第10話
「おーい、
守一は、背を向けたまま。
コウは、こちらを振り向いた。午後の遊戯室。コウは戻ってきて、隣の椅子に腰掛けた。
「うん、そうか。だったら、きっと僕と同じだね」
「同じ?」
コウは、ゆっくりと瞬きする。
「僕もね、母親からあまり好かれてないから」
何でもないことのように言う。
「まあね。血が繋がっていても、結局は他人だからさ。好き嫌いはあるんだよ。仕方ない」
また瞬きして、涙が一筋流れる。
「嫌にならなかった」
「うん、思ったよ。消えちゃいたいって。だから、守一君はああなったんだ」
「おいで」
コウは、膝の上に頭を乗せた。髪をなでてやる。後ろで束ねた髪が、その度揺れる。
「お裁縫している時だけは幸せ。守一君が絵を描くのもきっと同じ理由」
「そうだろうね」
どうしたら良いのだろう。守一みたいに、コウも原因から離れられれば良いのに。まあ、無理か。深い溜息を吐く。
「大丈夫だよ」
コウが見上げてくる。
「
「そうだね」
一拍してから、笑った。
「ねえ、コウはお裁縫が得意なのでしょう。だったらね」
耳打ちする。
「解った。とびっきりのを作ってくるね!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます