第3話 義妹の友達は俺の可愛い後輩
翌日,親父から聞いた憂鬱な話から一夜明けて俺は朝の瞑想タイムを取っていた。
本日も色々と忙しくなるだろう。
無駄な思考はできるだけ取り除き,神経を集中させて心を落ち着かせる。
焦りは余計な失敗を招く。自分に毎日言い聞かせていることだ。
そして,数十分の瞑想が終わると,息を大きく吐き,目を開けると鏡の前にはいつもの自分が映っていた。
「さて,今日も頑張って行こうか!」
誰もいない部屋でそう言うと俺は通学用の鞄を持ち,部屋を後にした。
「保衣美,弁当は忘れてないだろうな?」
「ちゃんと持ってますよ~!お兄ちゃんのハンバーグ美味しいもん!」
昨日のおかずの残りであるが,嬉しそうにスキップしそうな勢いで満面の笑顔を浮かべた義妹は俺を見た。
本当に可愛いな,チクショウ!
皆の前では否定しているが,親友のことを馬鹿にできないぐらい俺もかなりのシスコンだと思う。
「風間君!おはよう~。」
「やあ,おはよう。」
「おっす,風間!今日も妹ちゃんと登校か?羨ましいねぇ~。」
「そんな目で見ても妹はやらんぞ!」
「お前は関と同じかよ!?」
いつもの通学路を通ると知り合い達が声を掛けてきた。
女子達は普通に挨拶するが,男子どもの目当ては我が愛しの義妹だと分かっているから睨みを利かせている。
まあ,あいつ等も本気で義妹に手を出そうとは考えてはいないはずだが……。
「お兄ちゃん,そんなに睨まなくてもいいと思うよ?先輩,おはようございます!」
「保衣美ちゃんは本当に可愛いなぁ。うちの妹に欲しいぐらいだよ。……って,風間!?冗談だ冗談!!マジでその目はやめろ!!」
「次、変な目で義妹を見て見ろ?コンクリートで固めて海に沈めるぞ?」
知り合いに怒気を放ちながら顔を近付けて笑みを浮かべると俺の知り合いに申し訳なそうに保衣美は乾いた声で笑っていた。
「ほいみん,おはよう~。」
「あ,白ちゃん!おはよう~!」
声をした方を振り向くと雪のような白い肌に水色に近い銀色の髪を揺らした小柄な女の子が挨拶をしてきた。
見た感じ大人しそうにしているが,義妹を見るとハイタッチするほど元気が良く,その二人を見ると周りの学生達は微笑ましく二人を見詰めた。
「あれが1年生の二大美少女かぁ。やっぱり可愛いなぁ……。」
「二人とも本当に可愛いよねぇ。それに素直だし。私の妹っていつも文句ばかり言うから,あんな素直な妹が欲しかったなぁ。」
「あの二人ってまだ彼氏いなかったよな?それならまだ俺にもチャンスが……。」
そうだろう,そうだろう。
うちの義妹は性格もいいし本当にいい子なんだよ。
……あと、最後に喋った男子。
昼休み,生徒会室に呼んで親友と一緒に説教だから覚悟しとけよ?
「先輩,おはようございます。」
「おはよう,真白ちゃん。今日も可愛いね。」
「ふぇっ?!あ,ありがとうございましゅ……。」
俺が可愛いと言うと彼女は照れて俯いてしまった。
やはり,可愛いは正義である。
「ぶ~,お兄ちゃん,私は?」
「何故,言う必要がある?お前が可愛いのは当たり前に決まっているだろう?」
「えへへ,ありがとう♪ほら,白ちゃん!先に行こう!」
彼女の手を握り二人で先に走り出すと俺はその後をゆっくりと追いかけて行った。
彼女は
だが,二人の関係はそれだけではなかった。
「(男子達よ,知っているか?彼女は義理の兄である拓人の恋人でもあるんだぞ?どんなに足掻いてもその可愛い子はお前達は手に入らないからな。)」
実は親友の拓人と彼女の両親は俺の母親と保衣美の父親が亡くなった事件で父親も母親も亡くしているのだ。
俺や義妹は片親だけは無事であったが,二人はその事件で天涯孤独になったのだ。
幸いにも同じように事件で家族を失ったある人物に養子として引き取られることになり,今はその人と家族3人で幸せに暮らしているそうだ。
「(あの事件で失ったものは多かったが,得たものも多かった。だが,あの事件の傷は誰も未だに癒えてはいない。俺も含めて……。)」
一瞬,昔の事件を思い出して暗い顔をしてしまった。
……いかんな。
親父に婚約の話をされたことで昔の古傷を思い出しせいか,色々と考えてしまう。
「(そういえば,1週間以内に婚約者を3人決めないと駄目なんだよな。まったく,御上もとんでもないことを言ってきたもんだ。)」
頭をかき,珍しく溜息を吐いていると前を歩いていた二人が声を掛けた。
「お兄ちゃ~ん,置いて行くよ~。」
「先輩,大丈夫ですか~?」
「悪い悪い。今,行く!」
可愛い義妹と可愛い後輩に呼ばれて先程のことは一旦,頭の隅に追いやった。
教室に付いたら昨日のことを彼女や友人達に相談をしてみるか。
「……ん?」
「お兄ちゃん、あれなんだと思う?」
「正門前に人がいっぱい集まってますね?特に女性の方が?」
その光景を見て俺は嫌な予感がした。
何故か知らないが,こういった時の俺の第六感は良く当たるのだ。
案の定,正門前にいた女子生徒達は俺の姿を見ると獲物を見付けたハイエナのように群がって来た。
「あ~!!風間君よ!!」
「風間副会長,お,おはようございます!!」
「風間君,今日ってお昼暇かな?良ければ一緒にお昼何てどう?」
この状況は一体なんだ?急に俺にモテ期でもきたか?
……違うな。
俺が女子達から挨拶されることやお昼に誘わることは良くあることだ。
だが,彼女達の目がいつもと違い,血走っていたのだ。
これは一体……。
「だ~れだ?」
「!?」
目の前が暗くなり,後ろからむにゅっと何か柔らかいものが当たる感触がした。
今の声はもしや?
俺がその人の名前を言う前に目の前の視界が開けて後ろを振り向くとそこには茶髪にパーマをかけた見目震わしい女性が立っていた。
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次回:もう一人の幼馴染は学園のお姉様 お楽しみに!
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