#13
『アンジュ、これからは気を遣わなくていい。もし君が嫌でなければ、一緒の部屋で眠らないか?』
ノラ王子からどうだ?と聞かれて、嬉しかった。
嫌だなんてとんでもない。
その話をリマさんにすると、リマさんはすごく楽しそうにベッドを新調しましょう!と言っていたので、ノラ王子と3人でカタログ(というものだと教えてもらった)を見て選んだものが、次の日に届き、部屋の移動も済ませた頃。
「アンジュ、君に話がある」
「何でしょうか…?」
ノラ王子が少し怖い顔をしていた。
俺、何か悪いことでもしたのかな。
「ああ、いや…、怒るとかそういうのではなくて…。アンジュは以前、君の父上に殺されると言っていただろう」
「……はい」
「俺はあまりそういうのに詳しくはないが、イマル兄様が魔導にとても詳しくてな。相談したところ、呪い(まじない)の類ではないかと言っているんだ」
「呪い…?」
「アンジュ様、呪いというのはですね、掛ける側と掛けられる側がございます。例えば私がアンジュ様へ、というように。それは魔法や魔導、またはそれ以外の方法で行われます」
リマさんがその呪いというものについて話してくれる。
「呪いとは、そういったモノを使って相手を病気にさせたり、殺してしまったり、そういう事が出来るのです」
「そんな…」
そんな怖いことが出来るの?
もし俺にその呪いというものがかかっていたら、俺は死んでしまうの?
「リマ、あまり怖がらせるな。アンジュ、君は覚えていないだろうが、君が倒れていた時、ずっと『お父様に殺される』とうなされていたんだ。俺はそれが心配で…」
「お父様が、その呪い、というものを私に掛けた、という事でしょうか…?」
「それはわからない。だから魔法にも詳しいイマル兄様にアンジュを見て貰おうと思ったんだ」
「ノラ王子……。ありがとうございます。では、お願いしても、よろしいでしょうか?」
よく分からないけど、何も無ければ良いなと思い、ノラ王子の提案を受け入れた。
次の日。
「アンジュ様、ご無沙汰でございます。第二王子のイマルと申します」
「あ、よ、よろしくお願いします…」
「怖がらなくても大丈夫ですよ」
優しそうなひと。
初めてここに来た時に、お顔だけ見た気がするけど、正直あまり覚えていない。
「お話はノラからお伺いしておりますので。では少しだけ失礼します」
目を瞑るだけでいいと言われたので、目を閉じた。
何をされるのだろうか、こわい。
「アンジュ、大丈夫だ」
「あ…」
俺の手を、ノラ王子が優しく握ってくれる。
あたたかい、ノラ王子の手。
どうしてだろう、これだけで怖いのが、なくなる。
「ありがとうございます…」
本当はノラ王子の顔がみたい。
その方が、もっと怖くなくなるのに。
でもそれは我慢しないと。
「アンジュ様、大丈夫ですよ。目を開けて下さい」
「はい…」
「呪いはかけられていませんでした」
「良かった…」
「アンジュ様がそう思ってしまうのには、きっとアンジュ様がそうされたのを見たからなのかと思います。難しいかも知れませんが、少しずつ忘れていけるといいですね」
それでは、とイマル王子が部屋を出た。
「良かったな、アンジュ」
「はい」
「昨日もうなされていたから心配だったんだ」
「ノラ王子…」
ノラ王子が抱きしめてくれる。
まいにち、あのいやなゆめをみる。
怒られて、叩かれて、お父様に燃やされる。
イマル王子が言うみたいに、いつかそんな夢も見ない日が来たらいいな。
***
あの時は何も無い、とは言ったが、何も無い事はない。
確かに呪いはかけられていなかったが。
「あれは一体何だったんだ」
彼女の中に、彼女ではないものがいた。
それは、俺に触れるな、と言った。
それは確実に、意志を持っていた。
「イマル様、どうされましたか?」
「カンナ…いや、なんでもない」
「そうですか?何かありましたらいつでも仰ってくださいね」
「ありがとう。君はいつも頼りになるな」
「いえいえ」
彼女は一体、何者なんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます