第12話
「おーい、君。いい加減、ご飯食べないと死んじゃうよ。ほら、腕が針の刺し痕だらけで、もう点滴は無理だって」
新入りは、一度目を開いてすぐ閉じた。寝台の上には、未だ焦げ臭い髪の毛をして、ガリガリに痩せた男の子が一人。
「ねえ、見てよ」
前髪をかき分けて、義眼を取って見せる。
「えっ…」
「やっとこっち見た」
にっと白い歯を見せて笑う。同じ寝台に腰掛ける。
「君さ。北のほうであった大火の生き残りなんだって。お家の人が、皆いなくなっちゃったの」
男の子は、憮然とした。
「まあ、当たり前だよね。家族が死んじゃったのに、ご飯なんかいらないやってなっちゃうよね」
寝台の縁につかまり、脚をブラブラさせる。
「じゃあ、僕の話をしてあげる。お母さまはね、自分の美しさを誇りにしているの。まあ、勉強とか、楽器とか、他のことはからっきしだったんだね。で、結婚して、僕が生まれたの。可愛い可愛い赤ちゃんだよ」
男の子の顔を覗き込む。
「良かったね」
「でも、男の子は病気になりました。目の中にできものが。お医者さまは言うのです。この子の目玉を手術で摘出しないと死んでしまうよと」
意識して、口角を引き上げる。
「もちろん、僕は目玉なんかいらない。生きていたいって言ったよ。でも、お母さまは違ったんだ。片目しかないなんて、美しくない。そんな子はもう要らない」
空っぽの穴からも涙が溢れてくる。
「ねえ、だから、君は幸せだったんだね。家族を想って、こうなったんだからさ」
もちろん、意地悪なのは自覚していた。男の子は唸って、両手で涙を拭う。
「違うよ、違う。僕だって…」
お父さんは、僕より、赤ん坊を選んだ。そう、途切れ途切れに言った。
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