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西荻窪駅から中央線に乗って武蔵境へ向かい、そこから西武多摩川線で二駅――というルートで向かうことにした。運が良ければ、ここから多磨墓地前駅まで二十五分で着ける。
だが、ついていなかった。駅に着いてみると、電車がストップしていた。となると、自転車で移動するしかない。なにかあった場合、タクシーだと足がつく。
おれはあせっていた。だが、急ぐことに夢中にはならなかった。
駅から吉祥寺方面へと歩いて向かいながら、おれは尻ポケットからPHSを抜いた。平林先輩に連絡する。超手短に説明する。平林先輩は豪快に笑っていた。やっぱり、ご機嫌の裏返しじゃんか。
続いて、麻倉に電話する。麻倉は吉祥寺の町中華で、あさりの入ったチャーハンを呑気にかきこんでいた。むかついたが、我慢して説明した。電話の向こうで慌てて勘定を済ます声が聞こえた。ざまぁ見ろ。
波多野にPHSを借せと頼む。もう一本かけなきゃならない相手がいる。花井だ。
花井に用件を伝える。来いよと挑発する。
電話を切ると、波多野がしょーもないことを聞いてきた。
「おれ、今、自転車ないっすよ?」
自転車なんて、調達すればいい。シリンダー式のリング錠しか付いてないやつは、マイナスドライバー一本でどうとでもなる。バッグからマイナスドライバーを取り出すと、おれは西友の脇に停めてあるママチャリを顎で指した。
「こいつでいいよな?」
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