第7話 噂の広まりはクラスメイトまで
「……。」
「……。」
「……君達,言いたいことがあるなら俺の前に言いにきたらどうだ?」
もう逃げも隠れもするつもりはないんだが,視線だけを向けるのはやめてくれ。
これなら,まだ女子達に何か言い寄られている方がマシであった。
「シ~ン!!聞いたぞ!!嫁を迎えないと駄目な何だろう!!」
「お前はもう少し自重しろ!!……リュウ,このクラスの状況は何だ?」
「見て分かるだろう?お前の婚約の話を聞いて皆,興味津々なんだよ。けど,渚沙の姉御にさっき呼ばれたんだろう?恐ろしくて声を掛けれないんだと。」
ありがとう,姉御!!姉御のお陰で俺は今日,生きていけそうだ!
俺はここにいない姉御のことを思い浮かべて女神の如く崇めた。
……女神は静ねぇかもしれないが。
「でも,それはクラスの連中だけだぞ?他のクラスの中にはお前に声を掛けようと必死になっている連中もいるからな。今は休み時間だから息を潜めているだけかもしれないぞ?昼休みになったら,一気に押し寄せるんじゃないか?」
「やめてくれ,今以上に憂鬱になる……。」
「俺はむしろ羨まし過ぎて涙が出て来るわ!今すぐ,その位置変わってくれ!」
「変われるなら変わりたい……。」
俺は机に頭を突っ伏したまま泣きそうな声でそう言った。
先程から俺と喋っている男子は親友の
「リュウ,まずその性格を何とかしろ。熱すぎるのは兎も角,もう1つの方は大問題だろう。女子達がいい加減,お前をゴミのような目で見ているぞ。」
「それがどうした!?男なら可愛い女の子とイチャイチャしたいのは当たり前だろう!?お前は違うのか,親友よ!?」
「お前の場合はイチャイチャじゃなくてエロエロだろうが!!」
我が悪友の一番の問題点,それは自他ともに認める究極のド変態なのだ。
何せ,女子に告白して最初に言う台詞が一緒にホテルに行かないかい?だ。
俺が女なら間違いなく,こんなやつとは付き合いたくないと思う。
顔はカッコいいのにこの性格はまさに残念イケメンの典型である。
「ところで,フレディは何処行った?休み時間になると何時も居なくなるが?」
「フレならあそこにいるぞ,ほれ。」
リュウが言う方を向くとクラスの扉の外で彼は仁王立ちしていた。
まったく,分からなかったぞ……。
やっぱり,あいつの前世って絶対忍者だろう!?
「あいつ,何しているんだ?」
「教室の番人。ちなみに,後ろの扉には由美ちゃんが潜んでいる。」
うちのクラスの番人2人が見張っているって,俺どんだけ重要人物何だよ!!
俺はただ平穏な学園生活を送りたいだけなんだ!!
心の中で叫ぶと俺はまた机に突っ伏してしまった。
正直,さっさと家に帰りたい……。
「でも,真面目な話どうするんだ?お前,女は絶対作らないだろう?」
「……まあ,な。」
急に真面目なトーンになった悪友を見て,俺も真面目に答えた。
俺の実母が亡くなった事件。
事件現場には居なかったが,リュウは事件に多少関わっているのだ。
いや,言い方がおかしいな。
こいつの幼馴染が事件の当事者なのだ。
そして,その幼馴染は俺の幼馴染でもあり,義妹や静ねぇ同様に俺が男女の関係なく接することができる数少ない女友達であるのだ。
だが,今思うとその彼女の姿も見えなかった。
「リュウ,奈都姫は何処行ったんだ?」
「さあな。天音ちゃんもいないから,一緒に何処かに行っているんだろうな。」
「二人なら銀次郎様の所に行っているわよ。」
「「うわぁっ!?」」
声をした方を振り向くと,そこには黒発ロングの女子生徒が立っており,二人は椅子から転げ落ちそうになった。
フレディもそうだが,彼女も気配を消し過ぎだろう……。
「寝屋川,何時からそこに居たんだ?」
「ついさっきよ。名前を呼ばれた気がしたから。用事がないなら戻るけど?」
「悪い,由美ちゃん。ちょっと,例の件で話していただけだから。」
「そう。」
素っ気ない態度で言うと彼女は先程と同様に教室の扉の方へ向かった。
「寝屋川。」
「?」
「見張り,ありがとうな。凄く助かる。」
「ん。」
それだけ言うと彼女は再びフレディ同様に扉の前に行くと気配を消した。
彼女の名前は
だが,フレディと目が合っただけで言いたいことが分かるのは何故?君達って何も喋らなくても,心が通じ合える関係なのか?
「なあ,寝屋川ってフレディと付き合ってたりしないよな?」
「100%ないな。それ言っちゃうと天音ちゃんと銀の奴だってそうなるだろう?」
「……言われてみればそうだな。あいつ等も付き合っていないしな。」
寧ろ,あれはショタ好きなだけで恋愛感情はないはずだ。
そういえば,今回の一件,銀はどう思っているんだろうか?
スマホにも連絡をしてこない所を見ると興味はなさそうにしているのか,それともあっちのことで忙しいのか……。
「とりあえず,断ってしまったらどうなんだ?俺は事情により女を作ることができないって。流石にお前の事情を聞くと無理に作れとは・・・。」
「1週間以内に3人婚約者を作らないと俺の財産のほぼ全てが没収される。」
「……はぁっ!?」
流石本家。俺よりもインパクトがある顔でありがとう。
それを聞いた瞬間,やはり思うことは同じなのか悪友は珍しく笑いもせずに真顔で尋ねて来た。
「おまっ,マジなのか,それ!?」
「大真面目だ。さっき学園内で色々と言い振らしていた女性の職員らしき人がいただろう?あの人から聞いたら,本当の話だった。」
松本さんが言うには政策に反感を買っている人達に説明するためにこのようなペナルティを作ったらしいのだ。
政策を進言した人もまさか男なら必ず喜ぶような内容を蹴るとは思ってもおらず,ペナルティをきつくすることで反感を買っている人達を納得させようとしたのだ。
「それに見事,お前は的中してしまったと?」
「そういうことだ。しかし,何故,今日はこんな不運なことばかりなんだぁ!!」
「……シン,もしかして悩み事?」
急に声を掛けられて振り向くと,それは俺の幼馴染の声であった。
そこには,珍しいピンク色に近い髪をポニーテールにした女の子が心配そうにこちらの顔を覗きこんでいたのだ。
そんな彼女を見ると,俺は少し微笑んでしまった。
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次回:最後の幼馴染は頑張り屋! お楽しみに!
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