第8話 雪かき

 北海道、冬には、当たり前のように「雪かき」をします。こちらでは「雪はね」というのですが、「雪かき」で統一します。


 さて、「雪かき」といっても、日本海側と、日高山脈を挟んで反対側の太平洋側とは、雪の質が違います。札幌や小樽などの雪は、水分が多い「湿雪しっせつ」対して帯広や北見などで降るのは、水分の少ない「乾雪かんせつ」と呼ばれる雪です。

 こちら十勝で降るのは、後者の「乾雪」の方。サラサラというかバサバサで、簡単に風で飛んでいってしまいます。


 踏まえて、お読みください。


 

 大雪の日、義母は、

「さあ、今日は寝てなんかいられないよ!!」

 と言って、家(義妹の家)に帰ります。

「寝ろよ!」

 その後姿を見送りながら、嫁は思います。


 そう、先程書きましたが、こちらで降るのは「乾いた雪」。水分が少ないので軽く、結構簡単にバサバサとかき終ってしまいます。


 うちの家の場合は、だだっ広い農家の敷地なので、ショベルでガーッと雪を押していくのですが、家の周りは人力で開けるしかなくて、夫に家ギリギリの所まで機械でかいてもらって、残りを私が家から離れたところに放り出し、また、夫がそれを機械で押していきます。

 うちみたいに広い範囲でも一晩に2〜3回、1回に30分〜1時間くらいかけば、結構な大雪でも対処できます。


 これが、義母様は嫌。そんな手緩いことが許せない人です。1時間おきに雪かきしないといられない。10cm積もるとイヤなんですね。10cmでかいてると、そりゃ寝る暇ないよなあ……。

 っていうか、義妹の家は、村営住宅。庭も極めて狭いのです。なぜそこに、そんなに時間がかかる? と思っていたら、お隣さんが動くのが大変なので、お隣さんのもやってあげてた。とか。


 村営住宅には、自分たちで雪かきできないようなお年寄りも多く、障害のある人も住んでいます。なので、義母は、お隣さんを気遣って、やってあげていたのでしょう。

 まあ、少し待っていれば、ボランティアさんが、雪かきできてないところをしに来てくれるらしいんですが、それが待てない義母。

 というか、私ができるんだから、私がやればいいじゃない! そしたらお隣さんも早く外に出られるんだから! みたいな考えのようなのですね。

 もう、好きにさせておこうと思っていました。善意の塊のような人(人に好かれるのが好きな人なのかもしれないけど)なので。


 が。


 冬のはじめに、義母は足を大怪我しました。


 孫(私の次女)と隣市に買い物に行った帰り、段差を踏み誤った感じになったそうで。

 それでも車を運転して帰って、しれっと義妹の家に帰ろうとしたところを、娘に止められ、

「お母さん、お母さん、お母さん!! ばあちゃんが大変、大変、大変!!」

 と、大声で私を呼んだので、事が発覚。

「ちょっと待って、左足が倍になってるんだけど!」

 で、病院に連れてったら、左足の骨にヒビが入っていて、当然、ギプスに松葉杖。


「ばあちゃん、ちょいちょい、暑いからってギプス脱いでる」

 との娘の報告に、私にも散々叱られ。

「ホントに、まゆはお喋りな子だね!」

 などと言いつつ、まあ普通の人より治りが早くて、先生に驚かれていたのですが。



 雪が積もりまして。


 さすがに今回は、義母も雪かきできずに困っているだろうと思い、ヘルプに行くと……


 ギプスにスーパーのレジ袋被せて、雪かきしてた……。


 止める以前に脱力です。

「なんでそこまでして雪かきしないといけないわけ?」


 したいんでしょうね、雪かき。趣味なのかもしれません。

 だからといって放置もできず、家の中に放り込みましたが。



「やってたらね、向こうの家のおじさんが怒るんだわ。やってやるから置いとけって」

 そりゃ、みんな止めるわ。

「だからね、見つからないように2時に起きてやるの。」


 ……いや、見つからなければいいってもんじゃないぞ?(汗)



 本当に、雪かき好きで困りものの義母なのでした。

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