第3話
歴史班では、長期休暇を利用して、泊まりがけの研修旅行に出る。
県南のほう、そう、三県の境が交わるあたりだ。山深いので、年少者は留守番だ。そう、体力がついてきて、初めて同行を許された年のことだった。
神社で、幼子と出会った。
短髪に、開襟の半袖シャツ、半ズボン。泣きベソをかいていた。足元を見ると、草履の鼻緒が切れていた。
ちょうど首に手ぬぐいをかけていたので、直してやる。
小僧は、ゆきと名乗った。
観光客相手に、団子と茶を出す店の子だと言う。
ここは、歴史上の有名人も花見に来たそうだね。君の家も古くから商売をしているのかい。
そう問うたら、ゆきは下を向いて恥じたようだった。
うちは、父ちゃんと母ちゃんが結婚してから始めたの。そうね。本葛を扱っているお店は古いのよって大人が言うてはった。
幼子なりに、感じることがあるのだろう。
私も、団子が食べたいな。店まで連れて行ってくれるかい。
うん。ゆきは、私の手を取り、神社の境内を駆けて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます