第9話 ラルゴとシャープのはじめてのトイレ

<ラルゴ>


フォルテの体に入ってしまったとき、僕の内心は恐怖と戸惑いでいっぱいだった。ずっと、女の子になりたいという憧れは抱いていたけれど、実際にその立場になってみると、思っていたよりもはるかに複雑で難しい現実が待っていた。


テヌートみたいなイケメンにレディーと呼ばれて、さりげなくエスコートされるたびに、僕の心は揺らいでしまう。自分が男であるはずなのに、女の子扱いを受けて内心で嬉しいと感じてしまう自分がいて、そんな自分が恥ずかしくて消えてしまいたくなる。


僕の手を見ると、フォルテの細くて白い指が目に入る。耳元に触れる髪も、僕が女の子であることを示すかのように柔らかい。スカートが破いてしまったとき、冷たく感じる風が、下着一枚で覆われていることの不安をさらに増幅させる。心も体も、何かに守られていないかのような不安感が消えない。


こんな僕が、本当に女の子として社会に溶け込めるのだろうか?頭の中に浮かぶのは、そんな不安と自己嫌悪ばかりで、血の気が引いて、前向きな気持ちを見つけるのが難しい。


<シャープ>


おっしゃああああ!ついにこの俺様が女になる薬をゲットだぜぇ!エッジホープ社のセキュリティ?フハハ、こんなもん、ガキのお遊びにもならねぇぜ。ちょろすぎて笑っちまうわ!


ぐへへへ……これで俺も女の子になって、百合百合ライフを思う存分エンジョイしてやるってもんよ!待ってろよ、俺様のパラダイスが始まるぜ!


俺はそっと薬を手に取り、勢いよく飲み干した。途端に体がぐわぁっと熱くなり、胸がムクムクと盛り上がってくる。腰がキュッとくびれて、ふとももがムチムチ、尻がプリッと膨らむのを感じる。目線が下がり、髪がバサバサと伸びる。そして、股間に生えてた邪魔なもんが、シュルシュルと消えていく。


うっひゃあ!こ、これが俺の夢見た女の子のボディか!もう興奮が止まらねぇ!鼻血が出そうだぜぇ!早速スカート履くぜ。こんなセクシィなもの履いてるなんて女ってやつは実にいいねぇ。


<ラルゴ>


尿意に襲われた僕は、胸の鼓動が速くなるのを感じた。男だった頃とはまったく違う場所に座ることに、妙な違和感と緊張感が伴う。個室のドアを閉め、スカートを持ち上げるとき、僕の手は震えていた。下着を下ろすとき、思わず目を閉じたくなる衝動に駆られる。


座ると、冷たい便座の感触が肌に伝わり、改めて自分が女の子の体になっていることを実感させられる。以前なら何でもない動作だったはずの排泄が、今では緊張と戸惑いでいっぱいだ。心の中では「これで本当に正しいのか?」という疑問が渦巻くけれど、それを確かめる術もなく、ただ流れに身を任せるしかない。


膀胱に意識を向けると、いつもと違う感覚に戸惑いを覚えた。男の体のときは、立ったままでも力を入れて簡単に排尿できたのに、今の体ではその感覚がまったく違う。座った状態で膀胱の力を調整する必要があり、どこに力を入れるべきなのかがすぐには分からなかった。


最初は無意識にいつものように力を入れようとしたけれど、期待していた通りに体が反応しない。逆に、変に力を入れてしまい、お腹のあたりに圧力を感じるだけだった。それで初めて、女性の体での排尿にはもっと違う、繊細な感覚が必要だと気づいた。


僕は慎重に息を整え、膀胱の下の方に意識を集中させてみた。自然と呼吸が深くなり、体全体をリラックスさせることが重要だと感じた。その時、ようやく少しずつ体が反応し始め、排尿が始まった。ちょろちょろ。うう。音が恥ずかしい。流れ出る感覚はいつもよりも繊細で、まるで体全体が関与しているような感覚だった。


終わった後、僕は深く息を吐き出し、内心で驚いた。単に座って排尿するだけでなく、力の入れ方や感覚の違いにこれほど敏感にならなければならないとは思わなかった。男性の体では、排尿はただの生理的な行為で、何も考える必要がなかったのに、今の体ではそうはいかない。


トイレを出るとき、鏡に映るフォルテの顔を見た。その表情は、僕の心の動揺を映し出しているかのようだった。この体で生きることが、こんなにも複雑で、難しいものだとは思わなかった。だけど、もう後戻りはできない。どうにかして、この体で生き抜く方法を見つけなければならないんだ。


<シャープ>


おっしゃあ!スカートをひらひらさせながらトイレに向かう俺様は、今までにない高揚感で胸がドキドキしている。ドアを開けると、そこにはこれまで見たこともない光景が広がっていた。そう、女のトイレってやつだ!


個室に入り、鍵をカチッと閉める。スカートをつまんで持ち上げ、下着をスルッと下ろす瞬間がなんとも言えない快感だ!そして、俺はついに座った。フフッ、座って用を足すなんて、今まで想像もしなかったが、これが女のやり方ってやつだろ?何事も初めての体験ってのは楽しいもんだ。


だが、やっぱりちょっと緊張するもんだな。いや、待てよ、俺様は新しい体に慣れなきゃいけねぇんだ。ドキドキしながらも、なんとかリラックスしてみる。ふぅー、息を深く吸って吐いて…これでいいのか?


数秒後、ついにその瞬間がやってきた。うおおおお!これは……なんとも不思議な感覚だ!まるで新しい自分が誕生したような……って、いや、誕生したんだろうがよ!どっかんどっかんいけぇ、俺様の初体験だ!って、言い過ぎかもしれねぇがな。


用を足し終わると、俺はトイレットペーパーを手に取り、ふんわりと拭き取る。この柔らかさ、繊細さ、これが女の子のリアルな生活なんだなぁ、としみじみ感じる。最後にパンツを戻して、スカートを直し、個室を出る。

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