第7話 墓参り

 旅館から墓参りは車で30分くらいの場所にある。旅館よりもさらに山奥なため、車で揺られながら山を登って車を走らせる。車はきみ子が運転を行った。小さいころは、電車やバスを使って墓参りに行っていたが、大人になった今、きみ子が免許を取得したため運転を務めることとなった。


 道路の片側には木々で覆われて、もう片方には川が流れていた。山道は狭いため、きみ子は安全運転で向かうことになった。




 山奥にある墓がある場所に到着した。手前には駐車場があるため、そこに車を停めることにした。家族一同は、受付で線香や花を買うことにした。見渡せば墓しかなく、その周りには木々で囲むようになっている。時期がお盆ということもあり、人はそれなりにいた。受付をしている間、バケツに水を汲む準備をしていた。受付が終わると、水が汲み終わって待っている家族たちが見られた。


 バケツを持つ修一は、前を歩いているサヤ子の後を追うように歩いていた。それ以外の人たちは、その後ろを歩いていた。眠っている墓へと向かった。少し坂になっているため、息が上がっているのがみてとれる。


 一同は眠っている墓の前に着いた。その後は、汚れを落とすために、墓を綺麗にし始めた。優子にとっては初めての墓参りで、ここで眠っている一族を目にしたのは初めてだった。一方、きみ子は小さい頃に一度来ているため、記憶が鮮明に残っている。


 修一さんは、墓の周りを綺麗にしていた。同じく、今谷と和彦も同じように周りを水で汚れを落としていた。サヤ子は、それを見守るように墓の前で終わるのを見守っていた。


 


 その間、サヤ子は優子に話をした。


 「優子が生まれる一年前に、実は一つ上のお姉ちゃんがいたんだよ。優子は次女だけど、本当は三女だったんだよ」


 サヤ子は、次女の話を始めた。


 「私と、お腹の子には命の危険があって、入院生活で早産としてこの世に生まれてきた。泣き声は聞こえたけど、私はその後は気を失うように眠ってしまってね、次女が亡くなったことがわかったのは、少し後になってわかった」


 声のトーンを落とし、優子に話を続けた。


 「泣き声が聞こえた後、赤ちゃんの容体が悪化してしまい、先生たちが一生懸命に対応してくれたけど、赤ちゃんの体が耐えられなくなって、そのまま息をひきとった。赤ちゃんは必死に生きようと頑張っていたと思う。だけど、その願いは叶わなかった。それでも、生きようと必死に抗っていたんだと私は思うんだ」


 本当のことなんて、次女しかわからないことかもしれない。サヤ子は、自分の考えを優子に伝えた。優子はつぶやいた。


 「きっと、お母さんの言ったことは、そうだと思うよ。生まれてきて泣いて、当然話すことはできないけど、泣いていたということは、きっと、お母さんに何かを伝えようとしていたんだと思う」


 真実などわからない。でも、なぜか、そう思えると、どこかで確信のようなものが優子にはあった。


 「次女と優子は年子だった。なにかの巡り会わせかもしれないって勝手に思っている。生まれ変わりなのかもしれないって。でも、優子は優子だから深く思いつめることはしないでね」


 サヤ子は優子にその言葉を伝えた後、優子に話すことはなかった。優子も話を返すこともなければ、頷くこともなかった。優子の中には『少なくとも生まれ変わりなのかもしれない』そう思っていた。でも、そのような記憶もないし前世の記憶だって全くない。なにかの巡り会わせだと思っていた。これ以上考えても仕方ないと思い、考えることをやめた。




 話が終わるころには、修一たちによって墓は綺麗になっていた。あとは、線香を花を添えるだけだ。最後は、サヤ子自ら行うことにした。そして、線香に火をつけると墓の前で家族一同は手を合わせた。


 各自、手を合わせ、目を閉じた後、一族に思っていることを伝えた。安らかに眠って、そして苦しみのない世界でいられますように。そう願いながら。


 サヤ子は、みやこさんに


 『(幸せな世界で、苦しみのない世界で、大きくなっていく、次女をお願いします。私もいつになるかわからないけど、そちらに逝くまで、幸せでありますように)』


 母親である、みやこさんへ伝えた。次女には、


 『(ごめんなさい…向こうで会うことになったとき、大きくなっている姿を、お母さんと一緒に見せてね)』


 その言葉を残し終えた後、綺麗にした墓はより輝いてみえた。一族が眠る墓を後にした、家族一同。その後は車に戻ることにし、車に乗り終えた一同は、そのまま自宅へと帰ることとなった。長時間の帰り道なため、途中で休憩を取りつつ、昼食も取りながら安全に車を走らせて帰った。




 自宅に着くと、各自の家に戻った。修一を含む家族は荷物を家に運び、着替えはその日に選択することにした。家事はサヤ子が行い、荷物や力仕事は修一が行うことにした。娘たちは、各自シャワーを浴び終えた後、帰りの休憩場で買ってあった弁当を食べて、自分の寝床へと向かい、寝ることにした。


 その後は続くように、修一とサヤ子も同じようにシャワーとご飯をすませた後は、そのまま寝床へと向かい二日間の短い期間の疲労を取るように寝ることとなった。


 


 次の日、疲れが溜まっていたこともあり、家族たちが起きた頃にはお昼を過ぎていたのだった。

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