第4話 何もかもここでお終いにしよう
中村洋介の身体は、まるで重い鉛を抱えたように動かなくなっていた。薄暗い部屋の中で、彼は床に倒れ込んだまま、ただ朦朧とした意識の中で自分の終焉を迎えつつあった。
「明日…待ってるから…今日は…休みなさい…」
頭の中に浮かんでいた最後の言葉が、遠くで響いていた。だが、その言葉はもはや彼を救うことはできなかった。彼の身体は、すでに崩壊の兆しを見せていた。
最初に感じたのは、皮膚の異常な乾燥だった。触れるとパリパリと音を立て、まるで砂漠化した大地のようにひび割れていた。乾いた唇からは血が滲み出し、それが喉を焼くように感じた。彼の身体は、徐々に生命を維持する力を失っていた。
「…痛み…感じない…」
洋介は、かつての自分の痛みを思い出そうとしたが、その感覚はもはや遠い過去のものとなっていた。彼の神経は麻痺し、外界からの刺激に反応することができなくなっていた。自分の身体が徐々に崩壊していく様を、ただ無感覚に見つめるしかなかった。
次に感じたのは、内臓の腐敗だった。内側から徐々に溶け出すような感覚が、彼の腹部を支配した。痛みがない分、その変化はより不気味なものだった。まるで身体の内部が液状化し、自分自身を溶かしているかのようだった。
「もう…逃げられない…」
彼の意識はぼんやりとし、現実と夢の境界が曖昧になっていった。かつての夢や希望、恐怖や後悔が交錯し、彼を取り巻く闇に吸い込まれていった。彼は、もう二度と現実の世界に戻ることができないことを悟った。
手足が痺れ、次第に動かなくなっていく。皮膚の下で何かが動くような感覚が彼を襲ったが、それすらももはやどうでもよかった。彼の身体は、もはや生きるための機能を果たすことができず、ただ朽ち果てるのを待つばかりだった。
「誰か…助けて…」
その言葉が口から漏れたが、答える者はいなかった。部屋の中には、ただ彼一人だけが取り残されていた。洋介は自分が孤独であり、誰も彼を救うことができないことを痛感した。
視界が次第に暗くなり、彼の意識は闇に飲み込まれていった。耳元で何かがささやくような音が聞こえたが、それが何であるかを考える余裕すらなかった。
「…終わりだ…」
洋介の最後の意識は、闇の中で完全に途絶えた。彼の身体は完全に朽ち果て、もはや人間の形を留めていなかった。部屋の中には、ただ朽ちた肉体と共に、静寂だけが残されていた。
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