第4話  残ってる




 中学一年。

 初めてヒメのお家で一夜を楽しく過ごしたよね。

 その時にヒメ達から私はヒメとヒメのお兄さん…セイさんがご両親を亡くされて二人兄妹で暮らしてるって聞いたよね。


 ねえ、ヒメ。


 あの時にさ。


 初めてヒメが13才の女の子から13歳の大人の女性になったあの日の朝。


 私さ、何も知らずに入ってきたセイさんに怒鳴りつけちゃったよね。

「入って来ないでッ」って。


 その時のヒメの顔。


 すごく恥ずかしそうにそして私にちょっとキラキラした瞳で。

 まるであの時、私を助けに来てくれたヒーローを見つめていた私みたいな瞳をしていたね。


 でも私は私が味わったあの女性が異性には秘めていたい秘密を守れたんだ、って。


 ヒメみたいに、綺麗なものだけを追い求めて助けてくれたヒーローじゃないんだ。



 私は、ヒーローじゃなくて、王子様になりたいんだ。



 貴女ーーーーーーお姫様のピンチにだけ助けに現れる、王子様に。


 まだ、貴女の薬指に誓えてないよ。


 16歳。

 彼女とベールを纏い合い永遠を誓う筈の神様の子供が生まれた日を過ぎても。

 この従者の無力な右手に誓いの指輪はもう一つ、残ってる。




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