第3話 ふしだらな彼女の母と笑いなさい
学校から帰宅した啓一は驚く。
「あら! お帰りなさ~い。優香と一緒に帰ってくるかなって思ったんだけど……」
エプロン姿の祥子がおり、啓一を出迎えてきたから。優香の話題を出され、啓一は俯いてしまった。
「ごめんなさい、余計なお世話よね……。そのついでという訳じゃないんだけど、やりすぎちゃったかな?」
啓一はぶるぶると首を横に振る。テーブルには夕食の用意がされていた。啓一は空になった弁当箱を祥子に渡して、お礼を告げる。
「そんなお礼なんていいのよ。元はと言えば私のドジでキミを怪我させちゃったんだから」
祥子は包みを解き、シンクへ空になったお弁当箱を置いた。
「ぜんぶ食べてくれたのね! うれしいわ。えっ? すごく美味しくて、久し振りにちゃんとしたお昼ご飯を食べたですって? キミさえよければ、ずっと作ってあげよっか? な~んてね、おばさんの作る料理よりももっと若い子の方がいいわよね」
啓一は祥子の言葉を全力で否定する。
「ありがとう、キミって本当に優しいのね。えっと、それにおばさんじゃない? 私は若く見える? ふ~ん、じゃあ幾つに見えるか言ってごらん」
啓一は即答する。
「女性の年齢について述べることは失礼に当たるから、言えない? あ~っ、上手く逃げたわね。ふふっ、ここはキミの気づかいに免じて……んん? 17歳? さ、さすがにその年齢はちょっと無理があるんじゃないかと思うんだけど……家に寄らせてもらう度に優香のお姉さんだと思ってた? お母さんって知って、すごく覚えてるって……確かにキミはあのとき驚いていたよね」
――――お風呂。
啓一は一日の疲れと汗を流そうとお風呂へ入ったものの、手の怪我から上手く身体が洗えない。仕方ないのでシャワーで洗い流すだけにしようかと思っていたときだった。
♪ ギイッ。
(ユニットバスの扉が開く音)
「ごめんなさい、お邪魔するわね~。あらあら、そんなに慌てなくてもいいのに。えっ? 彼女のお母さんがバスタオル一枚だけ巻いて現れたら、慌てるに決まってる? そうかしら? もしキミと優香が結婚したら、私はキミのお母さんになるのよ~。そう思うと別に大丈夫じゃない?」
そういう問題ではない、と啓一は答えたが祥子は続ける。
「こんなおばさんの身体がそんなに気になるの? うふす……じゃ、キミだけに特別で見せてあげよっか? な~んてね、こんなおばさんの身体なんて見てもうれしくないでしょ~。そんな気を使わなくていいからね」
「たぶんね、キミが身体を洗うのが大変だって思って、来ちゃった。余計なお世話だったかしら?」
啓一は祥子の気づかいに感謝し、素直に応じる。
「良かった!」
「やっぱり優香と違って男の子の背中は大きいわね。スゴく逞しいっていうか……優香はキミの大きな背中に身体を預けて、安らぎを感じたりしないのかしら?」
啓一はぶんぶんと首を横に振り、祥子の言葉を否定する。
「あらぁ……それは残念ね。私ならもっとずっと若いときにキミみたいな彼氏がいたら、顔を近づけて鼓動を聴いたり……って、あ……ごめんなさい」
祥子は思わず啓一の背中にそっと耳を当てしまったが、やり過ぎたと思いすぐに離れた。
「いいの?」
「キミの鼓動が私の耳にトクントクンって聞こえてくるよ。あ、早くなってきちゃったわね。ちょっとびっくりしちゃった? じゃあ……今度はキミが私の鼓動を聴いてみる?」
♪ バサッ!
(バスタオルを剥ぐ音)
祥子は纏っていたバスタオルを取り、ありのままの姿を啓一へと見せた。
「安心して、ちゃんと水着は着ているから~。その水着ってまさかですって? あ、うん……水着なんてこのところ全然着てなくて、私のモノはダメになっていたの。だから仕方なく、優香に内緒であの子のスクール水着……借りちゃった」
♪ ぷるんぷるん。
(祥子の胸元が揺れる音)
「着れたまでは良かったんだけど……意外とあの子、痩せ型なのかしら? ちょっと胸元が窮屈なのよね……。見た目では私とそんなに変わらないはずなのに」
祥子が谷間に指を入れて、水着を伸ばしている。
「えっと目のやり場に困る? そうよね、こんなおばさんの水着姿なんて見せられたら腕だけじゃなく、目まで怪我しちゃうわよね……んん? そうじゃない? 色っぽ過ぎて直視できないの? いずれキミの義母になるかもしれない私の身体なのに? ホントかな~? キミはとても気づかいが利いて、お世辞が上手いからね~」
啓一は祥子の胸元に目をやるが優香よりもかなり豊満であると分かると顔を赤くして、視線を逸らしてしまった。
「どことは言えないけど、優香より大きい? だけどプロポーションが優香並みにいいから、困るのか~って、ホントにキミは私のことを誉めすぎよ。私のことなんかよりキミの身体を綺麗にしてあげないとね」
♪ シャカシャカシャカシャカ~。
祥子はシャンプーを手に取ると手のひらで泡立て、啓一の髪に触れていた。
「かゆいところはないかしら~? ないの~? そうよね……キミは家に来るときは身だしなみをちゃんとしているものね。綺麗好きってだけでポイント高いかも。ってこんな私から高評価されても困るわよね?」
「ああなんだか、こうしていると優香が小さかった頃に髪を洗ってあげているのを思い出すわ~。いまじゃすっかり一緒にお風呂に入ることも遠慮するようになってしまったの~」
「えっと……それが普通なの? う~ん、残念よね。でもキミは断ったりしないわよね、ふふっ。じゃあ、今度は背中を洗ってあげるね」
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