第5話 野菜畑

 前のお話で、少し、義母の野菜畑のことについて触れたので、それについて詳しく書いてみましょう。


 今でこそ、草畑(笑)になりましたが、うちの家の前、土手の下から子牛のハウスの間に、内地の普通の田んぼ、ほぼ1枚分くらいの土地がありまして、そこは、義母様の畑になっておりました。

 

 毎年、食べきれないくらいの野菜が届くので、

「そんなにいっぱい要らないよ?」 

 と言った年。


「家で必要なだけ、好きな野菜を植えたらいいよ」

 と、義母が言うので、

「お」

 と思い、苗を買ってきました。


 茄子を3本、ピーマン3本、バジル1本に、お試しでスイカ一本。以上!


 植えていると、義母がやってきます。

「何やってんの?」

「え? 野菜植えてるんだけど」

「これだけ?」

「これだけ」


「え〜〜!!」

 義母、驚愕の声。

「こんなんで足りるわけないでしょ!!」

 いや、足りる。なんなら余る。

「も〜、しょうがないねえ。じゃあ、私が買ってくるから、苗代貰える?」

 え? これ以上要りませんけど。あとの野菜は要る時に買うんで。

「幾らぐらいいる?」

「そうだねえ……苗も高いからねえ。1万じゃ足りないかなあ」

 は? え? 苗代が1万?? ヤシの木でも植える気ですか、お義母様?


 まあ、仕方がないので、お金を渡すと、買ってきましたよ。えらいこと。

「あの……これ、全部植えるの?」

「買ってきたんだから、植えないでどうすんの?」

 そして、子牛のハウスの前に、ハウスのこっちから向こうまで、全部キュウリ(子牛のハウス、子牛が8頭個別に入るようになっているので、意外と広いです)。そして、その向こうには小松菜、レタス、ほうれん草などの葉物。

 2列目は、人参。普通の人参だけでなく、サラダに生のまま入れる黄色い人参も(誰が食べるの?)。そして大根。二十日大根。

 3列目、4列目の手前側は、各種謎の豆ゾーンです。そこから、スナップえんどうを経て、枝豆が続きます。

 5列目、6列目の手前側は、トウモロコシ。

 向こう側は違う種類のトウモロコシ。

 7列、8列と、空いたところの手前側は、かぼちゃ。向こう側はズッキーニ。


 ……八百屋でも開く気か?

 


 でも、まだ足りない野菜があるじゃないですか。


 ふふふ。それはね。

 

 過去にビートの苗を育てていた、巨大なハウスで作るから大丈夫〜(泣)。


 入ってすぐ見えますのが、100本植えたらしいトマト各種でございます〜。左をご覧ください。ピーマン、カラーピーマン、パプリカとなっております。その隣は、ナス、米ナス、長ナスでございます。外に嫁が植えたことなど記憶にないようでございます。

 さて、右をご覧ください。菜っ葉。ナッパ、なっぱ。植えた本人すらわからない「菜っ葉」。そして、白菜、キャベツ。あ、葱も要りますよね。ニラだって。紫蘇も要るし。

 さあ、更に奥に参りましょう。あー、セロリがありますね〜。8株も。誰が食べるんでしょう? オクラもありますし、シシトウもありました。おっと、向こうの端にあるのは、唐辛子? うち、誰か食べたかな?

 まあ、書ききれておりませんね。


 あれ?玉ねぎは?

 ご安心あれ。巨大なハウスの向こうにも野菜畑は続きます。ちゃ〜んと玉ねぎ畑だって、こっちで作ってるのに忘れて作ったんじゃないのかと疑いたくなる大量のかぼちゃ畑だってあるのです。


 え? ジャガイモ? うち、ジャガイモ農家だったんですよ。数十トン単位でとれますが何か?


 もうね。八百屋さんより品揃え多くない?

 聞いてくださいます? これ、出荷するわけじゃないんですよ? 義母いわく、家で食べるのだそうで。うちは、どこかの体育大学の学生寮かな??


 で、義母。

「苗代、足りなかったんだけど……」

 ……でしょうね。

「幾らしたの?」

「だいっ……たい、2万円くらいかな」

 ……。黙って3万円渡す、できた嫁。


 何本かは人に貰ってきたものだし、種から育てたのもあるんだよ〜? と言い訳のように言う義母。

 貰ってくるな。育てたなら余分に買うな。


「夏は野菜畑があるから、野菜買わなくてよくて助かるだろ〜?」

 なんて、うちの呑気な夫は言っておりましたが……。その苗代あったら、買っても一夏こせると思うのは私だけか。



 まあ、野菜作りが、母の趣味なのでしょう。どう見ても趣味の域ではなく、「もう道の駅に出荷しなさいよ!」と、いつも思わされておりましたが。


 それに、家で食べきれない野菜は、友達に配るのですね。お友達はとっても喜ぶと思います。うちには一銭も入りませんが、まあ、それでも、友達に喜んでもらって、「上手に作るねえ」なんて褒められたら、そりゃ嬉しいし、楽しい。


 家の仕事に縛られている義母の、一番の楽しみだったんだと思います。


 まあ……ね、それはいいんですけどね。使い切れない量を作るのと、あなたたちが食べない野菜を作るのは、勘弁してくださいね。



「食べないなら、何故植えるぅううう!!」


 畑の真ん中で嫁は叫ぶ。


 

 いや、こんなんでしたけど、嫁姑仲は、ホントに良かったんですよ?(笑)。

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