第3話 クラウンアリスと、ブスゴリラ

「ま、魔王ディアネシア

 =ディア・ディザスター!?」

「久しぶりね。私以外全ての魔王に仕え

 そして全てを裏切った魔族の子。

 まだ勇者とつるんで全ての魔王を

 倒そうとか考えているのかしら?」

「ネシアってそんなカッコイイ名前なんだね」

「え…? そ、そう? かっこいい?」


ネシアは俄かに嬉しそうに

髪の毛をさわさわした。


「何だその全裸の人間は!?

 というか他人の家で勝手に惚気るな!!」

「違うわ。これはただ自惚れているだけよ」


全ての魔王を裏切った勇者の仲間の魔族…。

めちゃくちゃカッコイイな…。


ようやく高所から解放された僕は

ネシアの懐から飛び降りて

威厳のある角を生やした少女の手を握った。


「僕はシンジ。

 ネシアの奴隷についさっきなった只の人間だ。

 君は?」

「へぇっっ!? く、クラウンアリス…

 イイから、それより…ちんこを隠せ

 ちんこを!!! 見えてる…」

「長いな…クラ、リス? うん。

 よろしくねクラリス」

「分かったから早く隠せってば!!!」

「ほら、ネシアも」


背後で立ち尽くすネシアを呼ぶも

クラリスが聖槍を構えた事で

2人の距離が縮まる事は無くなってしまった。

心なしか、ネシアに落ちる影が

色濃くなった様な気がした。


「貴様は7人の魔王の中でも

 特段に不気味な奴だと思っていた。

 外部に一切の情報がなく、僕もなく

 何も支配していない。

 それがどうして今になって僕の前に現れた?  他の魔王どもに僕を殺す遊び・・にでも

 誘われたか!! 答えろ!!!

 ディアネシア=ディア・ディザスター」

「…」


何の情報もなく、僕もなく

何も支配していないか。

魔王という肩書きが邪魔をして

クラリスには真実が見えていない。


「そこまで悪く言わなくってもイイじゃない…『友達は愚か僕の一体すら

 支配出来ないだけでなく

 剰え真の社会不適合者故に

 これから先未来永劫も

 孤独で哀れなブスゴリラ』だなんて、

 そこまで悪く言わなくってもイイじゃない…」

「全然言ってないのだが…?」

「クラリス…流石に泣くまでやるのは

 ちょっと…」

「僕そこまで言ってなかっただろう!?」


ネシアは大粒の涙を流した。

きっとクラリスには底知れない力を持った

悪き未知の魔王の一体にしか

感じられないのだろうが

僕から見たネシアは

只淋しくて誰かとお喋りしたり遊んだりしたい

1人の女の子にしか見えない。


「ブスゴリラは言い過ぎよ…」

「言ってない上にゴリラってなんだ!?」

「クラリス」

「…はあ」


クラリスはその辺に聖槍を放り投げると、

顔を覆って泣き続けるネシアの前まで行って

頭を深く下げた。


「悪かった。その…貴様の事を知らないのに

 言い過ぎた」

「…」

「シンジの様な失礼極まりない人間すら

 受け入れて従えているあたり

 貴様は他の魔王とは違う

 価値観の存在なのだな」

「…そうよ」


なんか凄い飛び火を貰ったんだけど…。


「何か詫びをいれたいのだが

 何か僕に出来る事はあるか…?」

「…お風呂貸して。背中も流して」

「っしゃあ! じゃあ早速行きますか」

「シンジ! 何故お前が乗り気なんだ!?

 おい……」

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