一千夏と恭太郎、親~ズに看破される

恭太郎視点:


「恭太郎、わたしたち付き合ってるって、今日食事の後にサプライズ発表しない?」


「いいぞ。じゃあそうしよう。一千夏が言うか?」


「いや、ここは恭太郎でお願いします」


「分かった」



母親から『駅に付いた。今から直で帰る』とLIMEが来たのでいったん解散。




フードコンテナから鍋にカレーを移して、温め直す。

焦げないように弱火で、鍋底を剥がすように木べらで混ぜる。ガラムマサラを足して、寝かして飛んだ香りを補った。


いい香りがして来た頃、母親が帰宅した。


「ただいまー」


「おかえり」


温泉効果か旅行が良かったのか、いつにも増して元気だ。


「楽しかったー。恭、留守番ありがとう」


「おう」


振り向いた俺を見て、驚いている。


「お。髪切ったんだ。どこで?」


「宮町の、ガーネット」


「あそこって、婆御用達サロンじゃなかったっけ?」


「孫娘さんが新しくスタイリストに入ったって、一千夏が予約してくれた」


正面からじっと見られる。


「いいじゃん。そうかそうか」




すぐに一千夏とおばさんがやってきた。


「恭ちゃん、ただいま。あ、髪切ったんだね」


「わたしが切るように言ったんだよ。恭太郎、なんか手伝おうか」


「じゃ、これ持って行って」


すれ違うとき、肩をちょんと当てていく。



一千夏に手伝ってもらって配膳終了。


「おかわりあるんでセルフでどうぞ」


「じゃ、いただきます」


カレーと玉ねぎ酢漬けとミニサラダとゆで卵の夕飯だ。


「おー、美味い。味が染みてるし、まろやか」


「ルーも二つ使ったからね」


「なに、これ。恭ちゃんこれ大根?」


「ね、おかしいよね、大根なんて和じゃん」


「でもお母さん、けっこう好きかも」


「わたしも恭太郎が必ず入れるから、慣れた」


「大根、万能なんだよ」


「でも、肉なしちくわカレーはわびしいから、やめて」


「えー、ちくわ?」


「恭太郎、マジで作ったんだ。アレに出てきたやつじゃん」


「作った。あれはオリエンタ○の粉末ルー使った、昭和30年代仕様なんだって」


「美味しかった?」


「紅ショウガ添えて、ちょっとソースで味調えてから食うと、美味い」


一千夏が”カレーは飲み物です”とばかりに、白飯がっつり残してカレーだけお代わりしに行った。


あ、うちの母親も似たり寄ったりなことしてるわ。







食べ終わって、コーヒーとお土産のお菓子を出す。


で、『さあ、言うぞ』


と思ったところで俺の母親に言われた。


「で、あんたたちなんかあった?一千夏ちゃんに言われて髪切るとか」


「ははーん。親が留守の間に“何か”やりたい放題、かな?ね、恭ちゃん」


ドキッとする。なんでバレた。痕跡は一切残してないはずだし─────


「うちの一千夏が明らかに変わってる、し」


一千夏が動揺した。


「え、うそ。なんにも変わってないでしょ、ね、恭太郎?」


よく一千夏を見る。…可愛いとしかわからん。


「先週と比べると、あきらかにつやっつや、じゃないの。それに“抜け感”すごいよ、あんた」


「てか、一千夏ちゃんなんか、体型も変わってない?もともとプロポーションよかったのがますますこんな感じ」


空中に両手で、上から下へ波を書く母親。


「やだ。おばさん、セクハラ」


「一体何すりゃ、こんな風になるわけ?」


言える訳ねえ…


「一千夏ちゃん、さっきからちょこちょここいつに触れてたでしょ。自然を装っても、わかるって」


「一千夏も恭ちゃんも、目線でもバレバレだからね」


超恥ずかしい。恥ずか死ぬ。



「もしかしてこの展開はありかも、って旅行中に二人で予想はしてたけど」


「うん、“肴”にして飲む酒は、美味しかったわ」



予定通り、言う事にする。でないと終わらん。


もうやけくそで俺の後ろに来ていた一千夏を膝に座らせる。案外、素直に座る一千夏。


「まー、開き直ったよ、この子たち」


「若いって、やあね」



「二人とも聞いてくれ。俺は一千夏と恋人どうしになった」


素直じゃん、おお、とか言われる。


「そうなの。恭太郎がわたしに告ってくれたの!」


一千夏が俺に抱きついて言った。



「お二人がお察しの通り、俺たちぶっちゃけ、“ちんちんかもかも”な関係だ」


まあ、田辺聖子? 高校生なのになまいき!とまたヤジがきた。


「で、…許してもらえますか?」



「問題なし。ねえ?」


「うん、わたしも認めます。ごちゃごちゃ細かい事とか言わんけどさ」


「はい」


「一千夏ちゃん泣かしたら、家、追い出すから。あ、お前は泣いてもかまわないからね」


晴れて公認となった。


なんか母親ズは買って来た五合ビンを一本出して、今から軽く酒盛りするというので、ちゃちゃっとアテを作って出す。


その間一千夏は母親二人にいじられていた。



「恭太郎、あたしん宅、いこ」


「ごゆっくりぃー」


「いやあ、あんたら肴に呑む酒は美味いなあ」




一千夏に手を引かれて、親に冷やかされるという状態で、俺は我が家を退場した。



━━━━━━━━━━━



お約束をやってみた。めっちゃ難しいです。


『ちんちんかもかも』

→男女の仲がきわめてむつまじい様子


ちゃんと辞書に載っているですよ(笑)


あと、PCが一台氏にました(泣) DE○Lタイマーかな?


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