第1章 三人の幼馴染と婚約騒動

第1話 婚約の話は突然に!?


『新之助,落ち着いてよく聞いてくれ。お前に婚約者を選ばないといけなくなった……。』

「はぁっ!?」


 電話越しに行き成り親父からとんでもないことを言われてしまった。


 俺に婚約者?突然どうしてだ?


 未だに頭の中では先ほどから謎の生物が何度もはぁっ!?と疑問を浮かべながら困惑していた。


 それは今の俺自身もそうだ。


『……お前も知っているだろう?政府が出したクソみたいな政策を。』


 親父にそう言われて思い出した。


 近年,我が国では少子高齢化により国内の経済状況が著しく下がる一方であった。


 まあ,それ以外にも理由は多くあるが,若い働き手が居なくなることが痛いことには変わりはないのだ。


 そこで,政府は状況を打開するためにあるとんでもない政策を打ち出したのだ。


「婚姻制度の導入の話,か。」

『そうだ。まったく,未だに爺どもは亭主関白のつもりでいるのか。女性を蔑ろにしている政策もいい加減にしろと言いたいところだ。』


 親父がそう言うと俺は笑うしかなかった。


――婚姻制度


 名前からして将来の結婚相手を見繕う政策に聞こえるが,その中身はある一定の財産を持つ者は複数の女性を妻に娶らなくてはいけないというとんでもない政策。


 しかも,この問題は極一部の男性だけに有利な政策なだけで合って,多くの人達から大反感を買ってしまっているのだ。


「何でこんな無謀な政策を打ち出したんだ?」

『そんなのは知らん!理由を聞きたければ,御上に直接聞きに行け!』


 親父も相当ご立腹なのか自暴自棄になり掛けていた。


 まあ,一介の高校生がそんなことができるわけでもなく,関わりたくないのでそれに関しては無視を決め込んだ。


「事情は分かった。でもな,親父。俺の状況は分かっているだろう?俺は女性と付き合うつもりは……。」

『ちなみに,1週間以内に選ばないと政府に財産のほとんどを没収される。俺だけのじゃなくておまえの分も,な……。』

「はぁっ!?」


 流石の俺もそのことを聞くと卒倒した。


 御上は何を考えているんだ?


 もしかして,婚姻制度はおまけであって本命はそっちじゃないだろうな?


「親父,その話はマジな話か?」

『嘘を付いてどうする?俺もその話は聞いた時はふざけているのかと電話してきた奴に怒鳴り散らしたぐらいだぞ?その電話の子を怯えさせてしまったのは申し訳ないが、変わりに管理職らしき職員が出て来てな。本当の話らしい。』


 話から察するに,最初に出て来たのは若い女性の職員だったのだろう。


 可哀そうに……。


 親父は滅多に怒らないが,怒ると鬼のように怖くなり,義妹も一度,その顔を見て泣いてしまったことがあったのだ。


 以来,親父もできるだけ怒らないようにしてきたんだが……。


「俺の財産が没収かぁ。痛いな……。」

『学生には過ぎたる額かも知れないが,将来を考えて先にお前に渡していたのが仇に

 なってしまったな。おそらく,俺の分はついでだろう。』

「だよなぁ……。」


 実は親父はちょっとした訳ありで多数の不動産を所有しており,その不動産収入で月にかなりの額が懐に入ってくるのだ。


 そして,親父は将来のことを見越して先に自分の不動産の一部を俺に譲ってくれていたのだ。


 それ故に,俺自身も月に数百万ぐらいの額が懐に入るようになっていた。


「まあ,それについてはおいおい考えるとしてだ。俺は一体何人と婚約しないといけないんだ?」

『……3人だ。』

「3人!?2人じゃないのか!?」

『当たり前だろう!?将来のことを考えろ!!俺が居なくなったら俺の分もお前が相続するんだぞ!?実際は5,6人だった所を3人までに減らしたんだぞ!!』


 親父の言葉を聞き,頭が痛くなった。


 親父も俺の状況を知っているためか,息子に婚約者は無理だと何度も管理職の人に言ったらしいが,減らしても3人が限界だったらしい。


 本当にどうしたものか……。


「期限は1週間なんだな?それまでにこっちで何とかする。」

『頼んだぞ,息子よ……。』


 親父との電話を切り,俺はスマホをベッドに放り投げた。


 そして,ゆっくりと息を吐くと床に座り込み,座禅を組んだ。


「(落ち着け,まずは瞑想だ。それから考えよう。)」


 全身の力を抜き,何も考えずにただひたすら瞑想を続けようとした。


 だが……。


「って,考えられるかぁぁぁ!!というか,何でこんなことになった!?」


 流石の俺も先ほどの話が忘れられず,誰もいない部屋で怒鳴ってしまった。


「お兄ちゃん,うるさいよ!!それから,ご飯まだ~!?」


 そういえば,義妹に呼ばれていることを思い出して声をした方を向いた。


 仕方がない。


 夕食の時にでも義妹に話をして何かいい案がないか一緒に考えてもらおう。


「もう,恋愛は懲り懲りなんだよな。トホホ……。」



 ******************************



 次回:愛しのマイシスターは義理である お楽しみに!


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