第7話 噂の広まりはクラスメイトまで
「「…………」」
――視線が刺さる……やはり,こういう事態になっていたか……。
「君達,言いたいことがあるなら俺の前に来たらどうだ?」
もう逃げも隠れもするつもりはないんだが,視線だけを向けるのはやめてくれ。
これなら女子達に何か言い寄られている方が遥かにマシであった。
「シ~ン!聞いたぞ!嫁を迎えないと駄目なんだろう?」
「お前はもう少し自重しろ!!……リュウ,このクラスの状況はなんだ?」
「見て分かるだろう?お前の婚約の話を聞いて興味津々なんだけど
ありがとう,姉御!!姉御のお陰で俺は今日,生きていけそうだ!
俺はここにいない姉御のことを思い浮かべて女神の如く崇めた。
どちらかといえば,女神は
「でも,この状況はクラスの連中だけだぞ?他のクラスの中にはお前に声を掛けようと必死になっている連中もいるからな。今は休み時間だから息を潜めているだけで昼休みになったら一気に押し寄せるんじゃないか?」
「やめてくれ!今以上に憂鬱になる!」
「俺はむしろ羨まし過ぎて涙が出て来るわ!今すぐその位置変わってくれ!」
「変われるなら変わりたい……」
俺は机に頭を突っ伏したまま泣きそうな声でそう言った。
先程から俺と喋っている男子は親友の
ほぼ毎日,女子達が声を掛けてくる俺を羨ましく思っており現在の女子への告白は97戦0勝97敗……惨敗である。
何故そこまで女子が彼の告白を断っているかと言うと彼が熱すぎる性格だけではなくある問題を持っているからだ。
「お前はまずその性格を何とかしろ。熱すぎるのはいいがもう1つの方は大問題だろう?いい加減にしないと女子達がお前のことをゴミのような目で見ているぞ」
「それがどうした!?男なら可愛い女の子とイチャイチャしたいのは当たり前だろう!?お前は違うのか,親友よ!?」
「お前の場合はイチャイチャじゃなくてエロエロだろうが!!」
我が悪友の一番の問題点……それは自他ともに認める究極のド変態なのだ。
何せ,女子に告白して最初に言う台詞が一緒にホテルに行かないかい?だ。
俺が女なら間違いなくこんなやつとは付き合いたくないと思う。
顔はカッコいいのにこの性格はまさに残念イケメンの典型である。
「ところで,フレディは何処行った?休み時間になると何時も居なくなってる気がするんだが……」
「フレならあそこにいるぞ」
リュウが言う方を向くとクラスの扉の外で彼は仁王立ちしていた。
――まったく,分からなかったぞ……あいつの前世って絶対忍者だろう!?
「あれは何しているんだ?」
「教室の番人。ちなみに,後ろの扉には
うちのクラスの番人2人が見張っているっ,俺どんだけ重要人物なんだよ!?
俺はただ平穏な学園生活を送りたいだけなのに……。
心の中で叫ぶと俺はまた机に突っ伏してしまった。
正直,さっさと家に帰って引き籠りたい……。
「でも,本当にどうするんだ?女は絶対に作らないだろう?」
「……まあ,な。」
急に真面目なトーンになった悪友を見て俺も真面目に答えた。
俺の実母が亡くなった事件――事件現場には居なかったがリュウも事件に少しは関わっているのだ。
いや,リュウというよりも彼の幼馴染が事件の当事者なのだ。
そして,その幼馴染は俺の幼馴染でもあり義妹や
「そういえば,
「さあな。
「――二人なら
「「うわぁっ!?」」
声をした方を振り向くとそこには黒発ロングの女子生徒が立っており俺達は椅子から転げ落ちそうになった。
フレディもそうだが彼女も気配を消し過ぎだろう……。
「
「ついさっきよ。名前を呼ばれた気がしたから。用事がないなら戻るけど?」
「悪い,
「そう」
素っ気ない態度で言うと彼女は先程と同様に教室の扉の方へ向かった。
「……
「?」
「見張り……ありがとうな。凄く助かる」
「ん」
それだけ言うと彼女は再びフレディ同様に扉の前に行くと気配を消した。
彼女の名前は
だが,彼女が従兄弟ではなく俺と一緒にクラスにいるかというと……従兄弟から自分よりも俺を守るように言われたらしい。
フレディ同様に口数は少ないが,悪い子ではなく,むしろ意思はしっかりしており,異性を超えて非常に頼れる存在であった。
――1つ気になるのが,フレディと目が合っただけで言いたいことが分かるらしく君達って何も喋らなくても心が通じ合える関係なのかと疑っていたりする。
「なあ,
「100%ないな。それ言っちゃうと
「言われてみればそうだな。あいつ等も付き合っていないしな」
寧ろ,あれはロリショタ好きなだけで恋愛感情はないはずだ。
そういえば,今回の一件を
スマホにも連絡をしてこない所を見ると興味はなさそうにしているのか,それともあっちのことで何か美味しい話があって忙しいのか……。
「とりあえず,断ってしまったらどうなんだ?俺は事情により女を作ることができないって。流石にお前の事情を聞くと無理に作れとは……」
「1週間以内に3人婚約者を作らないと俺の財産のほぼ全てが没収される」
「――はぁっ!?」
流石本家……俺よりもインパクトがある顔でありがとう。
それを聞いた瞬間,やはり思うことは同じなのか悪友は珍しく笑いもせずに真顔で尋ねて来た。
「おまっ!?マジなのかそれ!?」
「大真面目だ。さっき学園内で色々と言い振らしていた女性の職員らしき人がいただろう?あの人から聞いたら本当の話だった」
政策を進言した人もまさか男なら必ず喜ぶような内容を蹴るとは思ってもおらず,ペナルティをきつくすることで反感を買っている人達を納得させようとしたのだ。
「それに見事,お前は的中してしまったと?」
「そういうことだ。しかし,何で今日はこんな不運なことばかりなんだぁ!!」
「……シン,もしかして悩み事?」
急に声を掛けられて振り向くとそれは俺の幼馴染の声であった。
そこには珍しいピンク色に近い髪をポニーテールにした女の子が心配そうにこちらの顔を覗きこんでおり,そんな彼女を見ると俺は少し微笑んでしまった。
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次回:最後の幼馴染は頑張り屋! お楽しみに!
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