第14話

「何だか橋本はしもとさんと仲良くなれないまま、向こうが卒業しそうな気がする…」

「え?」

 同級生の香具山妙かぐやまたえと廊下を掃除していた。

朝名あさなさんと玄一郎げんいちろうさんがいっしょに階段おりていたよ。仲良し復活だね」と何の気なしに言ってしまった返し。

「そうかあ…。妙君はあの二人に憧れているんだね。でも、あれは、介助だからね」

「それは、知っているけど…」

 目を逸らす。ごみをちりとりに集める。

「橋本さんは硬派だからなあ。国見くにみさんは女学生みたいなのに。ふふっ」

 思わず口元に手を当て笑う。

「あ、でも、口付けはしたよね」

 人差し指を立て、顔を覗き込む。

「顔が真っ赤。可愛いなあ」

「あれは、決まり事だから」

 片手で顔を隠し、空いたほうで否定する。

「やっぱり、若菜わかなはえっちだ…」

「やだなあ。そんな遊んでるみたいに。吉田よしだ先生は、僕の手にしかキスしないよ。まだ中学生だからね」

 そこで、はたと気付く。確かに、これは問題だ。

「え、あれ? 橋本さんと妙君は何をしているの?」

「うんと…」ぽやあっとした表情で考える。「いっしょにご飯食べたり、本貸してもらったり、勉強教えて…」

 だんだん俯いてきた。

「ただの先輩と後輩だよ。どうにもなる気がしない…!」

「残念ながら同じく…」

 絶望しかない。



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