#28

*描写あり



「テレサ王国にいるときは、とっても、しんどかったです。怒られて、たくさん叩かれて。だけど、リーヴェ王国に来てからは、そんなことなくて。すごく楽しくて。だけど、俺は、男、で…」

「アンジュ…」

「アンジュ、苦しかったわよね。でももう大丈夫だから」


アンナ姉様がアンジュを抱きしめる。


「ううっ…」

「貴方はもう一人じゃないわ。たくさん楽しい思い出を作りましょう。辛かったことなんて忘れる位に、ね?」

「ありがとう、ございます…っ!」



***



「すぅ、すぅ…」

「アンジュ、よく眠ってるわね」

「沢山泣いたからでしょう。昨日もあの後は寝ているのに泣いていましたし」

「そう…。それにしてもテレサ王国は一体どうなっているの。アンジュはあの国の子供よね?」


そう、アンジュは言わずもがなテレサ王国の子供、つまり王子に当たる。

ただ魔法が使えないだけで、地下に監禁されるものなのだろうか。

それともあの国では、魔法が使えないものは皆、用無しなのか。

あの国の行動が全く分からない。


「ごめんなさい、お父様…」

「アンジュ」


またテレサ王国での夢を見ているのだろう。

うなされるアンジュの手を握る。


「大丈夫だ」

「ひっく、う…ごめんなさい…」

「……いつもこうなの?」

「まぁ、そうですね。しばらくしたら落ち着くと思います。アンジュ、大丈夫だから」

「……んぅ…」


姉様の言う通り、あの国での事など忘れられるくらい、楽しい思い出を作ってやりたい。

俺は、君が笑ってくれるならば、何だってする。


「もうこんな時間…、私は城に戻るわね」


時計は20時を指していた。


「はい、アンナ姉様。ありがとうございました」

「私は別に何もしてないわよ。アンジュの話は秘密にしておくから、安心して」

「ありがとうございます」

「アンジュ、またお買い物にでも行きましょうね」


アンナ姉様がアンジュのおでこにキスを落とす。


「それじゃあね」

「はい、お気をつけて」

「アンナ様、お見送りいたします」

「リマ、ありがとう」


アンナ姉様とリマが部屋から出ていく。


「アンジュ…」

「ん……」


君を傷つけるものは、俺が許さない。

例えそれが、父上や兄上であったとしても。

だから君はどうか、俺の横で笑っていてくれ。

未だ眠りにつくアンジュ唇にキスをして、俺は風呂に入るため部屋を後にした。



***



「………っ!」


王子に、キスされちゃった…!

アンナ様におでこにキスされた時に起きたのに、なんだか起きましたって言えなくて、そしたら。

ちゃんと起きたって言えばよかった!


「うぅ…」


下半身を見ると、俺の、お、おちんちん、が、ちょっとだけぴくってしてた。

パジャマに着替えてて、よかった。


「おうじ…、ん…」


ごめんなさい、ノラ王子。

お布団は汚さない、から。


「王子、すき…」


だから、こんなことをする俺を、ゆるしてください。

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