第8話 SHOW , DOWN
「この辺かな〜」
そう、そんなわけはない。
初めて来た街で、地図もなしに
地元歩きが出来るわけもなく…。
(完全に迷子だな)
ユーくんとサマーが教えてくれた
屋敷とやらは見つからない。
相当デカいので
簡単に見つかると言われたのだが。
「…ダメだよ啓示〜その穴は♡♡」
「寝言は寝て言え、てな」
なのでネシアは当然寝ているわけだ。
そろそろ二の腕が痺れてプルプルして来ているが
流石に快眠中の魔王を床に落としたら
勢いで大地が割れてついでに地殻やマントルも
突き抜けて星が壊れたりしてしまわないだろうか?
「ゼェ…そもそもこの世界も天体なのか…」
夕焼けがあったことから分かるように
この世界も歴とした宇宙の一部だ!
———と言える程、僕は勉強してないから分かんないんだけど。
「また———救わないと」
僕は
なら、成し遂げる事はただ一つ。
「聞いていた話よりも随分と。
この世界最強の一角は可愛らしい寝顔で
眠るのですね」
「君が…壊滅の魔王?」
背後を飛んでいる存在の影に
そう問い掛けてみる。
「いいえ。
「そうなると、次点で勇者かな」
「いいえ。
是は勇者でもありません。
今度は此方の質問に答えて頂きます」
「何かな?」
僕の足下に忍ぶ魔王でも勇者でもない
人物の影は剣を握っている。
だがそれ以上に
——あまりに大きな敵意が——向けられている。それもネシアではなく
「
「それは結果論だよ。
僕は役目だと思ったからそうするだけだ」
いつもそうだった。
転生した先にはいつもそうするべき
僕の役割が明示されていた。
それは今回も同じ事。
嗚呼…ネシアの手って意外と小さいんだな。
「烏滸がましい…
何故こんな羽虫を目に掛けられているのだか
…こんな事は創世以来初めてだ」
「それは神様に直接聞いてみたらイイと思うよ」
「!」
「『天使』でしょ、君」
「———」
天使の影から剣が消えた。
改めて振り返ると、そこには
深い翠の髪を靡かせる少女?が
爽やかな微笑みと共に地上に降り立った
瞬間があった。
「是はガブリエルと申します。
丁度行先が同じですし、
「じゃあ、よろしく」
先程までの棘ある物言いと翻って
ガブリエルは如何にも貴人と表される態度と
優しい所作でネシアをお姫様抱っこする。
「天使と魔王って喋ったりするんだね」
「アハハハ。
貴方様の世界の天使とは
似ても似つかないでしょう??
装置に過ぎませんよ」
「あ」
「どうかされましたか?
シンジ様」
僕は全身全霊の殺意と憎悪を込めた眼差しで
ガブリエルを睨み付けた。
「ネシアに
———その目玉に剣を突き立ててやる」
「……承知致しました。
さあ、彼方の広大な屋敷が
壊滅の魔王の居城です。
入りましょう」
僕とガブリエルは互いの存在を
空気だと思い込みながら
屋敷の門をくぐった。
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