第19話 協調性とヤリモク

「それでエサに喰らい付いた後は

 そのマグロをどう仕留めるの?」

「この槍を心臓にエイヤッッ…て感じ!

 穂先にさ、エグい毒塗るんだよね♪」

「そうなると、如何に早く心臓に

 槍をさせるかが重要なわけだ」


エサ役をやる者は当然、長引けば長引くほど

ハイリスクになるわけだ。

槍を担当するものが手早く、そして確実に

仕留める事でエサ役の負担も減るというわけだ。

2メートルを軽く超えるイカつい槍を、軽々振り回しながらマキシは何かを決め倦ねるように口を尖らせている。


「普段はねー兄者が一撃でズバッと!

 決めててくれたんだけどねー??

 如何せん気分屋だから間に合うか分かんない的

 なシチュなんだよな〜」


最も重要なポストと言って過言じゃないし

マキシが似合わない困り顔を浮かべるのも当然

な事だ。


「私やりたい」

「…」


ウチの魔王様は、やっぱ空気が読めな…

いや待てよ?

世界最強の存在だし、寧ろこれ以上無いほどの

適材なのでは…???


「まー協調性ある人が最適だし、

 シアちゃんにお願いしちゃおっか」

「あーごめん。ダメそう」

「!?」

「ダメ、なの…??」


こと協調性に関してだけ言えば

今いる3人の中で最も足りていないのが

ネシアだ。


そんなにしょげちゃって…ドンマイ、ネシア。

と背中摩って上げてたら

ピンと魔王様は立ち上がった。

そして何故か急に抱き寄せられて

ネシアのおっぱいで呼吸がし辛い体勢に。


「ここでいう協調性って、

 エサ役と槍モクの2人の間の事なのよね?」


確かに槍を刺すのが目的の人だから

槍モクではあるけどね?


「そだけどー?」

「ならヤリモクのシンジが槍を投げ

 私がエサ・・をやれば問題ないわ」

「確かに〜…マジラヴぴの

 シンちゃん&シアちゃんならそれは

 モーマンタイだけど」


と言い淀みながらも

マキシは耳と眼差しを真っ直ぐにネシアに

向けて神妙な表情で続けた。

そして僕はヤリモクじゃない!!!

真剣と書いてマジです!!!!


「リヴァイアサンの前だと

 魔法は使えないよ」


何かあれば無事ではすまない、と。

それでも尚、ネシアは表情を曇らせはしない。


「むしろハンデとしては物足りないくらいだわ」

「流石は魔王様♪ 

 2人ならイケるっしょ〜イーズィーイーズィ 

 ー」

「いや、初めての共同作業なんですけど…」

「へ!? そうなんシアちゃん??」

「そんな事ないわよ」

「へ!? そうなんシンちゃん??」

「そんな事ないわよ」


出会ってから一緒にやった作業というと

ゼクウさんが「小骨取って〜」ってただ捏ねたのを交代交代で取ったくらいじゃないかな?


「このシンジとはね、一緒にマネロンしたり

 ブックオフの18禁コーナーに交互に入った

 り、果ては対バンだってやった事があるの。

 泥舟に乗ったつもりで任せてちょうだい」


マキシは自分の尻尾で謎の涙を拭いていた。

というか対バンに至っては戦っとるやないかい…


「一騎当千の相棒なんだね〜マジエモい〜」


一騎当千だと全然協力出来てない上に

なんなら片方が足引っ張ってる説まであるけど、

ツッコマないでおこう。

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