一千夏、恭太郎を叱る

 恭太郎視点:


「え、怒ってないよ。てか、怒れないもん。恭太郎、わたしこそ初めてをあげられなくてゴメンね」


 なんだなんだ、こんなしおらしい事いうなんて。


「まじでそれ言ってんの」


 一千夏はちょっとばつが悪そうな顔をして目線をずらした。


「いや、ここはこれかな、って思って」


「心にもないこと言うなよ、それこそ怒るぜ。お前、正直が取り柄なんだからさ。それで行こうぜ。てか、だいたい一千夏を引き止めなかったのは俺だからさ」


「そう、それ。なんでなんで?」


「あのさ、高校生で初めて付き合ったカップルがどれくらい続くと思う?」


 質問してみる。


「難しいよねー。友だち見回しても、難易度の高さがわかるよ」


「さらにだ、高校生で成立したカップルがそのまま付き合い続けるのも、なかなか難しいだろ?」


「うん、そうだろうね」


「一千夏の最初の相手が俺だった場合、“高校カップルあるある”で関係解消の可能性は高いと思った」


「続けて」


「一千夏が高校デビューして彼氏が欲しいっていうのは散々聞かされてたから、俺はアウトオブ眼中だってのも分かってた」


「だから、干渉しなかったんだね。わたし恭太郎と恋愛なんて露とも思ってなかったし、恭太郎が“こそ連”してから、放流したわたしを釣り上げようって思ったのも、理解した」


 一千夏の顔が固くなった。


「怒ったか?」


「今、ちょっとムカッときたかも」


 なんか計算ぽくていやらしいのは確か。


「ロマンがないよな。考え方がさ」


 一千夏がマジで怒り出した。拳骨握って、両腕をぶんぶん振りまわす。


「ちーがーう!恭太郎の言だと、ファースト高校生カップル、および高校在学中カップルは別れる前提だけど、それって絶対の絶対じゃないじゃん。もしわたしが最初の相手、あるいは二人目か三人目かとさ、バチグソ相性よくて続いていたら、どうしたん?」


「え。一千夏だし、それはないと思ってた」


「相性だけはわかんないじゃんか。あのさ、全然ちがう例えかもだけど、千人総当りでジャンケンして、最後まで勝ち残る人って絶対いるわけ。わたしを見初めて、相性が抜群で、ヒキがすごい男に当たっってたらどうすんのよ。可能性はゼロじゃないでしょ、どうしてくれんの?わたしと恭太郎のラブ&ジョイが無くなっちゃったらさ」


「確かに無い事じゃないな。俺、一千夏を良く知ってるからって高を括ってた」


「違う世界線の恭太郎に謝っとけ!」


 後ろに穴があって、偶然はまらなかった気分だ。


「ごめんなさい、ごめんなさい…」


 違う世界線で大失敗こいてむざむざ他人に一千夏を取られた俺、ゴメン。


「盤上ゲームじゃないんだし、器用も頭脳も運には負けちゃうことあるんだよ」


「一千夏の言うとおりだ」


 俺をやり込めた一千夏の雰囲気がころりと変わる。

 絶対ろくでもない事考えてる時の目してるわ。


「恭太郎、だけどすべてをひっくり返す冴えたやり方がひとつ、あるよ」


「…なんか、聞きたくない気が」


「恭太郎が一千夏を寝取っちゃえば万事解決さ!」


「ぎゃあー、そんなことだろうと思ったー。ダメだろっ!」


「えー、なんでよぉ、そのすごテクで一千夏を寝取ってよぉ」


 俺の胸、わざわざ乳首のあたりを指でぐりぐりおねだりポーズの一千夏。

 クソ可愛いのが性質たち悪いぜ!


「そんなifで鬼畜な事、可愛くおねだりするな!バカ一千夏っ!」


 俺が間男のNTR世界線???ダメだあああああっ!

 バカバカ、やめろ、俺!

 そんなことのために“こそ練“したわけじゃ、ねえよっ!




 ────────────────────


 エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

 ご覧になりましたか?


 アルファ恭太郎、叫びます(笑)


 あと、“C”描写は割愛しました。なんだか場違い感

 すごくて反省です。それこそ、「よそでやれ」で

 ごさいますね。



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