一千夏、告られる
「で、今回はなんだったの?」
「いいたく、ない」
「じゃあ、聞かない」
一千夏はタオルケットに潜り込んでなんかぼそぼそ言い出したので、そばに行って耳を澄ます。
どうやら、なんか相手が一千夏の身体的特徴にケチ付けたらしい。
がばっと出てきた一千夏が小さく叫んだ。
「ユルま●ちがうわ!、くっそお!魚肉ソーセージのくせに!」
「うっわ、そう言われたのかあ。それは言ってはならん言葉上位だな」
「ムカついたから、〈お前のチ●コが細っそいんだよ!このギョニソーチ●コが!〉って言ってやったら、すんごいショック受けたみたいになっちゃってさ、うっとおしいから放って帰ってきた」
「あー、そいつ、心が死んだわ」
「だって最初に失礼な事言ったのあいつだもん、わたしはユルくないもん!」
言った後で赤面する一千夏。いまさらだな。
「うん、そいつの自業自得だなー」
「ほんとにユルくないんだもん!」
「はいはい。俺に言うな」
「思い出してもむっちゃ腹立つ!くっそおー」
「そうかそうか。まあ、そういうご縁だったというわけだよ」
「なんか偉そう。上から目線だ。童貞のクセに」
「ド・ド・ド、童貞ジャ、ネーシ」
お約束を棒読みで返した。
「あんた、もしかして女に興味ない系?」
「いや、俺は異性愛者だし。好きな女くらい、いるぞ」
俺が答えると、なんだか急に目をキラキラさせて一千夏が上半身を起こした。
「それって、うちの学校の子?」
「イエス」
「同じ学年?」
「イエス」
「えーっ!」
ミニトートからスマホを取り出した一千夏。
「じゃあ、私が当てるからね…うーん、じゃあ、満ちる!」
「ブー、はずれ」
「違うか。じゃあ、亜紗?」
「ブー」
「もしかして、京佳?」
「ブー」
「あ、もしかして、もしかして春野?」
「ブー、聞くけど、何基準?」
「胸の大きさ」
「俺はおっぱいは好きだが、大小にはこだわりがないぞ」
「そうなんだ。まあ、春野はないよね。顔は結構可愛いんだけど」
「なんか村上さんを馬鹿にしてるようだが、こないだ背が高くてスレンダーなイケメンとうちの店に来て、いちゃついてたぞ」
「うっそ」
「蓼食う虫も好き好き、だな。ちなみにスレンダーイケメンとわがままボディさんのカップルは別にそんなに珍しくない」
「やっぱり遺伝子的なあれでかな。って、それはまあいいや。んー、友里?」
「ブー。ってお前女子全員把握してんの?」
「LIMEは自分のクラスだけだよ。ほかのクラスはメンバー表をスクショしたやつを見てる」
その後も飽きずに女の子の名前を出す一千夏。どうやら可愛い順らしい事はなんとなくわかったが、まあ、ことごとく外れだった。
残った女子数人を投げやりに名前を出す一千夏。
「ブー」
「いないじゃん。どういうこと?」
「残ってるだろ」
「え?…全部、出したけど」
リストを見直し始める一千夏。俺は声をかけた。
「一千夏、ヒントな」
「うん、おねがい」
「1.〈可愛い〉」
「うん、結構いるね。網羅したと思ったけどなー」
「2.〈今付きあっている男はいない〉」
「なんでそんな事わかるのよ?ちょっとおかしくない?」
「3.〈大まけヒントな。〈名前の最初に〈一〉が付く〉」
「え?誰、いたかなあ。〈一〉が付くのはわたしだけじゃない?…え、え?」
おずおずと、自分自身を指差す一千夏。
「間違ってるかもしんないけど、も、もしかして、もしかしてだけど、それは、わ、私?」
「ピンポーン。あ、本人には内緒で」
ぼすっ。枕が飛んできた。
「…か、可愛い?」
「それは、もう」
頬から耳から真っ赤にした一千夏。突然俺のyogeboを抱きしめたままで
「一旦解散!明日になったらまた来る!」
叫ぶとベットから飛び起きて、そのまま家に走っていってしまった。
おいおい、それ返してくれよ。気に入ってるんだから。
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