第11話

「ゆうびんです!」

「ありがとう。返事はポストに入れてあるよ」

「はい」

 ちびっこは、いそいそと手作りポストから手紙を取り出す。そして、肩から提げているカバンに収納する。くるっと振り返る。

げんさん、また明日」

「また明日」

 第二図書室の入口で、入れ替わりに橋本はしもとが入って来る。

「郵便ごっこか。小さい時に皆やるものなんだな」

「こんな接点のない年長者と手紙を交換して何が楽しいんだか…」

 橋本は、苦笑してから席に着く。

 第二図書室は、歴史班の定位置である。校舎中どこもかしこも本だらけの美陰学苑みかげがくえんである。しかし、場所柄なのか、歴史に関する書籍は殊更多い。なので、それらは一か所に集めて、第二図書室とした。

 それはさておき、ちびっこである。私が毎日ゆきに宛て手紙をしたためていたので、いつからか郵便ごっこが派生したのである。

 最初はどういう訳か、「がんばってね」だの「おうえんしています」だのばかり…。お前ら、私の何を知っている!?

 毎日、同じ内容では芸が無い。そのうち、子供たちは自由気ままに振る舞い始める。曰く、友達とけんかしただの、好きなおかずだの、算術が難しいだの…。

「そりゃあ、同級生とは直に話せばいいからな」

「それもそうか」

「でもな、案外、こういう繋がりが大切なんだよ。ここではな」

「ああ…」

 確かに、私も覚えがあった。

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