瞑想が趣味な俺は幼馴染たちとの関係に迷走する
不動さん
序章
プロローグ
瞑想,精神統一とでも言うべきだろうか?
全ての
この時間こそ,忙しい日々を送っている自分に取って一番安らぐ時間であった。
俺,
一言で言えば俺は天才,神童と呼ばれていた。
幼い時から様々な知識を身に着け,多くの賞を取り,大人達からも期待されて,将来は約束されたようなものであった。
だが,そんな人生は小学生のある時期を境に終わってしまった。
……いや,俺自身が終わらせたのだ。
あの日,悲惨な事件によって実の母が亡くなった日から……。
「お兄ちゃ~ん,いつまで部屋に籠っているの~。ご飯早く~。」
リビングから可愛らしい女の子の声が聞えて来て目を開けた。
やれやれ,真面に瞑想をする時間すらもらえないものなのか?
そう思っていたが,あの子は自分に取って大切な家族だ。
餓死させるわけには行かない。
そう思うと彼は瞑想をやめてゆっくりと立ち上がり,義妹がいるリビングまで向かおうとした。
――プルルルルルル
リビングへ向かおうとした瞬間,スマホが鳴り出した。こんな時間に誰だろうか?
既に時間は夕刻。
会長からの至急の電話にしては遅すぎるし,友人からの電話なら学園で先に連絡をするか,もっと早い段階で電話を掛けてくるはずだ。
だが,着信を見るとそれは意外な人物だった。
「親父?」
現在,私用であちこちを飛び回っている父から連絡が来ていたのだ。
何事かと思い,電話を取ると渋い男性の声が聞えてきた。
『新之助,久しぶりだな。元気にしているか?』
「どうしたんだ,親父?保奈美さんに愛想でも尽かされたか?」
『……。』
えっ?反応を返さないところを見ると本当なのか?
まさかの家族崩壊?俺,義妹に何て説明すればいいんだ!?
「親父,何があったか知らないが,保奈美さんにちゃんと謝れば……。」
『彼女とは何も問題ない。ただ,少し意見が衝突しただけだ。』
「……珍しいな。親父と保奈美さんが喧嘩する何て初めてじゃないのか?」
中学の頃に親父が再婚した相手,保奈美さんは絶世の美女であった。
正直,あの強面の親父が良く捕まえることできたなと親父の知り合いは声を揃えて言ったものだ。
だが,二人が結婚した理由,それは俺の母が亡くなった経緯に繋がる。何せ,保奈美さんもその時に自分の夫を亡くしていたのだ。
「まあ,意見が衝突しただけなら直ぐに仲直りはできるか。頼むから離婚だけはしないでくれよ?
『当たり前だ!保衣美ちゃんを泣かせるわけないだろう!』
「親父って本当に保衣美には親バカだよな。それで,わざわざ国際電話で掛けてきてまで何用だ?」
『……。』
息子にそう言われた瞬間,親父はまた黙り込んでしまった。
本当にどうした?
いつもなら,自分の意見をはっきり言う親父が何も言わないなんて……。
まさか,外国にいる間に変な物でも食べて頭がおかしくなったか?
『新之助,お前に,大事な話がある。』
急に重い口調になり,今度は何事かと思った。
ただ,今度の話し方は真面目な話だと思い,自分は顔を強張らせた。
「何だよ,今度は急に畏まって?本当に変なもの食べて当たったのか?」
『……。』
「親父?」
『新之助,落ち着いてよく聞いてくれ。お前に婚約者を選ばないといけなくなった……。』
親父のその一言を聞くと,俺の頭の中は真っ白になった。
だが,その真っ白な世界に,見たことのある生き物の顔が何故か浮かんできた。
それは友人に最近教えてもらった動画でよく見る生き物であった。まさか,その動物と同じ表情をするとは,俺はまったく思いも寄らなかった。
「はぁっ!?」
この言葉と共に風間新之助の周りで起こる婚約騒動は始まったのだった。
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