第2話 愛しのマイシスターは義理である
「お兄ちゃん,遅いよ~!また,瞑想してたの?」
リビングに置かれているソファーで寝転びながら漫画を読んでいた金髪の女の子がこちらを見ると頬を膨らませて唸っていた。
「電話だ電話。親父と電話していたんだよ。」
「えっ!?ダディと!?いつ帰って来るって!?」
「それは聞いていない。」
「ぶ~!」
頬を膨らませて聞いといてよと怒られてしまった。
この子は本当に親父のことが好きだなと肩を竦めてしまった。
まあ,親父も親父で義妹を溺愛しているが……。
「お兄ちゃん,今日の晩御飯って何するの?」
「そうだなぁ。ハンバーグでもするか。保衣美,どういったのがいい?」
冷蔵庫の中身を見てそう言うと,義妹は立ち上がった。
「私はお肉100%が希望なのですよ,お兄ちゃん!」
右手をシュビッと上げて不敵な笑みを浮かべる義妹を見ると,俺は満面の笑みで任せておけと言った。
このテンションが高い義妹は
「出来るまで自由にしていていいぞ。」
「は~い!それじゃ,漫画の続きと続き……。」
そう言って再びソファーにダイブして寝転がると漫画の続きを読み始めた。
だが,その弾みでスカートが若干捲れてしまい,チラッと普段見えてはいけない中の布地が見えてしまった。
「……愛しのマイシスターよ、お兄ちゃんが一言,言いたいことがある。」
「どうしたの改まって?何か変な物でも食べた?」
「親父じゃないしありえん!……紐はまだ早くないか?」
一瞬,キョトンとした顔でこちらを見ると顔を赤くして抗議する処か何故かニヤニヤとした顔でソファーから立ち上がった。
すると,スカートの片方を摘まんで少しだけ紐の部分をチラリと見せ付けて来た。
「勃〇した?」
「しないわ!!あと,スカートを摘まむのはやめなさい。お兄ちゃん,はしたないのは許しませんわよ。」
「は~い。」
何故か残念そうにスカートを摘まむのをやめると再びソファーに寝転がった。
まったく,もう高校生にもなるのに何てはしたいことを平気で出来るのかしら。
……何か俺も変な口調になってるな?
うん,とりあえずハンバーグを作ろう。
「……ねぇ,お兄ちゃん。」
ハンバーグを捏ねていると漫画を読んでいた妹が急に声を掛けて来た。
先程とは違い,至って真面目な声でだ。
「ダディって何の用事だったの?」
「夕食の時に話すよ。お前にも相談したいことだからな。」
「そっか。……お父さんとお母さん,大丈夫だよね?」
今度は萎れた声で心配そうにこちらを見ている義妹に大丈夫だと笑顔で微笑んだ。
その顔を見ると彼女も微笑み,再び漫画に没頭し出した。
「(あれだけテンション高かったけど,やっぱり内心では二人がいないのが寂しいんだろうな。いや,寂しいというよりも居なくならないか心配なんだろう……。)」
何せ,俺と義妹はある事件で本当の母親と父親を亡くしているのだ。
そして,義妹は本当の父親を亡くした時,毎晩のように大泣きしていたのだ。
そんな義妹を慰めていたのが,俺だ。
俺も母親を亡くして泣いていたが,義妹を見ると泣いてはいられなかった。
あれ以来,義妹は俺に甘えている。
まあ,俺自身も義妹のことを甘やかしているほどのシスコンではあるが……。
「(だが,解せぬ。何故,義妹はあの強面の親父にあんなに懐いているんだ?言いたくないが,俺以上に懐いているだろう!?)」
ハンバーグをフライパンに乗せながら心の中で親父に文句を言い付けたのだった。
***************
「えっ!?婚約!?」
夕食を取りながら先ほど親父から聞いた話を保衣美に伝えた。
「ああ。1週間以内に婚約者を3人選ばないと俺の財産が没収されるらしい。」
「うわぁ……。」
保衣美も先ほどの俺同様に意味を理解したのか,あり得ないという表情をした。
十中八九,俺の財産目当てだよな?学生にまでそう思われるって相当だぞ?
「お兄ちゃんってお金結構持ってるからね。学校の皆も羨ましがっているし。」
「そのお金でいつも課金しているのは何処の誰だ?」
「はい,私です!いつもありがとう,お兄ちゃん!大好き♡」
「課金目当てに聞こえるぞ!」
「チッ,ばれたか。」
ワザと舌打ちした義妹を見て俺は苦笑した。
こんなことを言っているが,保衣美はお金よりも俺のことを優先しており,俺が出したくないなら出さなくていいとはっきりと言っていたりもする。
だが,俺自身,使い道がほぼないため,彼女が喜んでくれるならガチャだろうと惜しみなく使うつもりだ。
流石に数十万溶かした時は顔を引き攣らせたが……。
「でも,真面目な話で言うと学校ではその話しないほうがいいんじゃないかな?
「だから困っている。保衣美も知っているだろう?俺が恋人を作りたくない理由を。もう,あんな事件は懲り懲りだ……。」
「お兄ちゃん……。」
事件の当事者でもある保衣美もそのことを聞くと何も言えなくなってしまった。
「悪いな,しんみりさせてしまって。」
「ううん,大丈夫だよ。それにしても,お兄ちゃんが婚約かぁ。しかも,3人。」
「その3人ってのが痛い。只でさえ,1人いるだけでも憂鬱になりそうなのにどうしたらいいんだろう……。」
「……だったら,私がなってあげよっか?」
「えっ?」
目の前の義妹にそんなことを言われて一瞬,キョトンとしてしまったが,直ぐにいつもの冗談だと考えた。
そう思うと,俺は保衣美の頭に軽くチョップを入れた。
「イタッ!?」
「冗談を言うのはほどほどにしなさい。」
「冗談じゃないのに……。」
何か言ったか?と聞くと何でもないよ~と返されてしまった。
まったく,お兄ちゃんを揶揄うのにも対外にして欲しいものだ。
「明日,奈都姫達にも相談してみるよ。」
「私も明日,白ちゃんに相談してみるね。……白ちゃんと婚約とか?」
「そうなるとあいつと冗談抜きで殺し合いになるぞ?」
「先輩って白ちゃん一筋だもんねぇ。」
そう言って二人して笑うと冷めないうちに作ったハンバーグを食べた。
だが,この時俺達はまったくといって思いもしなかった。
まさか,俺の婚約の話が翌日には学園の全校生徒に広まっていたことを……。
*******************************
次回:義妹の友達は俺の可愛い後輩 お楽しみに!
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