第6話 家族旅行

 時は夏になり、梅雨が明けた夏は、より蒸し暑くなっている。セミが鳴き始めると、夏を感じ始め、風鈴の涼しい音と共に、夏を過ごすこととなった。


 春になる前にみやこさんが亡くなった今、次女と、みやこさんの墓参りに行くことになった。サヤ子、修一、今谷、和彦、優子、きみ子と共に。


 墓参りの場所は、今住んでいるところよりも遠く、山の奥にあるということもあって、旅行も含め、墓参り行くことになった。サヤ子を含める人たちは、山の旅館に一泊することとなった。旅館の近くには、滝が流れ、その先には川がある。滝の水が霧状になって、山の冷たい水が、夏の暑さを和らいでいて涼しく感じる。


 お昼頃に、旅館へ一旦、荷物を置くことにした。部屋は和室で畳の良い匂いが部屋の中を駆け巡る。机の上には、温泉まんじゅうが置かれていた。それと一緒に温かい、緑茶のパックが置かれていた。サヤ子たちは、温泉まんじゅうを食べながら、旅館までの疲労を忘れるかのように、温かい緑茶が体に染みわたってくる。家族一同は、温泉まんじゅうと、温かい緑茶を楽しみながら、旅館を後にした。旅館を出た隣には先ほど言った、滝の水しぶきが夏の暑さを凌いでいた。




 その後、家族一同は少し離れたバーベキュー場へと向かうことにした。バーベキュー場には川があり、バーベキューをしながら川で遊ぶことにした。川の水はとても冷たく、自然を感じさせる。川には、小さい魚や蟹などがいた。川は冷たいため、飲み物や夏の定番であるスイカを冷やした。川は浅瀬で、旅館の人たちやバーベキュー目当てのために来ている人たちがたくさんいた。浅瀬もあって子供たちが気持ちよさそうに、川で遊んでいるところが見てわかる。


 優子と、きみ子は川で楽しく遊んでいる中で、修一はバーベキューの準備をしていた。炭を使い、バーナーで火をつけた。その上に網を置いて、野菜や肉を焼く準備をしていた。今谷と和彦は、その隣にテントを建てた。テントが完成するとサヤ子は、テントで涼しむサヤ子の様子があった。


 サヤ子は、みやこさん、亡くなった次女のことを思っていた。明日、墓参りで会うことを考えながら、食事ができるのをテントで少し仮眠をしながら待っていた。


 テントを建て終わった今谷と和彦は、川で魚釣りをしていた。少し遠いところへ移動した。魚が隠れていそうな岩影を探し、魚釣りを始めた。


 肉が焼ける匂いと共に、野菜も焼けた良い匂いが広がった。食べ物が焼けたため、川で遊んでいる優子と、きみ子を呼んでいった修一。修一は、優子たちを連れ戻し遅めのお昼ご飯となった。修一はテントで寝ているさやサヤ子を起こし、家族一同で食事を楽しんだ。白米はキャンプ用を使って米を炊いた。それもあって、おこげが良い香りがしている。そのまま食べても美味しいが、塩むすびとして食べるのも、また夏のバーベキューの良さかもしれない。


 今谷と和彦の釣った魚は、塩でこんがりと焼き上げた。暑い夏で汗もかいているため、塩で焼いた魚は体に塩分が加わって、さらにおいしくなっている。皮の部位に塩がかかっていて、それが皮をこんがりさせている要因の一つで、自然の食材を十分に発揮している。


 普段、塩分を多く取ると辛くなるが、なぜか夏のバーベキューでは塩分を多くとっても辛くならず、逆にそれが丁度良い。それは、夏の暑さで塩分が消費しているのもあるかもしれない。野菜は、醤油で焼いて食べるのもまた美味しくなっている。タレをつけて食べるのもよいし、外での食事は格別だ。


 各自、食事を楽しんで遊びも終わった今、バーベキューの片づけに移った。夏の夕暮れは、どこか寂しい景色になっている。


 家族一同はバーベキュー場を後にした。車に荷物を積み終わると、そのまま今日泊まる旅館へと向かう。きみ子と優子は川で遊び疲れたのか、短時間の移動ながらも仮眠をしていた。




 旅館に着いた家族一同は、一度部屋に戻り荷物を置いた。そして、その後は温泉へと向かった。温泉には木を使った湯船、そして露天風呂には、旅館の隣にある滝が見える。滝の音を聞きながら、露天風呂に入れるのは、この旅館の醍醐味の一つとして人気になっている。露天風呂の近くにはサウナも設備されているため、温まった体が滝の涼しさと、外の風で気持ちよくなり、そのまま水風呂に向かう人も見受けられる。自然を楽しみながら温泉を楽しめる、良い旅館だ。


 家族一同は、男女分かれて各自、一日の疲れを癒した。


 


 温泉でリラックスした後は、楽しみがまだあり、それは食事だ。バイキングではなく、個室タイプで食事が並んでいた。川で魚を捕れた料理もそこに含まれていた。自然で捕れたものなので味は上品なものになっていた。大人になった、きみ子や優子もお酒を飲んでいた。サヤ子と和彦はお酒が飲めないため、ジュースやお茶を飲んでいた。それ以外の人たちは、お酒を堪能していた。刺身をワサビ醤油に着けて食べていた。刺身の美味しさにお酒が進み、止まらなくなっていた。それをみた、サヤ子は


 「ちょっと、飲みすぎよ」


と少し怒ったが、今日くらいはと思いながらも、これ以上は言うことはなかった。


 刺身以外にも山で採れた茸を天ぷらにしたものや、そこの地域の肉を使った鍋やステーキが並べられていた。会話をしながら食事をし、食事を楽しんでいる。食事をしながらも、サヤ子は明日のことを考えながらも食事をしていた。


 食事のあとはデザートが出された。出てきたデザートはリンゴシャーベットだった。お腹をすっきりになるシャーベットは胃に優しかった。そのため、胃もたれにならないデザートが配慮されていたコースだった。家族一同は自然の食事を楽しんだ。


 食事が終わると、帰る途中に窓から蛍の光が見えた。黄色く光っていて、その場所が綺麗な証だと感じ取ることができる。現代ではなかなか見ることができ出来ない。山奥で田舎だからこそ、見ることができる光景だ。綺麗に光っている蛍を見ながら部屋へと戻ることにした。


 部屋に戻ると畳の上に布団が敷かれていた。食事をしているときに、ホテルの人が用意してくれた。『いつもありがとう』と、感謝しかない。これも旅館ならではの光景だ。


 テレビをつけると、普段住んでいるチャンネルではなかった。旅行をしたことある人ならわかる経験だと思うが、なにか新鮮というか不思議な感覚になる。テレビを観ながらゆっくりとする人、外が見える謎の空間で過ごす人もいた。各自、少しの時間を過ごした後は、今日の疲れを、布団が敷かれたところで睡眠と取った。


 夜は静かながらも、かすかに聞こえる滝の音。虫の囀りが聞こえてくる。また、風鈴が聞こえてくる。心地よい音を聞きながら、今日はその旅館で寝ることとなった。


 


 朝は鳥の囀りと、セミの鳴き声が聞こえてきた。少し早めに起きた人たちは、朝の温泉に行くことにした。普段は朝にお風呂に入る機会が少ない人も多いかもしれない。でも、旅館に行くと、なぜか朝でも温泉に入る人も多いだろう。なぜなのかわからないけれど、旅館に行くとどうしても朝の温泉に向かってしまう。


 朝の温泉は夜と違って静かだ。露天風呂の光景も、夜と比べるとみる景色も変わる。これも、旅館ならではの醍醐味の一つなのだろう。


 温泉に帰ってきた人たちは、部屋で待っていた人たちと合流して朝食に向かった。


 


 朝食はバイキング形式だ。和食、洋食と数多くの料理が並べてある。トーストを焼いて食べる洋食派の人もいれば、ご飯を軸におかずを取って食べる人もいる。ちなみに、修一とサヤ子は洋食派だ。


 修一はジャムを塗って食べている。コーヒーを入れて洋食を楽しんでいた。サヤ子はジャムではなく、バターを塗って食べていた。修一と同じでコーヒーを入れて飲んでいた。


 修一とサヤ子には同じコーヒーでも違いがあった。それはミルクや砂糖を入れるか、入れないかの違いだった。修一は、ミルクを入れて砂糖を入れて飲む人だ。一方で、サヤ子はミルクは入れないが砂糖を入れて飲む人だ。ちなみに、紅茶は両者、あまり好まない。


 今谷はコーヒーを、和彦はジュースを飲んでいた。優子と、きみ子はジュースを飲んだ後は、甘めのコーヒーを楽しんでいた。


 こうして各自、楽しい朝食を終えた後は部屋に戻ることにした。部屋に戻ると、布団が片づけられていた。旅館によって違ってくるが、ここでは朝食の時に布団を回収する旅館だった。これから行く墓参り、そして帰る準備をすることにした家族一同。テレビをつけて天気予報を確認する修一。荷物を整理するサヤ子。個性的な場面が見られた。身なりを整えて出発の準備が終わると、サヤ子はカウンターへ向かい支払いを行うことにした。それ以外の人たちは、車に荷物を置くことにした。


 支払いを終えたサヤ子は、家族が待つ車へと向かい、墓参りに行くこととなった。

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