょさんだよ。」
「梨久!?姉さん達の前ではっきりと言わないでよ!!」
あれが梨央君の彼女か……。
しかも,金髪に虹彩異色症,オッドアイって何処の二次元のヒロインなんだよ!
えっ!?真面目にあの子が梨央君の彼女なの?
見かけに寄らず,とんでもない上玉を引っ掛けたものだ……。
それから,天音さんよ。涎を垂れ流してヒカリちゃんを見つめるな。
顔に出てないが,あの寝屋川が若干引いてるぞ……。
「ほえ~,漫画に出て来る女の子って本当に居たんだぁ。」
「私もびっくり。でも,ほいみんも目だけ変えたらそうならない?」
「う~ん,私じゃあそこまでは無理かな。なっちゃんに頼んで後で写真ぐらい一緒に撮らせてもらおうっと。あ,雲長先生,お寿司ありがとうございます!」
「はっはっはっ,大したことはしてないさ。しかし,息子達から婚約披露パーティーと聞いて持って来たのだが,風華のあれを見ると必要はなかったかな?」
「そうでもないですよ。師父,ありがとうございます。」
拓人達と部屋中を見ていた俺は師父にお礼を言った。
今回の婚約,俺達の事情をよく知っている師父は本気で祝いに来たんだろう。
偽装婚約とは知っているはずなのに俺が前に進んだことが余程嬉しいんだろう。
「それで,風間君。3人のことは実際はどう思っているの?」
「渚沙さん,さっきから言ってますけど,3人とはまだそう言う関係になるつもりはありませんよ。」
「本当にぃ?私だったら迷わず,3人とも手元に置きたいって思うけど?」
「こらこら,渚沙。風間君をあまり困らせては駄目だよ。」
「は~い。ねぇ,ユウ。一緒にお肉食べに行かない?瑞穂君が焼いてくれるみたいだから。ほら,行くわよ!」
天野会長は相変わらず,渚沙さんに尻に敷かれているな。
まあ,仲が良好で何よりではあるのだが……。
そう思うと,俺は隣で一緒に紫色の飲みもの(炭酸ジュース)を飲んでいた親友の状況も少し気になった。
「先日のデートはどうだった?」
「ぐふっ!?い,行き成り何を言い出すんだ!?」
「咽るほどでもないだろう?それとも,咽るほどのことをしたのか?」
「…………。」
えっ!?何,その反応!?凄く対応に困るんだけど!?
こっちの話が聞こえたのか,義妹と奈都姫達一行が真白ちゃんをロックすると話を聞き出そうとしていた。
そう言えば,梨央君が色々と教えてほしいと言ってたなぁ。
あとで,拓人を紹介しよう。
「…………シン,何かあったのか?」
「えっ?」
少し顔を赤くして黙り込んでいた親友が行き成り話を真面目な顔で振って来た。
「別に何もないぞ?まあ,久しぶりのパーティーだから燥いでは……。」
「お前がこういう場で燥ぐ時は何かあった時だけだろう。いや,盛り上げて考えていることを忘れたいと言ったことが正しいだろうな。」
「拓人には敵わないな。」
本当に察しが良過ぎる親友だ。
おそらく,銀も気付いていると思うが,俺がこれだけ大金を叩いて豪華なパーティーをするのは松本さんから聞いた昨日の話が未だに引っ掛かっているからだ。
いや,その話がある出来事と重なって見えてしまったのだ。
「ちょっと,課長さん達と話して来るよ。」
「ああ。」
理由も聞かず,親友は一言だけそう言うと真白ちゃん達の所に向かった。
「フレディ,焼くの変わるからお前も楽しんで来てくれ。」
「む?いいのか?」
本日の主賓は一応は俺達なのだ。
さっきから松本さん達にワインを注いでいる静ねぇは兎も角,俺や奈都姫達が一番楽しまないといけないのはわかっているのだろう。
「まあ,やっぱり料理が趣味だから,な。」
「……わかった。」
フレディも何言わず,俺と調理を変わってくれた。
本当に俺の周りは皆察しが良過ぎるだろう。
凄く濃い奴等ばかりだとも思うが……。
「風間様!?あなたが料理をしなくても……。」
「気にしないでください。料理は趣味ですから。松本さんもまだ食べます?」
「頂きます!風間君,今日は誘って下さって本当にありがとうございます!」
「楽しんで頂けたら何よりです。この後,ビンゴゲームもするのでお楽しみに。」
結構な頻度でワインを飲んでいた松本さんだが,まだまだ余裕そうだ。
この人ってもしかして酒豪なのか?
変わりに隣の同僚さんはかなり酔っているようだが,大丈夫だろうか?
「……風間様,今回の問題,助力下さり誠にありがとうございます。」
ステーキを焼いていた俺に課長さんはそのまま頭を下げた。
「お礼なら銀に言って下さい。俺は仲介をしただけですから。」
「それでもです。正直,今回の一件はかなり頭の痛い問題でして。件の加害者の方も今回のことは水に流すと言ってくださいました。」
水に流す……か。
もう少し遅ければ,その加害者の方は政府に直談判をしようとしていたのだ。
ただ,おそらくそれだけでは終わらないだろう。
何せ,政府が無理やり出した政策に巻き込まれて息子の婚約者を選んだのに,その政府から圧力を掛けられて,今度は必死で探した婚約者を奪われそうになったのだ。
矛盾もいい所である。
「それにしても,風間君。どうして,助力しようと思ったんですか?確か,風間君はお父様と同じくあまり生家と積極に関わりなくはなかったはずでは?」
「ちょっと,昔に起きたことに状況が似ていたので。」
「昔に起きたこと?それって……。」
「松本君。それ以上は聞くのはやめなさい。風間様,申し訳ありません。」
「気にしてませんよ。それよりも……。」
「シン,料理しているの?」
急に声を掛けられて課長達は振り向くとその人物に目を見開いた。
俺にとってはただの従兄弟であるが,他人からすれば総理大臣ですら怯むと言われていた風華グループ当主の御子息が目の前にいるのだから慌て出すのは当たり前だ。
「風華様!?こ,今回の件は本当に何と言っていいのか……。」
「シンが気にしてないなら何も言わないよ。……この人達ってシンの大切な人達?それとも,ただの知り合い?」
「大切な人だよ。色々とあったが,俺には良くしてくれていると思っている。」
「そう。だったら,僕が全力で守るよ。もう……誰も死なせたりしない。」
淡々と言うと銀は天音達の下に戻って行った。
顔に出ていないが,銀もあの事件のことをかなり気にしているのだ。
本当に過保護すぎるぞ,俺の身内は……。
「あの,風間様。今のはどういう意味で?」
「課長さん達が銀の保護下に入ったってことですよ。多分,課長さん達に何かあってもこれからは銀が何とかすると思いますので安心してください。」
俺の言ったことに理解が追い付かないか,課長さんだけでなく酔いが冷めてしまった松本さん達も俺と銀を交互に見て唖然とした顔をしたのだった。
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次回:風間流ビンゴゲーム大会!! お楽しみに!
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