第7話

「一度断られただけで諦める私では御座いませんことよ〜〜〜!!」


 一緒にお昼御飯大作戦を成功させる為にカサンドラはリベルテに頼んで弁当のレパートリーを増やしていった。サンドイッチも随分上達したものだ。

「クレメーンス男爵令嬢。良かったらアタクシとお昼でも」

「申し訳御座いません。先生に呼ばれておりまして」

「クレメーンス男爵令嬢。御一緒にいかがかしら」

「申し訳御座いません。お花を摘みに行きますので」

「クレメーンス男爵令嬢ーーーー」

 結果は惨敗。不敬といって無理矢理昼を共にする事は出来るが、それはカサンドラの望むところではない。

 ニーナもニーナで最初こそ気味悪がっていたが、段々断るのが心苦しくなってきていた。断るとカサンドラがとても残念そうな顔をするので。罪悪感が凄い。可哀想に思ってしまう。

 なんでニーナを誘うのかは分からない。とんでもない罠かも知れない。だが一度くらい誘いに乗ってもいいとも思えた。昼に誘うときにカサンドラが一人も取り巻きを連れてきていないのはニーナに配慮してではないかと気付いたからというのもある。

「クレメーンス男爵令嬢。良かったらお昼御飯を一緒にどうかしら」

 また断られるんだろうなと少し諦めつつ、いつも通りの誘い文句を口にした。

「いいですよ」

 なので了承されたときにカサンドラは「ふぇえ?」と間抜けな声を出した。いつかの時と同じ晴れやかな笑顔。夢なのではと瞬きを繰り返すが景色は変わらなかった。

「いいですよ。コロンブス公爵令嬢様。どこで食べましょうか」

 全く予想外の展開にカサンドラは顔を真っ赤にして持っていた包みをニーナに押し付けるように手渡すと、踵を返して走り出した。

「おっ、お食べになってぇ〜〜〜!!!!」

「コロンブス公爵令嬢様ぁーーーー!!!??」

 これは作戦成功か失敗か。

 一歩前進したのは、確かだろう。

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