絵本

 たっぷりオヤツを食べたセレーネとケイだが、夕食はもちろん別腹である。

 夜は夜で白身魚の香草焼きにコンソメスープ、生野菜のサラダなどのシッカリと食事をとった。

 そして先に風呂をもらったセレーネは入浴後、ゆったりとした部屋着を着てリビングで本を読んでいた。

「セレーネさん、何を読んでるの?」

 つい今しがた風呂を上がったらしいケイが少し湿った髪のまま首にマフラータオルを引っ掛けてセレーネの元までやって来る。

「絵本ですよ、ご主人様。掃除をしていたら物置から埃をかぶった状態で出てきたんです。中身を見てみたら十分読める状態だったので、軽く拭いて持って来てみました」

 絵本の表紙には丸っこい文字で、「恥ずかしがり屋なお嬢さんと元気な庭師さん」と、題名が書かれている。

 どうやら恋愛物語らしく、表紙には手を繋いで笑う一組の男女が描かれていた。

 女性の方はお姫様のようなきらびやかな衣装に身を包んでおり、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに微笑んでいる。

 一方、庭師の方は満面の笑みを浮かべて嬉しそうにギュッと女性の手を握っていた。

 何とも初々しい、可愛らしいカップルだ。

 この絵本は絵本と評するにはなかなかに文字が多く、児童書に近い内容となっているのだが、簡単な文字で書かれた、ほどよい文量の絵本もどきがセレーネの読み物にはちょうど良かった。

「懐かしいな。小さな頃によく読んでた絵本だ。俺も一緒に読んでいい?」

「いいですよ。こちらへどうぞ」

 セレーネが自分のすぐ隣にある椅子を引いてケイに手招きをする。

 ケイはコクリと頷いて椅子に座ると、横から絵本を覗き込んだ。

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