12

 自転車を走らせる。ママチャリを置いてけぼりにしない程度に急ぐ。


 ヒラタナオにどう説明しようか、おれは考えていた。考えに集中しようとした。

 後方を走る波多野は無駄口ばかり叩いている。とりあえず無視しようとはするものの、絶妙に答えたくなる話ばかりしてきやがる。ローリング・ストーンズ。トゥーンタウン。森川もりかわいづみの無修正。

 一旦、波多野を無視して、考えに集中することにした。


 真相は多分、こうだ。

 花井はBAN BANの店長と揉めた。その場にヒラタナオもいたのかもしれない。

 花井は店長を殺した。ヒラタナオは怖くなって逃げた。

 花井も逃げ回っているが(しかも、平林先輩から追われている!)、ヒラタナオを捕まえたい。なぜなら、ヒラタナオは援交に関する証拠を持っているからだ。

 ヒラタナオは援交の管理も手伝わされていた。フロッピーを回収したら、花井と縁を切るため、警察に駆け込むだろう。


 単純な話だ。だが、ヒラタナオはわかっちゃいない。あのフロッピーにはなんの効力もない。偉いおっさんの名前が載っているからだ。揉み消されるのがオチだ。ガキの言い分は聞いてもらえる余地すらない。平林先輩の方がまだマシな使い方をしてくれるだろう。

 

 ガキを黙らせることで生き延びようとするクソガキと、ガキの声を聞こうとしないおっさん。おれはどっちの味方でもない。知ってっか? おれはガキらしいガキの味方なんだぜ。ずっと、どこまでも。


「及川さん、SPEEDだと誰が好みですか?」

 後ろから波多野の声が聞こえる。考えが邪魔される。とりあえず、無視する。なぜなら、SPEEDは幼すぎるからだ。さすがに、すべてのガキとは向き合えない。

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