#24
翌日。
「国王様」
「なんだ」
「ノラ様と奥様のアンジュ様がお見えです」
「……」
「国王様?」
「客間に通しておけ」
「かしこまりました」
昨日、アンジュが男だと言う事が判明し、その事実にジェイクは頭を悩ませていた。
(アンジュの体調が良くなさそうだった為、ノラには待機するように言ったはずだが、ここに来ていると言うことは、体調の方は少し良くなったのだろうか。)
アンジュは何と言うのだろうか。
弁明か、否定か、それとも――。
「失礼いたします」
ジェイクの考えは、ノラの一声で掻き消えた。
***
「アンジュ、大丈夫か」
「はい」
自分が男だと分かってしまったことを謝りたい、とノラにわがままを言い、アンジュはジェイクに会わせて貰うことになった。
(何を言えばいいかなんて、なにも決めてないけど、だけど、謝らなくちゃ。)
殺されてしまうのだろうか、それともテレサ王国にいた時のように地下へ隔離されるのだろうか、はたまた、国を追い出されるのか。
そういった考えが、アンジュの頭の中を巡る。
「どうぞ」
メイドが客間を開ける。
「父上、失礼いたします」
「ノラ、アンジュ…」
ノラの横を歩き、ジェイクの元に到着するが、ジェイクの顔が見れない。
(父上の目が、顔が、怖い。嫌いだって、嘘つきだって言われるのかな。)
「アンジュ」
「ノラ王子…」
(大丈夫。ノラ王子が、俺の手を握ってくれるから、だから大丈夫。)
そう自分に言い聞かせて、震える唇で、言葉を発する。
「父上…
「……」
「あ、の…」
「ノラ」
「はい」
「私はお前に待機を命じたはずだが?」
ジェイクはアンジュではなく、ノラに話を振る。
(俺のことなんて見たくないんだ。だって、俺は、男だから、うそをついて、この国にいるから、だから。)
アンジュは泣きそうになるのを堪える。
「アンジュが父上にお会いしたいと言ったんです」
「まことか?」
「は、い…」
「なら単刀直入に聞こう。君が男性である事は間違いないな?」
「……はい…」
認めてしまっては、もう逃げられない。
死を覚悟し、拳を握る。
「そうか…」
「申し訳、ございません」
「なぜ君の父は君をリーヴェに寄越した?」
「わかり、ません…」
アンジュの父は、アンジュをリーヴェ王国に寄越した理由を、アンジュには一切語らなかった。
アンジュは何故、女として、ここにいるのかなど、何も知らない。
「そうか。それは直接国王に聞かねばわからぬな」
「…っ、それ、は」
(お父様に、俺が男だって気づかれたことを、言われてしまうってこと?でも、そうしたら、俺は。)
殺される。
「アンジュ、大丈夫だ。俺がいる」
「ノラ王子…」
恐怖で顔を青ざめるアンジュに気づいたノラが、アンジュの手を握る。
「その前にだな。実は来月、と言っても2週間後なのだが、アンジュのお披露目会をする予定があってな…」
「えっ」
「なんですかそれは!そんな話…」
「まさか君が男性であるとは知らず…、すまない。食事会の時に伝えようと思っていたのだが…」
お披露目会、それはリーヴェの王族の祝い事がある際に、国民へ周知させ、祝う行事である。
「国民、にも…」
「そうなるな」
「父上!待ってください!そんなのあまりにも…」
「ノラ、お前はこの国の王子だぞ。それを忘れるな。もうアンジュが来て2ヶ月ほど経つのに、未だに王子の妻が顔を出さないなど有り得んだろう」
「それは、そうですが…」
「アンジュの体調を考慮し先延ばしにしていたが、最近の様子を見て、もう大丈夫だろうと判断したのだが…」
アンジュは目の前が真っ暗になった。
(このお城にいるみんなだけじゃなくて、国のみんなにも、俺が男だって。)
国民がどんな目で自分を見るのかなど、容易に想像出来る。
自分だけならいい。
しかし、夫であるノラや、ジェイクたち王族も怪奇や怪訝の目で見られるのだ。
「王子…俺…」
「アンジュ…」
(こわい。だけど、がんばるってきめたから。)
ノラの手を握り返す。
「王子、俺、頑張ります」
「アンジュ、本気で言ってるのか」
「……俺には、王子が、います。それに、リマさんも…」
「アンジュ、君がなんと言われるかは分からんぞ。それでも良いのか?」
ジェイクはアンジュの事を気にかけている。
ジェイク自身このような経験はないが、息子であるノラの妻であり、家族になったのだ。
そんなアンジュが、何を言われるか分からないのが、心配でたまらないのだ。
「怖いです、でも…」
「アンジュ…」
ノラがいる。
それだけでアンジュの不安は、少し和らぐ。
「王子、俺、こわいけど、頑張ります」
(俺は、もう泣かない。なにも出来ないけど、それでも、ノラ王子の横にいたいから。)
「では明日、城内の人間全員に君が男性である、という事実は公表する。スケジュールをずらすことも許さない。アンジュ、君は体調管理を徹底しなさい。自分で決めたことだ、大変だとは思うが私は父として、国王として君を好奇の目から守る。そして君をノラの妻として歓迎する、その事実は変わりない。わかったな?」
「ありがとう、ございます…!」
「ノラ、しっかりアンジュを支えてやりなさい」
「は。かしこまりました。アンジュ、行こう」
「はい。父上、ありがとうございます」
***
「しかし困ったものだな。ラウル、君ならどうしたかな」
もういなくなってしまった君に問うても、答えは返ってこない。
写真と絵画でしか君に触れられないのが悔やまれる。
君はきっとアンジュが何者でも気に入るだろう。
私もそして我が子達も、きっとアンジュを受け入れる。
だが、大臣たちや国民はどう思うか。
それに、アンジュを女だと偽って嫁に持ってきたテレサ王国に、どう落とし前をつけさせようか。
「問題は山積みだな」
アンジュ、これで心が折れるようではやっていけないぞ。
ノラ、リマ。
アンジュをしっかり支えてやれ。
神よ、どうかアンジュを救ってやってくれ。
ジェイクはただ神に祈るしかなかった。
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