モチーネ優勢
『セレーネさんスケベだった! スケベだった!!』
灰色の半袖シャツに黒い布の長ズボンを履いたケイが首にタオルを引っ掛け、ホコホコと体を熱くしている。
体温が高いのは風呂上がりだというだけでなく、興奮したセレーネに言葉通り隅々まで洗われたからだろう。
元々、ケイの予定では実際には一緒に風呂に入らない予定だったし、仮に洗ってもらったとしても背中を流してもらうくらいに留める予定だった。
セレーネに服を脱げとは最初から言っていなかったし、特に彼女へ局部を晒す予定だってなかった。
ケイとしては、せいぜい自分が下着を脱ぐか否かくらいの段階で嫌悪感を表してもらい、嫌がりながらも指示に従う姿勢を見せてもらえれば、それで十分だったのだ。
だが、風呂に入る準備を進めてもセレーネは全く嫌悪感を表さないどころか、むしろ乗り気でケイをガン見していた。
その勢いは股間に巻かれたタオルをじれったい! と睨みつけ、真っ白い背中にモチモチと頬を擦りつけようとしてくるほどである。
羞恥で頬を赤らめているのは終始、ケイの方であり、セレーネはひたすら興奮で目元を真っ赤にしていた。
おまけに、許可が出れば混浴するほどの意欲を見せていたので、ケイが止めなければセレーネまで服を脱ぎだすところだった。
『本当に、絶対に、途中でセレーネさんが根を上げると思ってたのに……!』
いっそのこと、やっぱり要らない! と風呂場からセレーネを追い出せばよかったのかもしれないが、ケイも変に意地を張ってしまって彼女に意味のない我慢比べを挑んでしまった。
もちろん、ケイを洗うことが全くもって苦痛ではなく、むしろウキウキとしていたセレーネが負けるはずがない。
試合に負けて勝負に勝つとは、このことだろうか。
キチンとお願いを聞いてもらえたのはケイの方だが、ひっそりと挑まれた勝負に勝利したのはセレーネの方だった。
ちなみにセレーネは今、ケイと一緒に風呂に入れなかったことを悔しがりながら一人で浴槽に浸かっている。
風呂から上がって少し時間が経つケイだが、セレーネとのやり取りの余韻が残っている彼は顔を真っ赤にして狼狽え続けている。
台所までやってきたケイは、少しでも体の火照りを冷まそうと冷蔵庫からオレンジジュースを取り出して飲み干した。
そのまま窓を開けて外を眺めながら本格的に体を冷やす。
綺麗な星や月を眺めて心臓を落ち着かせていると、真っ白いキャミソール型のワンピースを身に着けたセレーネがケイと同じように肩にタオルを引っ掛けて台所に入ってきた。
「ただいま戻りました、ご主人様。私もお隣へ失礼してよろしいですか?」
「あ、うん。大丈夫だよ。ジュースとか飲んでもいいし」
平静を崩さないようにするため、あえてセレーネの方は見ずに月明かりばかりを眺めて声をかける。
すると、セレーネが、「ありがとうございます、ご主人様」と笑って冷蔵庫を漁った。
中に置いてあるイチゴミルクはストロベリー系が好きなセレーネのためにケイが用意したものだろう。
彼女はありがたくイチゴミルクを取り出すと、イソイソとケイの隣へ並んで外を眺めた。
セレーネを見ないように、意識しないように、と気を付けていたケイだが、いざ彼女が近くへやって来ると、どうしても気になって少し様子を窺ってしまう。
『湯上りセレーネさん、エッチだ。あんな風に最後までノリノリでしてもらえるんだったら、いっそのこと、本当に一緒にお風呂に入ってもらえばよかったな。もしかしたら、そこまで行けばセレーネさんも逃げ出してくれたかもしれないし、そうじゃなくても生おっぱい見れたし。お触りオッケーだったかもしれないし。おっぱい、おっぱい……』
自分とお揃いの香りであるはずなのに、何故かセレーネから香ってくる匂いの方がずっといいように感じてしまう。
風呂上がりで血色の良い肌はツヤツヤと美しいし、透き通った汗の流れる喉をクッ、クッと動かしてイチゴミルクを飲み込む姿には見蕩れてしまう。
ふわふわと乾いたばかりの長い髪には鼻を埋めたくなったし、火照った柔い体は先しめたくなる。
だが、いつ何時でも、何よりもケイの心を捉えて放さないのはセレーネの巨乳だ。
ただでさえ麗しいセレーネの巨乳が風呂を通して、より魅力的になった気がして、ケイは思わず彼女の胸をガン見した。
上から覗き込んだ時に見える谷間に挟まった水滴が蠱惑的であり、羨ましい。
なんというか、指を突っ込んだり、顔を挟み込んだりしたかった。
『…………』
無言で空中を揉む、未練タラタラなケイの心を知っているのか、いないのか。
セレーネは飲み干したイチゴミルクの瓶をシンクに置くと、ケイの腕をギュッと抱きしめた。
白いキャミソール越しにポインと押し付けられた柔らかな胸に、落ち着いたり暴れたり忙しないケイの鼓動がドッドッと早くなる。
「ねえ、良かったら次は一緒に入りましょうね、ご主人様」
「え!? えっと……」
「嫌ですか? 私はご主人様を洗うの、楽しかったですよ。照れて隠したり俯いたりしちゃうご主人様が愛しかったですし。最初は堂々としてらっしゃったのに」
真っ白いスベスベなケイの肌にセレーネが自身のモチモチな頬をすり寄せて、うっとりと微笑んだ。
「う、だって、セレーネさんは絶対に嫌がるって思ってたのに、あんな風にしてくるから恥ずかしくなっちゃって。セレーネさんの方はスケベだったよね。ドスケベ、変態だよ!」
照れ隠しか、あるいは思い通りに動いてくれなかったセレーネへ悔しさを感じたのか、ケイがキッと彼女を睨んで非難がましい言葉を飛ばす。
だが、タプンと大きく胸を揺らすセレーネは余裕の笑みを浮かべていた。
「なんとでも仰ってください! 変態なら、別に変態でいいです! 私はもう、色々と吹っ切れたので好きなようにしちゃうんですよ!!」
ケイへの感情を素直に認めたということもあるが、正確には恋愛感情を認識することで心臓に湧きあがった強すぎる愛情と性欲で興奮しきってしまい、セレーネは脳をポコポコと沸騰させていた。
衝動のままにケイの頬へチュッとキスを落とせば、動揺した彼が慌て出す。
「セレーネさん、まって、や、やめ」
「やめませんよ、大好きでかわいい私のご主人様、旦那様!!」
逃げていくケイの腕をギュッと抱きしめ、グイグイと引っ張るとセレーネは彼の真っ白くスベスベな肌にチュ、チュと何度もキスを落とした。
「コラ、どこに行こうとしているんですか、旦那様? 良い子は寝る時間でしょう? 私と一緒にベッドへ行きますよ」
「俺は良い子じゃないよ! 引っ張らないでよ、セレーネさん! それと、旦那呼びは駄目!!」
顔を真っ赤にするケイだが、タユン、タユンと胸を押し付けるセレーネにベッドの方まで引っ張られると、ついついスケベな心を沸かせてしまい、ついて行ってしまう。
結局、ケイは一緒に潜り込んだシーツの中でモギューッとセレーネに抱きつかれて真っ赤になっていた。
「あんまり引っ付いたら熱いんじゃなかったの?」
たまにセレーネが照れ隠しで飛ばしていた文句を返してやる。
だが、彼女の方は過去の羞恥などどうでもよくなっているようで、
「あったかくてフワフワモチモチでご主人様の背中が大好きです。スベスベお腹も大好きですよ。ちょっと硬くて皮膚が柔いのが触り心地良いです。あと、匂いも大好きですよ。ふふふふ」
と、ケイの背中に顔面を埋め、スンスンと嗅いだ。
少し熱い、セレーネの興奮した吐息に背筋を探る小さな鼻先。
後ろからキュッと体に絡めてくる白くモチモチな足に、直で腹を擦ってくるイヤらしい手つき。
幸せそうに自分を堪能するセレーネに耐えられなくなってしまい、ケイはクルッと振り返ると彼女のお腹に顔を埋めた。
「セ、セレーネさんの赤ちゃんになりた~い」
ケイはセレーネに嫌われることを諦めていない。
サスサスとキャミソールの上から腹を擦り返して、あまり素敵とは言えない願いを口にする。
すると、ニコリと柔らかく微笑んでケイの頭を撫でたセレーネが、
「良いですよ、ご主人様。たくさんかわいがって差し上げます、ほら、おいで」
と、彼に向って大きく腕を広げた。
おそらく、何もつけていないだろう柔らかで豊満な胸が「ご自由にどうぞ」と、自分の方へ差し出される。
「え!? あ、ええ!?」
ギョッと目を丸くしたケイが大慌てでセレーネから離れ、波打つ唇をパクパクと開閉させていると、彼女が柔らかく目を細めた。
「かわいい。そういうかわいい所、大好きですよ。どうされたいですか? 抱っこされたいですか? それとも、赤ちゃんだからコレが欲しいですか? いいですよ。ご主人様のこと、大好きですから。好きなようにしてくれていいですよ。好きなようにもしてあげます。だから、おいで?」
薄い布越しに浮き出る丸い輪郭をゆっくりと指でなぞり、下から押し上げて揺らす。
部屋が薄暗いせいか、セレーネの姿がやけに官能的だ。
ケイの視線も指や胸の動きにつられて大きく揺れ動いてしまう。
分かりやすい目線にセレーネが思わず笑うと、ハッとしたケイが近くにあったシーツの中に潜り込んで彼女から逃げ出した。
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