#41

「おはよう」

「お、おはよう、ございます…」

「どうした?」

「あ、あの、あっ…」


昨日の出来事が、頭から離れない。

アンジュはついに、ノラと身体を一つにした。


「体は辛くないか?」

「は、はい…」

「よかった。アンジュの体に負担がかからないか心配で心配で…」


アンジュの怪我が大したものではなかったとはいえ、ノラはアンジュを傷つけないよう、精一杯優しくしたつもりだった。

それに、アンジュは性行為など初めてだったし、ノラも男相手とは初めてだった。

お互いギクシャクしながらも上手くいったのは、ノラの優しさと気遣いがあってこそだろう。


「あ、あの、俺は、大丈夫です!」

「そうか、良かった。なら、リマの見舞いにでもいくか。俺たちの怪我の様子も見てもらいたいしな」

「はい!」


ベッドを整え、2人で風呂に入り、着替えと髪の毛を整え、リマのいる城に向かった。

治療室を開けると、痛々しく包帯を巻いたリマがいた。


「リマさん!」

「アンジュ様!」

「リマさん、お体は大丈夫ですか?」

「ええ、昨日よりも随分と良くなりました。アンジュ様は?」

「私は平気です!」


リマと話をしていると、治療室にチダリがやってきた。


「あら、おふたりとも、もう来られていたのですか?」

「はい」

「リマの傷はかなり深刻なものでしたが、昨日の治療でだいぶとよくなってきています。もう少し様子を見て大丈夫そうでしたらお屋敷に戻っていただいても結構です。ですが、力仕事は傷口が開く可能性がありますので、おやめくださいね。それとおふたりの怪我を見せてもらえますか?」


チダリは魔導を使った治療を行う、リーヴェ王国の医療班のトップである。

目の下にくまができているあたり、一昨日から不眠不休で治療に専念してくれたのだろう。

アンジュとノラは別室に移動し、怪我の程度を見てもらうことになった。


「痛くはありませんか?」

「大丈夫です」


叩かれた頬と蹴られた腹部を、チダリがそっと手を当てる。


「ジワジワとした感触などもありませんか?」

「今は…」

「わかりました。何か異変があったらすぐに来てくださいね」

「ありがとうございます」


続いて、隣にいるノラも診察を受ける。


「ノラ王子、腕の痛みは」

「まだ少し痛みます。まるで何かに侵食されているような、ジワジワとした痛みが広がっているというか」

「やはり…」


どういうことかと尋ねると、あの男と対峙した門兵にも、似たような症状が現れているらしい。

訓練で魔導の攻撃を受けた時とは違う痛みだと感じてはいたが、やはりあの力は普通のものではなかったのかと、この腕の痛みに納得がいった。

だとすれば、あれは魔法だったのだろうか、それともまた別の何かなのだろうか。


「例の力については、イマル王子が調査されています。わかり次第ご報告頂けるとの事です」

「ありがとうございます」

「それと……少し言い難いのですが…」

「何でしょう?」

「アンジュ様の首から、キスマークが見えていますわ。髪を降ろした方が良いかと…」

「……っ!それは先に言ってください!」


ノラは慌ててアンジュの元に向かい、すぐに髪の毛を降ろすように言った。

もちろんアンジュはなんの事か分からず、頭に?マークを浮かべながらも、一つに括っていた髪の毛を降ろしてくれた。

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