第23話 同棲生活はドキドキがいっぱい!?
「うふふ,大変だったわね,シンちゃん。」
「静ねぇ!笑わないでくれよ!昼飯を食べる時間がなかったんだから!」
夕方頃,俺は非常に遅めの昼食という名の夕食を食べながら,先に家に帰ってきていた静ねぇに愚痴をこぼしていた
俺も体育祭の準備や話し合いで生徒会に詰めないと駄目なのだが,本日は風紀委員長である渚沙さんと軽く打合せする程度なので俺と銀は早々に帰宅。
奈都姫と拓人は天野会長と渚沙さんの付き添いで,保衣美はアニメ同好会の連中と何かすると言っていた。
「それにしても,皆はシンちゃんが羨ましいんだね。」
「羨ましいか……。まあ,偽装婚約って言ってないから他から見たら婚約した美少女3人と暮らしているとんでも野郎に見えるんだろうな。昼間の事情聴取で変わったかもしれないが……。」
俺は今日,昼間の事情聴取で質問攻めしてきた男子達だけでなく話を聞いていた女子達にも事情を説明した。
流石の皆も御上からそう言う通達がきたと言ったら何も言い返すことができず,渋々納得したのか,それ以上は何も追及しようとしてこなかった。
やはり,御上に対して反論する何て一部の存在だけであり,俺や恭哉さんの存在は御上に取ってはイレギュラーな存在であったのだろう。
「シンちゃんは私達と婚約したことは後悔している?」
「後悔はしてないよ。確かに静ねぇ達とは実際は偽装婚約かもしれないけど表立っては婚約者として見られる必要はあるだろうし,それなら俺のことを分かってくれる人がいいからな。それに……。」
俺に取って静ねぇは初恋の人だからな。
今ではその気持ちは冷めてしまっているかもしれないが,好きか嫌いかと言われてた勿論好きだと俺は答えるだろう。
「それに?何か言おうとした?」
続きが気になったのか,俺に顔を近付けて尋ねて来た。
やはり,全校生徒が憧れるお姉様。物凄く美人だし,いい香りがする。
あと,静ねぇって妙に包容力があるのに色っぽいから偶にこういうスキンシップをされるとドキがむねむねして心臓が飛び出しそうだ。
……胸がドキドキだな。
いかん!色々と俺もテンパっているぞ!平常心を保たないと……。
そう思っていると,静ねぇは何故かクスクスと笑い出して俺から顔を離し出した。
何かおかしなところでもあったのだろうか?
「静ねぇ?」
「うふふ,ごめんなさいね。シンちゃん,顔が真っ赤になっていたから。」
「へ?」
俺は近くあった鏡を見た。
よく見ると,静ねぇが言った通り顔を赤くしていたようだ。
どうやら気付かないうちに静ねぇのことをかなり意識していたようだ。
「……シンちゃん,1つ聞いていいかな?」
「な,何かな?」
「シンちゃんは,私のことをどう思っているのかな?今回のことも含めて。」
――ドクンッ
その言葉を聞くと,心臓が先ほどよりも跳ね上がった。
静ねぇは今,どういうつもりで言ったんだ?
俺は,静ねぇのことが好きだった。
だが,静ねぇは小学校の時に好きな人がいて未だに諦めていないと聞いている。
そう思うと,今言った言葉の意味が分からず,困惑すると同時に色々な感情が入り混じってしまった。
「ねぇ,シンちゃん。私の好きな人って誰か知っているかな?」
「えっ?」
「……知りたい?」
妙に色っぽく言われて俺はその顔を離せずに見つめてしまった。
静ねぇの好きな人,俺の初恋が終わった原因の人物。
興味がないと言われれば嘘になる。
だが,それを聞いて今更どうすると言うんだ?
確かに初恋は静ねぇかもしれないが,俺の気持ちは今別の子に向いている。
あの恋心はもう,終わってしまったんだ……。
そう思うと,冷静さを取り戻し,いつもと変わらない態度で苦笑した。
「静ねぇ,揶揄っているだろう?」
「……バレちゃった?」
舌を少し出して戯けて言うと,静ねぇは申し訳なさそうに言った。
たまに静ねぇって小悪魔っぽいことをするんだよなぁ。
俺は盛大に溜息を吐いた。
「ごめんなさいね。それじゃ,私は部屋に戻って課題を終らせてくるから。」
「了解。んじゃ,俺は夕食の下準備でもしようかな。」
「何か手伝うことある?」
「う~ん,必要になったら呼ぶからそれまでは課題をしていていいぞ。」
「は~い。いつもありがとうね。」
そう言い残すと,静ねぇは部屋に入って行った。
さてと,気持ちを切り替えてさっさと夕食の準備でもするか。
俺は冷蔵庫の中身を確認して今日の夕食のメニューを考えた。
一方,部屋に戻った静ねぇは扉を閉じると,扉にもたれ掛かり,何か残念そうな顔で先ほどのことを思い出していた。
「シンちゃんは,私には奈都姫ちゃんみたいな感情は向けてくれないんだろうなぁ。もっと早く,気持ちを伝えておくべきだったかなぁ。」
悲しそうな顔で言うと,自分も気持ちを切り替えて課題を始め出したのだった。
******************************
夕食後,俺は自室ではなくリビングにあるソファーに座り込んでいた。
「…………。」
「シン,聞いているの?」
「聞いている。だけどな,1つだけ言っていいか?……落ち着かないのは当たり前だろう!!親父のやつ,よく今まで平然としていたな!!」
何をそんなに騒いでいるのかって?
実は昨日から俺は重要な悩みを抱えていたのだ。
それはお風呂のことだ。
それって定番のお風呂の順番のことだと諸君は思うだろう?
だが,そんな生易しいことではない。
男に取っては天から降って来た幸運と言うだろう。
だが,何度も言うが俺はラッキースケベなイベントなど望んでいない。
「まさか,風呂場の話声が和室に聞こえるとは……。」
「ねぇ,おじさんから何も聞いてないの?」
「まったく聞いてない!あのエロ親父,一言もそんなこと言ってなかったぞ!」
実は俺の寝室となっている和室(元親父の寝室)は風呂場の隣にあるのだ。
そして,何故か風呂場の話声がうっすらだが,聞こえてしまうのだ。
それに気付いたのは昨日の夜であり,帰ってきたら問い詰めてやろうと思った。
「しかし,それを奈都姫が見つけてくれて助かったわ……。」
「本当に偶然よ。それで,どうする?やっぱり,私と部屋を変える?」
「そうした方が良いとは思うんだが,和室で暮らしたいっていう長年の夢で願望はあるんだよなぁ。防音工事をするにも今更するわけにもいかないだろう?」
「シンの場合,厭らしい内容じゃないから物凄く対応に困るわね……。」
という事情があり,今はリビングで奈都姫とテレビを見ている状況なのだ。
現在,お風呂には保衣美と静ねぇが仲良く一緒に入っており,二人がお風呂から上がるまで自室には戻れない状況となっていた。
そして,何が一番問題かと言うと,保衣美と静ねぇは別に気にしないと言っていることが問題なのだ
そっちが問題なくても,こっちが問題なんだよ!!
「俺,あの二人から男として認識されていないのかな……。」
「どうなんだろう?そういえば,梨央も私と一緒にお風呂入ることを嫌がっていたわね。私は恥ずかしくないから大丈夫だって言ってるのに。」
「奈都姫,梨央君はまだ小学2年生だし,弟だぞ……。」
もしかして,あの二人に取って俺は未だに小学生の兄弟みたいな感じと思われているんだろうか?
それはそれで有難いかもしれないが,何とも複雑な気分だ。
「……あれ?お兄ちゃん、自室に居なかったの?」
静ねぇよりも先にお風呂から上がったのか,パジャマ姿でリビングに来ると,冷蔵庫に入っていた麦茶を一気に飲み干した。
義妹よ,飲み方が親父そっくりになってきたぞ……。
「湯加減はどうだった?」
「家のお風呂は広いから最高だよ。それにしても,流石は静ねぇ。久しぶりに見たけど,Fカップは伊達じゃなかったぜ。」
「男性の前で生々しいことを言うんじゃありません!!」
「え~,嬉しいくせに……。」
ブーブーと言いながら義妹は自室に入って行った。
まったく,とんでもない爆弾を落としていったなぁ……。
隣の奈都姫さんはジト目でこちらを睨んでいるではないか。
仕方がない,ここは少し瞑想をして気持ちを落ち着けよう……。
俺は深く息を吸い込むと目を瞑り,軽く瞑想に浸ることにした。
「…………静ねぇ!?何て格好してるの!?」
「う~ん,着替えを持っていくのを忘れちゃって。シンちゃんしかいないから大丈夫かなって。あ,瑞穂ちゃんも見慣れているから大丈夫だよ?」
「そう言う問題じゃないでしょう!!直ぐに着替えてきて!!」
何やら奈都姫がかなりご立腹のようだが,何かあったのだろうか?
俺は瞑想を止めて目を開けて振り向くと,その行動に凄く後悔した。
そこには,バスタオルを1枚だけ巻いたあられもない姿の静ねぇが立っていた。
「なっ!?し,静ねぇ!?」
「シン!?見ちゃ駄目でしょう!!」
「あ,シンちゃん。もしかして,瞑想中だった?邪魔してごめんなさいね。」
怒る奈都姫と違い,静ねぇは怒る処か,自分の姿を問題なさそうにしていた。
むしろ,俺の邪魔をしたことを申し訳なく思ったのか謝罪した。
だが,俺はその姿を見ると居ても立っても居られなくなり急いで立ち上がった。
「本当にごめん!!俺,部屋に戻るから!!」
「あ,シンちゃん……。」
俺は静ねぇの静止を無視して急いで自室に戻ると扉を閉めてその場に崩れ落ちた。
そういえば,前にフレディから静ねぇはあまり羞恥心がないから気を付けろと言われていたのを忘れていた。
明日,どうやって静ねぇに会えばいいんだろう……。
俺は夕方のことも合わせて今日の夜は静ねぇのことで頭がいっぱいになっていた。
******************************
次回:事情聴取とコスプレ騒動 お楽しみに!
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